国道奔走記〜国道走破10周年記念東北ツアーPART1

 今年の夏で、国道走破を始めてから10年になる。ひとつの節目であり、10周年という区切りのいい数字にふさわしい走破の旅を、ということで、今回は、これまでほぼ手つかずの東北へ行くことにした。見知らぬ土地なので、時間をかけてゆっくりまわりたいが、経済的な問題や子供が小さいということもあり、2泊3日でできるだけ多くの国道を走る旅に出た。

磐越道五泉PAにて 走破スタートの安田インターはすぐそこ。

<1日目 国道49号 新潟県安田町〜福島県郡山市>
 8月20日、16時10分すぎに磐越道・安田インターに到着。家を出て約8時間半。やっとスタート地点に立った、ということだ。なぜここなのかというと、以前新潟を周遊したとき、国道49号を新潟中心部からこの安田インターまでを走っていたから。福島県の中通り、郡山を通り、いわきまで延びる49号を、今回は郡山まで南下する。
 道は阿武隈川に沿って南下する。安田インターを出てすぐ、道の駅「阿賀の里」がある。かなり大きな駅で、小さな川を隔てて二つのスペースに分かれている。この先すぐの所にも「三川」という道の駅があるのだが、「阿賀の里」のスケールが大きいうえ、こちらはたんなるパーキングスペースといった感じで、どうせ寄るなら「阿賀の里」に寄るクルマばかりになるだろう。おかげで「三川」は静かに昼寝などという人には絶好の場所となっている。

安田インターからすぐの国道49号沿い、道の駅・阿賀の里。広大な敷地でゆったり休憩できる。

 2桁の幹線国道だが、津川町を越えると交通量も一段と減る。磐越道の完成で、こちらの交通量は激減したのだろう。そのぶん、快適に走れるが。
 鳥井峠で福島県にはいる。いよいよ東北である。県境に面した町は西会津町で、その東隣が会津坂下町。町中へ向かう途中、盆地を見下ろす場所がある。いかにも盆地といった地形が実感できるポイントだ。
 会津若松でしばし休憩。散歩をし、ガストで夕食をとる。「今度こそ地元のおいしい料理を」と思うのだが、店を探すことが面倒くさいのと予算の関係で、やはり手頃で割安なファミレスになってしまう。
 会津若松の市街を出ると、道はガラガラ。まだ21時前だが、まるで真夜中のようだ。猪苗代湖湖畔では、磐越西線の電車が通り過ぎていった。稲光がしている。雨が降らないといいのだが。
 郡山市内に入ると、急に交通量が増えた。時間が逆戻りしたみたいだ。東北道・郡山インターを過ぎ、国道4号との交差点へ。立体交差である。49号はこのまま太平洋側のいわきまで通じるが、今回はここでお別れ。左折し、側道を上って国道4号に合流する。

国道49号 新潟県津川町での夕暮れ

<国道4号 郡山市〜宮城県岩沼市>
 国道4号は、さすがに交通量が多い。金曜夜ということもあって、トラックだけでなく乗用車も多い。
小さな峠を過ぎ、下り坂を下りていくと夜景が広がった。福島である。片側2車線の整備された道だが、町を大きく迂回するバイパスではない。県庁所在地で町中を通り抜ける1桁国道も珍しい。
 福島を過ぎる。時刻は0時前。さすがに交通量が減り、時折ものすごい勢いでトラックが後ろを追ってくる。タイミングを見て道を譲る。疲れてきたし、そろそろ眠る場所を探そう。
 岩沼で、仙台東部道路へ向かった。4号の岩沼・仙台間は9年前に走っている。
 岩沼料金所には小さなパーキングスペースがあった。ここで仮眠することにした。家からの走行距離、896km。ずいぶん走ったものだ。事前に調べた距離、計画していた時間と場所。すべてほぼ予想どおりである。
 東北だからなのか、今日たまたまなのか。いずれにせよ、今夜は涼しくて、クルマでも寝やすそうだ。

