国道奔走記〜酷道157号・温見峠に挑む

東海北陸道の川島パーキングエリアは、楽しめる施設が盛りだくさん。

<東海北陸道川島パーキングエリアで目覚める>
11月最初の土曜日、東海北陸道の川島パーキングエリア(ハイウェイオアシス)で目覚めた。時刻は朝の8時前。国道157号を走破するために、昨夜枚方の自宅を出発し、1般道を走り継いで岐阜まで来た。適当な寝床がなかったため、1宮木曽川インターから東海北陸道に乗り、このパーキングエリアで夜を過ごしたというわけ。157号起点の岐阜市内への最寄りインターは岐阜各務原インター。そのすぐ手前という絶好のロケーションであるこのパーキングに来たのは初めてだったが、河川公園が併設されたハイウェイオアシスあることは知らなかった。昨夜はここに深夜2時前に到着し、家から持ってきたビールを1缶飲み、寝袋に収まったのは2時半頃だった思う。すっかり熟睡してしまった。
 河川公園は、正式には「河川環境楽園」と名付けられており、北派川の河川敷に池や森を整備した公園なのだが、注目は「フィッシュ"オン"チップス」と呼ばれる水中探索レストラン。なにやら得体の知れないレストランだが、室内に大きなスクリーンがあり、CGの魚が泳ぎ回っているという趣向。以前パソコン雑誌で読んだことがあるのだが、その動きはまさに水族館を彷彿させるほど大したものらしい。ぜひ体験してみたいが、開園は9時30分。洗顔と朝食を済ませたのが8時30分。1時間も待つのは時間が惜しい。場所的に再度訪れることもあるだろうからと、今回はあきらめて出発することにした。ここは、他にもセガのゲームセンターがあり、年代を問わずゆっくり楽しめそうだ。

岐阜市内では、名鉄の路面電車が。忠節橋にて。

<国道157号岐阜市内〜岐阜県根尾村>
 国道157号は、金沢を起点に、福井県の勝山・大野を通り、岐阜に至る国道。このうち、金沢から石川県の鶴来町までは建設省直轄の指定区間。その先も、大野までは景色の綺麗な快適路。今までで走ったことがあるのはこの区間だけで、残りの大野から岐阜までは走っていないが、ウワサによるとかなりひどい道。
 というわけで、百番台でもとても国道とは思えないらしい、通称"酷道"を体験し、157号を完走しようというのが今回の目的。
 さて、その157号、岐阜の市街地では名鉄の路面電車が走っている。157号と電車が同居するのは短い距離だが、忠節橋では広大な長良川を仲良く並んで渡る。
 忠節橋を過ぎると、道は県道クラスの狭い2車線に変わった。しばらくは国道303号との重複区間。市内から14kmほどで、進路は西から北に変わる。そのまま西に進むのが303号で、滋賀県の木之本を通り、日本海側の福井県上中町へ至る。

”淡墨街道”の愛称がつく国道157号。

"淡墨街道"と書かれた看板が頻繁に現れるが、これは根尾町にある淡墨サクラが由来。このあたりではかなり有名なサクラらしく、このサクラが花開く頃はこの157号も大混雑、第3セクターの樽見鉄道も臨時列車が走るという。その根尾町までは岐阜市内から約1時間半。ここまでは快適な2車線道路だが、この先から大野までは、例の酷な道。地図で調べると、大野までは約50km。しかも、地図上では赤い線がくねくねと細かく曲がっている。かなり道は長そうだ。

<想像以上の峠付近>

大型車はここまで。かなり酷な道のよう。岐阜県根尾村。
 根尾村中心部を過ぎると、いきなり「大型車通行不能」の看板が現れた。どうやら、根尾村中心から10km弱先の能郷という集落から先が本格的狭隘路の始まりのようだ。その能郷の集落では、国道とは信じ難いような狭い道の入り口に、目立たぬよう「↑大野」と書いてある看板があった。気弱そうな字体からも、この先の様子が思い浮かぶというもの。

大型車はここまで。かなり酷な道のよう。岐阜県根尾村。

157号の県境付近は冬季通行止めとなる道で、しかもその通行止め期間が12月から5月末まで。数年前、5月のゴールデンウィークに大野から岐阜方面へ通り抜けようとしたが、通行止めで北陸道へ戻った経験がある。雪は解けていても、道路が傷んで補修に時間がかかるのだろう。
 道は狭く見通しのきかない急カーブの連続だった。ガードレールは1部途切れているし、アスファルトもところどころ陥没している。1歩間違うと崖の下へまっさかさま。間違っても、家族で楽しくドライブ、というわけにはいきそうもない所である。慎重に進む。
 まさしく断崖路、である。まったく気を抜けない。とてもじゃないが、この道を走る、という目的以外にここを通ることはおすすめできない。岐阜から大野へ行くのなら、東海北陸道と白鳥から国道158号を利用するか、名神と北陸道を使うべきだろう。地図から想像していたより、はるかにハードな道である。
 が、その分、自然を満喫できるのも事実。人工物がない、というところまではいかないが、かなり山奥深いところで標高も1000m近くある。今年は紅葉が遅いようだが、周りの山々は鮮やかな黄色のトーンに彩られていた。

秋の様相。道は悪いが、景色は素晴らしい。

しかし、そういう景色に見とれていると、えらい目にあう。砂防ダムがあるところでは、川が現れる。川というとおおげさかもしれないが、水の逃げ場がなく、溢れた水が道路の上を横切っているのだ。だいたいその前後は大きな段差がある。この道では、よそ見をせず急がないことだ。
 慎重に、けれど景色を楽しみながらそうこうしているうち、岐阜と福井の県境、標高1040mの温見(ぬくみ)峠にたどり着いた。能郷の集落からここまで出会ったクルマは数台だったのに、この峠付近では道路の両側にびっしりとクルマが停まっている。山登りに来た人たちのクルマなのだろう。地図を見ると、峠から南の方角に「能郷白山」という1617mの山がある。季節的には山登りのベストシーズン。ざっと見たところ、30台近いクルマが停まっていた。
 ここから福井県なのだが、道の様子はさほど変わらない。相変わらず狭隘で断崖路が続く。が、その距離は岐阜県側に比べると短いようだ。道が狭いのは相変わらずだが、しばらく走ると広い河原のような場所に出た。一面ススキのなかを走る。ガードレールがないので、いつも以上に注意しなくてはならないのは相変わらず。


国道157号 温見峠。岐阜と福井の県境。

<狭隘路通過は1時間強>
 熊河という場所から、やっと道が広くなる。あとは大野まで一直線。といっても、これが意外と遠い道のり。気分的に、2車線の道になったことで市街地が近いような感覚にとらわれるが、侮るなかれ大野市。かなり広いのである。狭隘区間スタートの能郷から大野市街まで約70km。うち、狭隘区間は約40km。この区間を走っている時間は1時間強。意外と平均速度は速かったのだな。けれど、途中には自動販売機すらない。ここを通る方は事前に食料・飲み物を仕入れておく必要がある。岐阜県から走る人は、根尾村で仕入れておく方が無難だ。ガソリンもお忘れなく。
 予定していた時間より早く通り抜けることができたので、福井のおいしいそばを食べたあと、越前海岸まで足を延ばすことにした。そこを走る国道305号は、何度走っても飽きることのない、素敵なシーサイドロードなのである。
 波音を聞きながら、昼寝でもむさぼることにしよう。


総走行距離:575q 
ガソリン消費量:43.5g 
燃費:13.2q/g

今回の走破距離:223q 
累計走破距離:28,948q

(旅行日 '99/11/5〜6)

日本海を見に、国道305号へ。