国道奔走記〜最果てに向かって '90夏 北海道往路part1

<日本列島北上>
 やはり、北海道なのである。理由は、あえて書かない。本州に住んでいたら、誰だって北海道に行ってみたいと思うものなのだ。
 学生という立場を利用し、1カ月の北海道放浪旅を計画した。まさにジプシーである。道内の行程は現地で考えることにし、まずは北の果て、宗谷岬をめざすことだけ決める。往路は、当然国道を走っていく。道内の話ではない。実家の明石から青森までを含めての話である。極めてふつうの選択であろう。
 1990年、梅雨が明けた7月21日。周到の用意をし、夜11時に家を出発。さすがに京都までは高速を使うことにした。

<1日目 明石〜新潟>
 第二神明、阪神高速、名神を使い、京都東インターで降りる。ここから青森まで、国道を走っていく。161号線は、京都と敦賀を結ぶ国道。夜中の琵琶湖西岸を快適に流す。が、敦賀の手前、国道8号と合流するところから渋滞が始まった。「??? 夜中の2時近くだぞ。工事でもやってんのかな? でも、そんな看板なかったよな」と不思議に思っていたのだが、その渋滞は敦賀市内国道27号が分岐する交差点が先頭。海水浴に行く車で混んでいたのだ。そういえば、週末なのだ。でも、みなさん、たかが海水浴のために、こんな夜中から出かけていたんだな、と妙に感心してしまった。時間をロスしたような苛立ちを感じたが、落ち着いて行こう。先はまだ長い。
 道はもとのように、トラックが程よく流れる状態に戻った。8号線は敦賀を抜けると、武生まで断崖沿いをくねくねと走る。夕焼けがきれいなところだ。誰もいない観光センターでカップラーメンをすする。
 寝ようと思っても、北海道への興奮で寝つけない。だから、無理して寝ることをあきらめ、行けるところまで行くことにした。
 金沢付近で夜が明けた。富山のコンビニで、パンとコーヒーの朝食を済ませる。曇り空で残念ながら立山は見えない。

国道8号 親不知にて 90/7/22

 親不知の急峻な地形に見とれながら、のんびりと日本海沿いを東進する。
 長岡を過ぎると、急に交通量が増えた。さすがに疲れてきた。結局木陰で1時間程度昼寝しただけ。ミッション車なので、左足もかなりだるい。
「そろそろ投宿したほうがいいな」と思い、近くのYH(ユースホステル)を探す。新発田の少し向こうに角米沢屋YHがある。電話で確認してみるとOKの返事。
 YHに着いたのは6時すぎ。あたりはまだ明るいが、今日はここが限界。明石から695km。

国道345号 笹川流れ付近 90/7/23

<新潟〜秋田>
 昨夜は早く寝たおかげで、早朝5時半に目が覚めた。朝食を済ませ、すぐに出発する。今日中に函館までいきたい。おそらく深夜のフェリーになるだろうが、とにかく北海道への思いは強まるばかりなのである。
 そのまま北の方に抜けてもいいのだが、国道7号の走破が途切れるのが嫌で、新発田まで戻り、再び7号を北上する。が、村上からルート選択に悩むことになった。7号は内陸部を通り、海沿いは国道345号が走っている。おまけに、景勝地の笹川流れがあるとくれば、海沿い好きの僕にとって、食指はそちらに動くというもの。7号走破は途切れてしまうが、まあいいか。
 国道345号は、部分的に狭い箇所があるものの、おおむね走りやすく、7号線と違って交通量が少なく、のんびりとシーサイドドライブを楽しむことができた。
 山北町の勝木で再び7号線と合流し、トラックと共に北をめざす。
 山形県にはいる。いよいよ東北だ。新潟県の村上から345号、7号線に合流して山形県鶴岡市手前までの間は、JRの羽越本線と併走している。あつみ温泉があるこのあたり、高校2年のとき、北海道を旅した帰りに列車から綺麗な夕焼けが眺められた場所だ。その頃を思い出しながら走っていると、鶴岡の町が近づいてきた。まわりのクルマはみな、関西ではなかなかお目にかかれない庄内ナンバーだ。
 酒田まで少し内陸部を走り、再び海沿いへ。左手には日本海が青々と広がり、クルマの量も次第に減ってきた。旅の高揚は「秋田県」の看板を目にすることで、さらに飛躍する。
 象潟(きさかた)、本荘と大きな町を通過し、昼過ぎ、秋田市へはいった。

国道285号 周りは秋田ナンバーばっかり

<秋田〜青森>
 秋田のJAFで青森函館間のフェリーを予約する。JAFで申し込めば航走料金が1割引になるからだ。青森には、夕方のそんなに遅くならない時間に着けるはずだ。対象となる青森発は、16時55分発、18時55分発、その次は20時50分発。16時55分発の便は少し苦しいか。20時55分発なら安心だが函館着が翌日0時50分になる。ここから青森の距離等を考えて18時55分発を予約する。発券後、昼食をとり青森へ向け本州でのラストスパートに、ハンドルを握る手も少し汗ばむ。
 本来なら7号線を進みたいところだが、時間を考慮してショートカットコースをとることにした。国道285号と105号で、一気に7号線をワープ。鷹巣町で再び7号へ合流。大館を過ぎると、いよいよ青森県だ。県境にさしかかると、青森県と書かれた看板が立っている。感慨もひとしおだが、目的地はここではない。東北道の看板が目にとまる。すでに日は西に傾き始めている。時間は大丈夫だと思うが、青森市街の道路状況を知らない。ましてや夕方のラッシュ時にさしかかろうとしている。ここはさらなる安全をみて、碇ヶ関から東北道に乗ることにした。

東北道 津軽SA もうすぐ青森 

 終点の青森インターを出て市街地を抜ける。人も車も多い。青森という町は列車で通過しただけで、町のことはよく知らない。関西人には、やはりなじみの薄い町であることは確かだ。こうして町中をゆっくり走っていると、想像以上に大きな町だということがわかる。JRを陸橋で越えると、海の香りがしてくる。案内標識に従って走ると、やがて広々とした埠頭に着いた。青森港。
 よくぞここまで来たものだ。17時30分。明石から1149km。でも、旅はここから本題へと入っていくのだ。

やっと着いた青森港 90/7/23 17:30 明石から1149km