98ラストラン、四国の指定国道走破

1日目(12月18日)

神戸淡路鳴戸道の淡路SAは、 サービスエリアとして日本一の規模。
ライトアップが映えるにはまだ少し早い。夕暮れの明石海峡大橋は、やっと照明が灯りだしたといったところ。ゆっくりと橋を眺めたくて淡路サービスエリアに立ち寄る。空はまだ明るく、夜間撮影を試みようと思ったが、かなり待たなければいけないと判断し、再び神戸淡路鳴戸自動車道に戻った。しかし、この道の名前。あまりにも長すぎる。沿線自治体に配慮した結果なのだろうが、どうも語呂が悪い。「神徳道」ぐらいでよかったのではないか。それはさておき、今回の旅の目的は、四国の「指定国道」を走破するというもの。この指定国道は、正式には「国道の指定区間」といい、国道のなかでもとくに重要な路線で交通量が多く、整備がほぼ完了している区間のことをいう。1〜2桁のほとんどの国道と一部の3桁国道が指定されており(210号のように一部区間のみ指定という場合もある)、指定外区間とは管轄が異なる。指定区間は建設省(北海道は北海道開発局、沖縄は沖縄総合事務局)が、それ以外は都道府県または市が管理している。国道番号標識のポールに貼ってあるシールがそれぞれの所轄を示している。四国での指定区間のうち、未走破なのは33・196号の全線と32・192の一部区間。これと未走国道を走ろうというもので、2泊1日(?)という無謀なプランをたてた。帰路はフェリーを使う予定だ。


神戸淡路鳴門道
淡路サービスエリアにて

<往路>
18時前に鳴戸I.Cに到着。吹田から7800円也。徳島道に乗ろうかとも思ったが、ここは少し趣向を変え、しばらく県道を走ってみることにした。県道12号を選んだのは大正解で、走り始めてすぐ右手側に徳島トラックステーションを見つけた。迷わず寄ってみる。各地にあるトラックステーションは、一般道における休憩施設であるばかりでなく、貴重な情報源である。プロ向けの道路情報が掲示されているので、ドライブプランの参考になる。トイレ・シャワー設備もありがたい。休憩施設は少し手狭だったが、現在工事中で、完成時にはゆったりくつろぎ、疲れを癒すスペースが提供されるだろう。

<ちょろっとR318>
一休みしたあと、再び県道を西へ走り、土成町で国道318号と交差した。今回この道路を走る予定はなかったが、次回走破しやすいように、国道192号と徳島道土成I.C間を走っておくことにした。県道はその二つの道のちょうど中間なので、318号で192号までを往復したあと、そのまま土成I.Cまで進む。徳島道に乗り一気に美馬町まで進む。来年3月には池田町まだ、さらに来年度中には徳島道は高知道とつながる。そうなれば、明石海峡経由の高知・松山方面の移動はますます便利になる。この徳島道の交通量も飛躍的に増大するだろう。美馬からも再び県道を使った。徳島から池田まで、吉野川がまっすぐ横方向に流れており、この南岸を国道192号、北側を県道が走っている。192号の徳島・池田間はこれまでも何度か利用しているので、今日は県道を使ったというわけ。まだ夜の8時になっていないというのに、すこぶる交通量が少ない。おかげで走りやすく、気持ちがいい。

<R192 池田〜川之江・松山道〜小松町>
快適走行を続けて国道32号に出た。池田町だ。吉野川を渡り、192号が合流する。しばらく重複区間が続き、再び吉野川を渡る。32号は左折。今年5月ここを訪れたときは32号を進んだが、今日は直進。192号の未走区間、川之江までの20数キロは、なだらかな峠越えがあったが、さすが指定区間だけあって走りやすい。トラックも多かった。パルプ工場の独特の臭いがする川之江の国道11号交点まで来て、192号完走。折り返して、松山道の三島川之江I.Cに向かう。196号を走るためにいよ小松まで高速で時間を稼ぐためだ。4車線の松山道は、いよ小松の一つ手前のI.C、いよ西条から対面通行になった。北側は4車線化工事が行われているように見えたが、完成はいつなのだろう。小松のすぐ手前にある石槌山SAで休憩することにした。21時をまわり、腹も減ってきた。「たぶんレストランは営業していないだろうなあ」と、なかばあきらめつつも期待感を捨てきれず訪れたレストランは、やはり営業してなかった。軽食で済ますつもりはなかったので、温かいお茶を飲んですぐに出発する。今治まで行けば、おそらくファミレスぐらいはあるだろう。

