国道169号 熊野川町飛地の改良区間  この先は狭隘路 

冬の奈良山中は要注意。R169走破できたけど。


 今回の旅の目的は、国道169号の未走区間(熊野市国道309号交点〜本宮町国道168号交点、約50km)を走ること。冬の時期、どこに行くにしても積雪の問題がつきまとう。スタッドレスは持っていないので、チェーンをつける手間がわずらわしい。雪のない南の方へ行ってみよう。

<往路 国道307・24・169号〜熊野市国道309号交点>.
 天気は雨。今日1日こんなぐずついた空模様らしい。晴れたほうが気持ちいいのは確かだけど、お天道様に歯向かったところで仕方ない。雨なら雨のドライブというものを楽しもう。未走区間へは、国道307・24号経由で国道169号に入ることにし、まずは通い慣れた307号を東に進む。が、慣れてない光景に出くわした。木津川に架かる橋が完成していたのだ。狭い対面通行の橋から、片側2車線の快適な橋に生まれ変わり、これでここのボトルネックは少しは解消するはずだ。
 10時過ぎに大淀町を通過した。家から約2時間。順当なセンだ。クルマの量は極めて少ない。人の動きが少ない2月であるうえ、この天気だと出かけるレジャー客も少ないのだろう。改良された国道169号を快適に飛ばす。この169号、国道309号も含めて、熊野まで抜けるルートでは、川上村の南半分だけが未改良。途中、交互通行の信号があるほどで、大台ヶ原をめざす大型バスなども通行し混雑するので、早期に改良してほしいところだ。もっとも、工事は進行中で、完成すれば奈良市街と太平洋を結ぶ快適ルートが生まれる。
 川上村とその南隣、上北山村の境付近にある長い新伯母峰トンネルを抜けると、一面霧で視界を奪われた。しかも路肩には雪が残っている。前に連なったいた4台の乗車はみな、トンネルを出てもライトを点けっぱなしだ。

<国道169号 熊野市国道309号交点〜本宮町国道168号交点>
 雨はいっこうに止まない。熊野市に入ってしばらくしてから、看板が示すとおりに左折する。直進すれば国道309号で熊野市の国道42号との交差点にたどり着く。この区間は昨年の9月に走ったばかりだ。

チェーンをつけるかどうか
迷っていたころ
(奈良県大塔村)

 いきなり道が細くなる。暗いトンネルを抜け、しばらく走るとダムに出た。169号はこのダムの上を走る。1車線の道が続き、集落が見えてくると、おくとろ温泉だ。ここは和歌山県の飛地、北山村。道の駅のような施設が現れる。レストランとおみやげ店、さらに温泉がある休息場所。駐車場もかなり広い。が、時間がないのですべてパス。少し休んでから再び出発。道はさらに細くなる。
 急に立派な道路に出た。道路改良された区間だ。長大なトンネルが続き、熊野川町の飛地まで快適な走行。が、これも長くは続かず、再び狭隘路。道路工事の真っ最中で、この急峻な山中に、ダンプや重機が大量に運び込まれている。しかし、309号との交点からここまで、ほとんど対向車に出会わない。かれこれ20km以上走っているが、すれ違ったのは4台ほどだ。改良されるのはありがたいけれど、なにか複雑な思いにかられる。
 完成はかなり先だろうと思われる工事中の細い道路を走って、川が見えてくると国道311号との交点だ。そばの川は新宮川で、瀞峡へのジェット船が頻繁にやってくるはずだが、シーズンオフなのとこの天候なので観光客も少ないのだろう。この日は一度も巡り会わなかった。川沿いの道をのんびりと流せば、ほどなく国道168号に突き当たる。

<帰路 国道168号>
 まったくの誤算だった。ここでチェーンを巻くことになるとは夢にも思わなかった。十津川村の電光掲示板で「大塔村〜西吉野村チェーン必要」と表示されているのを見て、
「嘘やろ? こんなところで。早朝うっすら積もって、そのままメッセージが出たままなんやろ。あかんな。ちゃんと仕事せんと。注意事項を出しておけばええ、っちゅうもんちゃうがな」と思いながら、さして気にもせず走っていて、すれ違った奈良交通のバスを見て慌てた。タイヤハウスに雪がこびりついてからだ。
「まさか・・・」
チェーンをつけるのは煩わしい。おまけに疲れる。まさかな。ここは奈良県だし・・・。
 大塔村は雪だった。はじめはおそるおそる走っていたが、次第に不安になってきた。おまけに対向車はチェーンをしている。
「そろそろ限界だな」と思ったのは、道の駅・吉野路大塔になんとかたどり着いたときだった。仕方なくチェーンをつける。面倒くさいなあ。でも事故るの嫌だし。ぶつぶついいながらジャッキを上げていると、みやげもの屋のおばちゃんが出てきて、「そのチェーン、付け易そうやね」と声をかけてきた。ゴムチェーンをタイヤにはめながら
「金属よりは付けやすいですよ。このあたりはいつも積もるんですか?」と聞いてみた。
「毎年積もるよ。まだ今年は少ないけどねえ」
「僕は、南側だから雪が積もるなんてまったく思いもしてませんでした」というと
「そんなことないよ。このあたりは」
 どうやら考えが甘かったようだ。隣では仕事で来たらしいワゴン車に乗った男性二人組がいた。電気工事の帰りのようだ。ひとりはおじさんで、ひとりは若い兄ちゃん。チェーンを付けるかどうか、迷っているらしい。
「付けたほうがいいですよ。対向車も付けてるし」というと、おじさんのほうが
「だいじょうぶや。これくらい。なんとかなるやろ。なあ」と兄ちゃんのほうに向かっていうと、運転する兄ちゃんは無言で笑っていた。ほんとは、きっと不安なんだろう。
 出発してすぐトンネルに入った。新天辻トンネルだ。大塔村と西吉野村の境である。トンネルを出ると、さらに積雪量が増していた。あたりには立ち往生しているクルマが何台か止まってる。この雪では、いくらなんでもチェーンなしでは無理だろう。しばらく走ってもなかなかチェーンを外せそうにない。さっきのおじさんたちはだいじょうぶなんだろうか。
 結局五條市に入る手前まで、チェーンは外せなかった。五條市内でも、雪はたくさん残っていた。この日は特別に雪が多い日だったようだ。家に着いたのが、予定よりかなり遅くなったことはいうまでもない。

今回の走破距離:58km   累計走破距離:26,455km

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チェーンを巻く図。 予想外だった。道の駅・吉野路大塔村にて