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テーマ:迷い道
題名:某温泉軟禁事件
 
 私が学生の頃、バイト先のレンタカー会社での出来事です。方向音痴については定評のあった友人が、2tトラックを回送して帰ってくる途中、なぜそんなところに行ったのか理解に苦しむような、とある温泉街に迷いこんでしまい、行き止まりに突きあったてしまいました。トラックは荷台に箱のあるタイプで、後方視界が悪く、仕方なくミラーを頼りにバックを始めると、けたたましいクラクションの直後、「ガシャン」と何かに当たった感触。慌ててトラックを降りると、彼の見ていたミラーの反対側に、フロントフェンダーのへっこんだベンツが止まっていました。彼曰、「どう見ても堅気の人ではなっかた」という人々に彼はその温泉の一室に軟禁されたのですが、営業所から所長以下数名が交渉に赴き、その夜彼は無事釈放されました。ベンツも、修理と代車の用意で話しがまとまり、大事件に至らずに済んだのですが、その後彼は、ドアミラーを壊したり、バンパーを擦ったりを繰り返しながら、半年ほどバイトを続け、貧血が原因でバイトを辞めました。長い間彼とは音信不通ですが、彼の健康と、少しは運転が上達したのかどうか、ちょっと気になる今日この頃です。
 
※JAFMATE応募作品