国道奔走記〜もうひとつの名阪国道

<名阪国道について>
「ここは高速道路ではない!!」
 しつこいくらい、ドライバーへの警告看板が目立つ。高速と見間違うような立派な道路、名阪国道だ。正式には国道25号。大阪と四日市(こちらが起点)を結ぶ国道で、なかでも奈良県の天理と三重県の亀山の間約73kmは、完全立体交差のバイパス道となっている。というか、途中にはサービスエリアもあるし、前後は天理で西名阪自動車道、亀山では東名阪自動車道に接続しており、ほとんど高速道路のノリなのである。が、あくまでも「高速道路ではない」らしい。そのため、制限速度は60km/hである。よって、おそらく日本でいちばん「制限速度遵守」がなされていないのはここではないか、と思ってるのは僕だけでなく、ここを何度も利用したことがある人なら、皆そう思っていることだろう。観光バスでも100km/hちかくで走ってたりするし。
 でも、関西人や中京地区の人たちにとって、名阪国道はありがたい存在。なんといっても「タダ」というのがいい。タダに勝るものはない。タダはすばらしい。これでオービスがなけりゃ最高なんだけどな。
 なにはともあれ、絶大なる支持を受ける名阪国道だが、この自動車専用道以外に、沿線には一般道の国道25号も並走している。事前に得た情報では、かなりひどい道らしい。125cc未満のバイクやチャリンコのために、とりあえず適当な沿道をつなげて国道に仕立てている、てな話も聞く。そのようなわけで、今回はこの、適当な沿道かもしれない国道を確かめてみることにした。

亀山市の国道1号との接続場所
「新所西」交差点

<亀山〜伊賀上野(上野市)>
 いったん本線のほうで亀山まで行き、そこから天理に戻るプランで走ってみることにした。
 亀山インターは、よく注意しておかないと、そのまま東名阪に入ってしまいそうになる。「亀山」の文字も「この先有料道路」の看板も、どちらも小さくて目立たないのだ。
 インターを下りると、東に向かうも西に向かうも、国道1号線を走ることになる。ここでは逆方向の大津方面にむかう。亀山トラックステーションがある。シャワーや休憩設備があり、ドライブには便利な施設だ。ほどなく「一般道路」の国道25号が始まる「新所西」交差点に着いた。
 いきなり「この先大型車通行不能」の看板が立っている。その予告通り、ほんの数百メートルでセンターラインは消え、1.5車線のローカル道路になった。道路のすぐ横に線路が並んでいる。JR関西本線で、伊賀上野の手前まで、この国道25号と寄り添いあっている。駅の看板が出ていたので寄ってみることにした。加太駅。無人である。駅前にはこれとった店もなく、列車も1時間に1本。無人なのも仕方ない。

関西本線のディーゼルカー 加太付近

 道はますます細くなり、JRをくぐるところなど、4t車でも通過不可能ではないかと思う場所もある。2桁の国道看板とのギャップがおもしろい。
 伊賀インターから2車線に道が広がる。ただ、国道といった重厚さはまったくない。生活道路である。
 上野市に入る。北海道を彷彿させる直線が続く。交通量が少ないことも、そういった連想を呼び起こす要素だろう。クルマが増えてきたのは市街地近くになってから。町の中心街に入ると、25号は少しややこしい。基本的に、国道163号の表示に従えば抜けることができるが、僕は少し迷ってしまった。ふつう、国道の重複区間では若い方の数字を表示するのだけれど、ここでは国道25号といえば名阪国道のことをいうので、一般道の25号を表示しているのは重複していない区間のみ。よって、163号に吸収された形となったところで迷ってしまった。もっとも、そのおかげでマクドナルドを見つけ、昼食を安くあげることができたのだが。毎度ながら不本意な食事だと思うのだけれど、結局「安い」というそれだけの理由で立ち寄ってしまう。学生の頃と全然進歩がない。
 伊賀上野は伊勢街道の宿場町であり、城下町である。よって町中は道路がいりくんでいるのだけれど、城下町のよき雰囲気を残している。上野公園の桜は見事とのこと。関西からも手頃な距離なので、こんど散策に訪れてみよう。

県境付近にあった古い橋

<伊賀上野〜針(奈良県都祁村) >
 町を抜けると道は再び1.5車線の狭路に戻る。盆地から山間にはいってくると、まもなく奈良県だ。県境を越えた道路標識は目にとまらなかったが、道路脇にあった建設省の河川管理境界の看板でそれとわかる。
 小倉インター付近で、本線の名阪国道に寄り添う。どう見ても同じ国道とは思えない。片や4車線の自動車専用道。片やセンターラインのない貧弱な道。それでも逆三角形の国道標識は立っており、その対比が面白くてカメラに収める。

本線と一般道との対比。小倉インター付近。

 針インター付近で、都祁村の中心部を通る。中心部といっても商店街があるわけでもなく、ミニスーパーがある程度だ。相変わらずセンターラインはなく、ほとんど生活道路である。

都祁村 針インター近くの村中心部

<針〜天理>
 針インターから二つ天理寄りの福住インターを越えると、大きく名阪国道から離れる。本線も大きなΩカーブを描くこの区間は、一般道の方は本線の南側を大きく迂回する。
 走ってみてわかったのだが、亀山・天理間で、一般道を走っていちばん面白い区間がここである。林の中を通り、湖が見えてくると天理ダムである。ほぼセンターラインがあり、車幅もそこそこ確保されている。しかも交通量が少ない。
 天理市街に降りる直前、道は二手に分かれる。道なりに走れば、新道で天理トンネルを通る。トンネルを出れば天理市街を眺めながら、平野部に降りてくる。本線より2.5kmほど南側である。

天理ダム

<総括>
 はじめは相当走りにくい道を想像していたが、亀山・伊賀間以外は容易に走り抜けることができた。とはいうものの、ほとんど生活道路で、本線が無料である以上、こちらの一般道を走る意味はない。しかし、気が向けばもう一度ゆっくり走ってみようかな。
(旅行日 99/6/12)