<R196小松町〜今治>
いよ小松I.Cを降りて国道11号を少し戻り、196号に入る。ガソリンが減ってきたので、ここで給油。しばらくファミレスを探しながら走ると、今治に入る手前、東予市で発見。遅い夕食は、チーズののったイタリアンハンバーグ定食をむさぼり、今からのルートを再度検討する。このまま走れば、今夜中に196号は完走できそうだが、写真が撮れない。明日は西条から194号と高知を経由して松山まで走る予定。冬至を控えたこの季節、日没は早く、松山に着く頃はすでに日が暮れている可能性がある。だとすれば、この196号はまたまた撮影ができない。いろいろ悩んだ末、今夜は今治から国道317号で松山まで行き、そこから196号で再び今治をめざす途中どこかで眠ることにした。深夜山奥の道路を走るのは、以前恐い経験をしたことがあるので少し気が引けたが、地図を見て、地形と今治・松山という都市間連絡という道路の性格から、それほどひどい道路ではないと判断。23時過ぎ、ファミレスを出発した。

<R317 今治〜松山>
今治の市街を抜け、317号に入ると交通量が格段に減った。しかし、道路は快適な2車線で、峠を登り始めても車線が減少する気配はなく、気温もそれほど下がっていないようなので、これなら凍結の心配もない。ときおりすれ違うクルマは松山からの帰りだろうか。難なく水ヶ峠トンネルを抜け、さらに道幅は広くなり快適なドライブが続く。坂を下りていくと、旅館街が見えた。奥道後温泉だ。さすがに、冬の0時前とあっては浴衣姿の宿泊客の姿も見えず、そのままのペースで坂を下ってゆく。人の姿が急に増える。?と思っていると、峠仕様のクルマが多数集結している。ここは松山の走り屋が腕を磨きに来るところなのだ。カーブでもほとんど車体が傾かないハードサスペンションを備えた改造車が数多くすれ違う。少しノッてくる気分になるが、ここはぐっと抑えて安全運転。やがて松山の市街に入り、317号は終点だ。この317号は、尾道から今治までの諸島を、まもなく開通する高速道路ともつれあいながら、ここまで達している。完走は時間がかかりそうだ。松山の市内は、大規模な道路工事が行われていた。歩道付近で行われているところをみると、電線の地中化工事だろうか。明日、国道33号を、この松山まで完走するつもりだが、市内が混雑していてもショートカットできるように、松山道のI.Cまで往復することにする。さすがに四国最大の都市。0時を過ぎていても交通量が多く、タクシーも目立つ。

<ちょろっとR437>
高速の少し南側の、県道の交差点で折り返し、次は437号を走る。これも海を越えて、山口県の大島につながる。松山港まで往復したあと、196号を北上する。市街地付近ではクルマも多かったが、数km走れば、マイペース走行ができるくらい空いてきた。左側には海が寄り添ってきた。深夜でも海沿いというのはいいものだ。ぜひ海が見えるところで眠りたい、と思っていたら、北条市で適度なパーキングスペースを見つけた。今夜はここで眠ることにしよう。時計は2時。助手席を倒し、リアシートもリクライニングさせると、広い寝床に早変わり。今日の走行をシステム手帖にまとめ、毛布にくるまった。