仙台東部道路の仙台東インター。大阪とは違って涼しく快適な朝。

<2日目 仙台東部道路岩沼インター〜国道4号宮城県古川市>
 翌朝7時前、人の声で目が覚めた。ここを集合場所にしている人たちが談笑している。どこへいくのだろうか。
 朝日が眩しい。いい天気だ。いつもこのようにすがすがしいのかわからないが、大阪の蒸し暑とはまるで違う。いつもの出勤時刻なのだが、大阪では駅へ向かう10分間を歩いただけでも汗ばんでしまう。けれど、ここ仙台ではこの時間まで、クルマの窓を数センチ開けただけの中で眠っていたのだ。冬の厳しさは想像以上だけれど、この暑い季節には、北の土地がうらやましい。
 さて、今日はどういうルートでまわろうか。
 広域地図を見て考える。明日の帰路を考慮すると、今日中に福島まで戻っておきたい。1日でどれくらいまわれるだろうか。
 距離を稼ぐ意味でも、できるだけ幹線路を走りたいし、完走する国道も含めたい。手頃なところでは、48号で山形県の天童までいけば1本完走だが、そのあとが中途半端だ。古川まで4号で北上し、そこから47号で日本海側の酒田へ抜ける。これで完走1本。さらに、112号で山形へ。月山のそばを通り、景色も綺麗そうだ。月山道路として整備もされているのは、事前に本を読んで調べてある。これで2本の完走。山形から福島までは13号。これも初めての道路だ。
 距離を計算したら、少しキツいが何とかなりそうだ。無理そうなら、上山や米沢で泊まってもいい。
 カロリーメイトの朝食と、歯磨き、洗顔を済ませ、さっそく北上することにする。
 朝日を浴びながら仙台東部道路を走る。クルマの量は極めて少ない。夏の朝というより、秋の入り口のような日差しだ。仙台空港のわきを通り、仙台東インターへ。今はここが終点だが、近い将来、三陸道とつながる。
 僕は国道4号に出て古川をめざす。渋滞こそないが、さすが100万都市。クルマがあふれんばかりだ。
古川から国道47号に入る。というか、47号は起点が仙台。つまり、古川までは4号との重複区間だ。

宮城県三本木町 うしろは国道4号。

<国道47号 古川市〜山形県酒田市>
 国道4号の上古川の交差点を左折して、国道47号を西進することにする。通称「北羽前街道」は、こけしで有名な鳴子や山形県の新庄を通り、日本海側の酒田までを結ぶ、170kmあまりの幹線国道である。
 田園地帯を走っていると、右手にJR陸羽東線のディーゼルカーが古川に向かって走っているのが見えた。
 鳴子では川の欄干にこけしが立っている。ここ鳴子はこけしだけでなく、温泉としても有名で、国道沿いでも硫黄の臭いがする。日本こけし館の前には、トイレが完備されたパーキングスペースが整備されている。
 鳴子を過ぎれば山形県である。防雪柵が向かって左側に立てられている。北風なので、道路の南側に柵を立てるのだ。そのほうが雪が舞い上がり、道路に積もらなくて済む。冬の厳しさは、関西人の想像が及ばない大変なものなのだろう。
 こぢんまりとした新庄の町は、まもなく山形新幹線が延長される。地元の喜びが、派手な看板となってそれを示していた。国道47号は、その新庄の町の南側をバイパスするかのように通り抜け(バイパスというほど立派な道路ではなかった)、やがて最上川が寄り添い、川と併走して酒田へ通じる。最上川は、富士川、球磨川とならび、日本の三大急流のひとつに数えられ、戸沢村では船下りの乗船場がある。
 余目(あまるめ)町に入る頃、広大な田園風景が広がり、そこに大きな風車が目に飛び込んできた。風力発電だろうか。たしかに、これだけの平野で日本海に近いとなれば、冬は相当な風にさらされそうだ。
 酒田で昼食。ジャスコがあったので入ってみる。昼食の時間を利用して、写真を現像した。しかし暑い。溶けてしまいそうなくらい暑い。北のほうだから、大阪ほど暑くないだろうと思っていたが、さして変わりない。たしかに朝晩は違うが、昼間は相当の暑さだ。もっとも、今年は異常気象で、東北・北海道は記録的な猛暑になった。その影響か、フェーン現象なのか。いずれにせよ、この暑さはうんざりである。(PART2へ続く)

鳴子町で見かけた、こけしの欄干。国道47号。