おおやんのこと (3)




徳島県と香川県の県境付近から、下を走るJR四国の列車を狙っていた。 2014年11月23日

僕は大山から直接、病状の詳しいことや余命に関する話は聞いたことがなかった。ただ、偶然にも息子がガンで入院していて、そこで「年内かもしれない」という話を聞いたので、頻繁に明石へ通うことができた。
もし、その内容を看護師さんから聞けなかったら、僕はもう少し楽観的に考えて、それほど明石にも通わなかったかもしれない。今はガンでもほとんど治る時代だから、きっと大丈夫だ。そんな考えを持っていたかもしれない。

病院の看護師さんは3交代であるのと、自分が行くのは平日の遅い時間か土日なので、担当の看護師さんに会うことは少ない。それでも、この夏の日は明石へ行く前日、偶然に担当の看護師さんと会えたので話を聞くことができた。
そして今日の夜、息子の病室へ行くときも、久しぶりにその看護師さんと会った。僕はその場で大山のことを話し、そして夏に正直な感想を聞かせてもらったおかげで、友人に会う機会を多く持つことができたと感謝を伝えた。
たぶん、これも縁というものなのだろう。




結果的に最後の撮影会になってしまった、京都・嵯峨野のトロッコ列車撮影会。 2015年10月18日


この数ヶ月、十分なことができなかったかもしれない。もっと会えばよかったのにとも思うし、さらに言えば病状が発覚する夏より前に、きちんと連絡をとって会っておくべきだったとも思った。
いま、思い返してみても、言い足りないことが次から次へと出てきてしまう。


「なあ、おおやんよ。やっぱり早すぎるよ。まだ47歳やで。
それに、俺らとやらなあかんこと、いっぱいあるのにさ。

撮影会、結局行ってないよ、昨年の秋から。
病気がわかってからもさ、近くでいいから撮影会しようって言ってたやん。
だからさ、俺は明石周辺で楽しく撮影できそうなところ、いろいろ見て回ってたんよ。
朝霧駅の歩道橋からとか、舞子駅のホームとか、ここからなら撮りやすいかな。でも迫力足りないなあ。
地元帰ったとき、JRの線路沿いで、「クルマ近くまで寄せられるな。あ、ここなら止めることできそうやな」とかさ。
ぜったい撮影会するんや、ってね。

この間買ったカメラのさ、キャンペーン商品。レンズのコンバーターだったよね。
まだ届いてないよ。
キャッシュバックの手続き、次に見舞いに来るときにするって約束したやん。

なによりも、せっかく買ったあのカメラ、まだシャッターを10枚ぐらいしか切ってないやん。
あかんやん!

もっと撮るはずやったやろ?
なんで逝ってしまったんだよぉ。」





京都・伏見にて。この日は弁天町にある交通科学館を見学して駅弁を食べたあと、
京阪の2階建て特急に乗って伏見へ移動した。 2013年9月7日。



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