夜明け 国道196号  愛媛県北条市

2日目(12月19日) <R196 松山〜今治 県道・R11〜西条>
トラックの轟音で目が覚めた。辺りは少し明るい。まだ日は明けてないようだ。眠い目をこすりながら時計を見ると、7時前だった。前方は明け方の綺麗な色調の空が広がっている。この色調で、目が覚めた。これは写しがいがある。三脚を用意して、国道196号の写真を撮る。冷え切った空気が肌をさすが、波音が心地よい。露出を変え、何枚かシャッターをきったあと、ホットの缶コーヒーを買う。町が動き始めたことを実感し、昨夜買っておいたパンを手早くとりこみ、僕も動き始めた。早朝の海沿いの道は、なんて気持ちよいのだろう。やがて朝日が姿を見せ、サンバイザーをおろす。昨夜通った今治の町に入ると、高校生の姿が目立つようになった。彼らはもうすぐ冬休み。期末試験も終わったであろうし、楽しい時期を迎えるのだ。もっとも、3年生はそれどころじゃないだろうけど。196号を完走し、317号の、昨日とは反対側の、港までの末端区間を走る。先端付近では来年5月に開業を控えた、来島海峡大橋が見えた。

本四連絡橋・尾道今治ルートの来島海峡大橋

海に突き当たった付近で、国道は県道に変わり、しばし橋を眺めて折り返す。小松まで戻るのだが、途中まで196号のバイパスを通り、未完成のその先は昨夜走った196号ではなく、周桑今治広域農道を使うことにした。農道というより産業道路で、トラックやダンプが連なっていた。196号をバイパスするにはいい道路だ。国道11号に出たところで「ドライブスルー洗車」なるものを見つけた。しかも100円。かなり汚れていたので、さっそく試してみる。クルマの形状と突起物を確かめるボタンを押し、アンテナを引っ込めドアミラーを倒して、所定の位置まで前進する。前方には信号があり、しばらくすると赤から青に変わった。勢いよく水が飛んできてブラシが回転し始める。マシンの往路が洗車で復路が乾燥の1往復なので、十分に洗えたとはいえないが、それでも見栄えはずいぶん良くなった。クルマが綺麗になると心まで軽やかになるのが不思議だ。気を良くして再び11号線に戻る。

<R194 西条〜高知>
西条市の中心部手前(西側)で国道194号の看板が出ていたので右折する。道はいきなり狭くなるが、交通量も減り、加茂川沿いに道は山へと続く。豪快なワインディングを登っていくと山はますます険しくなり、やがて道は2車線から1.5車線へと変わった。沿道では改良工事中だったが、すれ違うクルマもほとんどなく、どこまで改良が必要なのはわからなかったが、進に連れ、その必要性を感じることとなった。狭隘のカーブが続く道は、ローカルの300・400代の国道によくある形態だ。やっとの思いでたどりついた頂上手前は寒風山隧道で峠を抜ける。トンネル出口(高知県側)は、石槌山への登山口になっているようで、数台のクルマが止まっていた。トイレも完備されている。同じような道を下りていくと、前方に3台ほどクルマがブレーキランプを点けて止まっている。周りは道路工事中で、ガードマンが礼をしているのが見える。そこまで行くと、ガードマンが寄ってきて「工事による通行規制で10分ほどお待ちください」といった。そういえば、そんな看板が出てたっけ。今までも、あちこちでそんな看板を見たけれど規制にあったことはなく、こういう長時間の停車を強いられたのは始めてだ。けっこう時間がかかるのでエンジンを止め、外に出て煙草を吸うことにした。「大阪から来たの?」とガードマンのおじさんに声をかけられた。そうだ、といい「発破でもしてるんですか?」と聞くと「いや、コンクリートの打設工事だよ」といった。「寒風山トンネルはいつできるのですか?」と聞いてみると「来年の春だ。四国でいちばん長いトンネルになる」と、おじさんは少し誇らしげに教えてくれた。前後の取り付け道路の完成は少し遅れるだろうけど、峠越えが楽になるのは確かだ。
 その後、順調に194号を南下し、道の駅・土佐和紙工芸村に立ち寄り、昼過ぎに高知市内に入った。どこで昼食をとろうかな、と探していたが、本屋を見つけたので立ち寄った。なぜか、本屋があると寄ってしまう。そこで、9月に高知を襲った大水害の報道写真集を見つけた。高知以外ではあまり報道されなかったが、このときの水害は甚大であったということを、この写真集で知った。高知新聞社が発行しているもので、売上の一部が義援金として寄付されるとのこと。僕はこの本を1冊買い求めた。阪神最大震災を経験したものとして、看過できなかった。
 
