「本当に使いやすくていいクルマは何だろう」ということを考え始めたのは、前の愛車・90年式サニーが走行距離12万キロを越え、パワーアンテナが引っ込まなかったり、渋滞中にエンストしたり等のガタが出始めた頃だった。その前に乗っていたのが、ファミリア4ドア。二台続けてセダンに乗り、またキャンプにいったりする機械も増え始めていたので、荷物が多く積めるミニバンを買おうと思っていたが、嫁さんが運転に自信がないということでクルマ選びはますます困難に。しかし冷静に考えて、ミニバンを必要とするほど荷物を載せる機会がどれほどあるだろうかということと、仮にその機会があったところで高い対価の支払いに見合うだけのメリットがあるだろうかということを思い始めた。そんなとき、このデミオが発表されたのである。はじめはさして興味なく、ただマツダがえらく力を入れて宣伝しているので、どんなものかとひやかしがてらにディーラーへ行ったのだが、そこに止めてあったクルマは、まさに自分のコンセプトにぴったり合致した「マルチパーパスコンパクトカー」だった。さらに、私を引きつけたのは、多彩なシートアレンジ、妙に丸すぎないまとまりのよいデザイン、それに剛性感のあるしっかりとしたボディ。そんなわけで、すっかり気に入ったこのデミオが我が家に来たのは、ディーラーに行ってから3ヶ月後のことだった。
 さてこのデミオであるが、初代プリメーラの如くパッケージングがしっかりしていることは、最近の日本車に失望していた私としては、非常に喜ばしいことである。(多少思いこみもあるだろうけど)とはいえ、例によってこのクルマの欠点であるが、まずサスが堅すぎることである。確かにコーナーを攻めるにはおもしろいが、このクルマにこんなハードなサスペンションが必要だろうか。おまけにタイヤは175/60ー14である。デミオの性格を考えれば、65クラスにもう少ししなやかなサスでもいいと思う。次に、発進時のアクセルに対する応答のくせが悪いこと。軽く踏み込んだだけでクルマが飛び出してしまう。渋滞時など、ミッション車で2速発進するときのクラッチあわせのような感覚を必要とする。私の車に限ったことであろうか。それと、次のマイナーチェンジには必ず改良してほしいのが、自動車雑誌にも書かれているリアドアの件。オープナーでしか開かないのは本当に使いにくい。後は細かくなるが、Aピラーが太い、ドアポケットが小さい(地図を入れるとスピーカーが隠れて音が聞こえないのは設計ミス!)、灰皿にライトをつけてくれ、ということであろうか。
 一方長所は、何せ全長3800mm・最小回転半径4,7mは扱いやすい。クルマが小さいとこんなに楽かということを感じさせられること多々である。運転が苦手な嫁さんにも好評である。それにシートアレンジは拍手モノである。たまたま引っ越しすることになったが、その時も大活躍。この小さい体に、大食漢の如く荷物を飲み込んでしまった。ただ、今は二人でこの容量は十分だが、子供が生まれて大きくなると少し手狭かもしれない。まあ、それも使い方次第であると思うが。また、助手席の小物ポケットは非常にグッドである。ちょっとした物を置いておくには、とても使いやすい。ただ、あくまでも物置なので、万が一の時、けがをしないように、重い物や角のある物は置かないようにしている。
 全体的にこじんまりしているデミオだが、普段乗る分についての不満は前述した以外、特にない。長距離走行でも、たっぷりした肉厚と堅めのシートに高いアイポイントが幸いして、疲れも感じさせない。1500ccのエンジンも1トンのボディにはまずまずで、高速道路
での追い抜きに、ストレスは感じない。ただ、この大きさなので仕方がないが、燃料タンク容量が40gというのは、長距離が多い私には不足気味である。
 これからの予定としては、アルミホイール&65タイヤへの変更、スタッドレスタイヤ、ステレオの換装等であるが、希望だけで具体的な内容はまったく未定である。それよりもデミオで、どこか遥かなる遠方の地へ出かけてみたい。初代のファミリアは日本最北端と最東端、二代目のサニーでは九州最西端と最南端の地を踏むことができた。とすればこのデミオでは、もはや沖縄、もしくは海外しかない…。いや、本州最北端ぐらいにしておこう。
(driver97/4/5号掲載)