<R33 高知〜松山>
国道56号線に入り、荒倉峠を越えたところにあったファミレス・ココスで少し遅い昼食をとった。節約しようと思っていたが、「肉フェア」とかなにかで、安くなっていた焼き肉定食を食べ、結果的に高くついてしまった。術中にはまっている、といったところか。ガソリンも満タンにし、33号線に挑む。道はすぐ山中に入っていく。次第に交通量も少なくなる。1kmごとに距離表が整備されていて、終点の松山までの距離が次々と表示され、そして数字が小さくなっていく。低い冬の陽は道路を照らすことも少ない。サングラスからふつうの眼鏡に変える。
 愛媛県との県境を手前にした、ドライブイン引地橋には、高知と松山を結ぶJRバス・なんごく号が休憩のため止まっていた。僕もここで一休みすることに。この33号線は幹線道路ということもあって、トイレを備えた休憩施設が適度に整備されている。直前まで看板がないのが残念。もっと標識を整備するべきだ。
適度な高速コーナーを抜け、愛媛県に入った。ニックネームも「松山街道」から「土佐街道」に変わる。少し大きな町だな、と思ったのが久万町。このあたりでは「久万街道」とも呼ばれる。伊予鉄の大きなバスターミナルがあった。ここを過ぎてすぐ、三坂峠のドライブインがあった。展望台が備えられており、寄ってみると松山の町が一望だ。そしてその先には瀬戸内海も見える。夜景はさぞ美しいだろう。標高は700mというから、結構な高さである。時刻は17時ちかくになり、かなり冷えてきた。下界より3度ちかく低いはずだ。この三坂峠、展望だけでなく、33号線走破のフィナーレとして、ゴールを演出するのにふさわしいワインディングだ。おりしも冬の夕暮れ。モノトーンの景色に映えるヘッドライトとテールランプ。なかなかの満足感である。峠を下りきれば松山市街。すっかり暗くなった。旅は終焉に近づくかの如く、夜のとばりが辺りを包んでいくが、僕の走破はまだ終わらない。


<R317とR32・帰路>
 昨夜折り返した33号の交差点から、県道を使って国道11号へ松山の町をショートカットした。松山道の松山I.Cのひとつ東隣、川内I.Cで11号へ出た。11号は完走しているので、高松へは松山道を使ったら楽なのだけど、時間があるとやはり国道を選んでしまう。11号はたいした渋滞もなく、順調に流れていた。西条、新居浜、川之江と工業地帯の町を通り抜け、海沿いに出たところで香川県に入った。すぐに国道377号との交差点。ここを左折して377号を琴平へ。20時前というのに、ほとんど交通量がない。狭隘区間もなく、あっというまに琴平へ出て、ここから国道32号へスイッチ。9年前、32号を北上してきて、琴平からは瀬戸大橋を渡るのに国道319号で坂出に出たので、32号のわずかな区間が未走で終わっていたのだ。腹が減ってきたのだが、店がない。わずかな望みを託して寄った道の駅・滝宮も当然閉まっていた。どうやら夕食は高松までおあずけのようだ。綺麗なバイパス道を高松へ。国道11号の看板が見えた。これで、今回の走破の旅は終わりだ。192、196、194、33、32号と5本の国道を走破した。そして、四国の「指定区間」の完走。
 ゴールの高松では、クリスマスのイルミネーションが施された街路樹に迎えられた。FMからはユーミンの「恋人がサンタクロース」が流れる。フェリー乗り場近くの埠頭で、少しの間、海を見ていた。周りはカップルのクルマが多数、幸福なひとときを楽しんでいた。高松港0時。神戸行きフェリーのチケットを買い求めた。7770円。0:30発。4時過ぎまで、快適な睡眠が得られそうだ。

総走行距離:1032.3km  ガソリン消費量:81.1g  燃費:12.7km/g

今回の走破距離:491.9km   累計走破距離:26,322km

(98/12/18~20行)