Canon NewF-1


 
憧れの最高級機を手に入れた頃

 スナップは単焦点MFが有利ではないか。撮り続けて経験を重ねるうちに、というより、雑誌等でそそのかされてそういう気になってしまった。

 MF系のレンズはFDの28mmF2という強力な武器があった。これを眠らせておくのは忍びない。かといって、手持ちのAE-1Pはファインダーの露出表示がいまいちだし・・・。

 いろいろ理由をつけて、「NewF-1が必要である」という結論に導こうとしていたのが2001年の6月頃。EOS7を買って、まだ半年しか過ぎていない頃である。
 そうやって、結果的にボーナス月でもあるこの月にアイレベルボディのNewF-1を買ってしまった。中学・高校と憧れ続けていたカメラである。

 見に行くだけのつもりで、定時後梅田に向かった。大阪駅前第一ビルには、中古カメラ屋が集中している。まずは、ここでファインダーをのぞき、F-1の感触を確かめておくと同時に、タマの出具合や状態の認識を持っておこうという目的だった。

 1軒目に入った梅田フォトサービスで、いきなりアイレベルが59,800円で2台並んでいる。いちおうチェックして他の店をまわる。絞り優先AEが使えるAEファインダーはあるがアイレベルはなかったり、あってもけっこう高かったりで、とりあえず最初の店に戻る。

 店員氏にカメラを出してもらう。1台は、かなり使い込んでいて、あまり買う気にならない。もう1台はそこそこきれいで、ダイアルも先ほどのものよりスムーズだ。ネームの刻印がある以外とくに問題なさそう。スクリーンは前者が標準、後者が全面マットのスポット測光。慣れれば後者のほうがいいだろうが、眼鏡をかけて撮影するし、無難に標準のスクリーンのほうが良さそう。そのことを相談すると、希望のボディのほうに換装してくれるという。
 いちおう、値段を相談してみる。自分で「やばいな」と思い始める。なんか流れができてきてるような気がする。

 結局、現金で消費税込み6万ポッキリで手を打つという。さらに取り扱い説明書つき。次に出た言葉は
「買うわ。銀行行ってくるから、スクリーン換装しといて」

買ってしまった。マニュアルしか使えないというのに・・・。
 でも、憧れていたF-1だしな、スタイルは絶対アイレベルのほうがいいと思うし、キズも少ないほうだし、きっと買い得だったのだろう。

 さてこのF-1、うわさ通りファインダーの見やすさはピカイチである。ピントの山もつかみやすい。しみじみとボディを眺める日が続いたが、しばらくたつとその感動も薄れてくる。実際街へ出て撮影してみると、なにより、AEがないというのがけっこう不便だったりする。わかって買ったのだが。
 
 よって、イベント等の撮影環境が激しく変わる場所ではEOSに任せ、じっくり街を散策するときに、このF-1を活用していた。



NewF-1 突然のさよなら

 仕事がたまっているというのに、日々先延ばしにしていたツケがまわってきた。仕方なく土曜日に出勤する。ただ出勤するだけでは気分が暗くなるので、写真を撮ってから出社することにした。

 京阪から地下鉄への乗り換え駅である淀屋橋でちょっと散歩してみる。いつもはEOS7なのだが、今日は久しぶりにキヤノンのNewF-1を持ちだした。レンズはFD28mmF2。大口径なのが気に入っている。空はどんより曇り空。よってフィルムはモノクロのプレストを入れてみた。このフィルムも久しぶりである。

 で、10枚も撮らないうちに、突然シャッターが切れなくなった。実は半年ほど前、同じ症状が出たことがあり、そのときは電池を入れ直したりあちこちいじくっているうちに復活した。その後はしばらく順調に動いていたので、このことをすっかり忘れていた。

 今回も同じように電池を入れ直してみるが、露出計は動くものの、シャッターが切れない。そもそも、F-1の高速シャッターは機械式なので電池なしでもシャッターが切れるはずなのである。疑いがあるとすれば、巻き上げ関係だろうか。

 フィルムをいったん巻き戻してカメラから抜いてから空シャッターを切ろうとしたが、これもダメ。

「寿命じゃ」
と、撮影をあきらめて会社に行こうかと思ったが、時計をみると10時をまわっていた。このF-1を買った梅田の中古店が開いている。1年半以上も前に買ったカメラだから保証は切れているが、何らかトラブル解決の糸口が見つけられるかもしれない。そう思って大阪駅前第一ビルにある中古カメラ店へ向かう。

 その店では初老の店員氏が対応してくれた。症状を話し、店員氏が電池を抜いて端子をズボンで磨いて入れ直してみると、あら不思議。シャッターが切れる。店にあったダミーのフィルムを入れて再度試みるが問題なし。
 年のため、使っていたプロストを入れて試していると、10数枚切ったところでまたシャッターが切れなくなった。

 こんな症状が他のF-1にあるのか聞いてみたが知らないという。そうだろう。私だって聞いたことがない。いずれにせよ、当方のF-1は安心して使えるカメラでなくなったことだけははっきりした。

 これでおとなしく帰っていればよかったのだが、何かケチがついてしまったようで、このままこのカメラを使う気にならなかった。結果的に、ショーウィンドウにあったコンタックスAria&ディスタゴン28mmを買ってしまった。交換差額がいくらだったかは思い出せない。



淀屋橋 2003.1 FD28mmF2 PRESTO400
F-1最後のショット



<スペック>
ニューF-1 主要性能
型式 35mmフォーカルプレーンシャッター式一眼レフレックスカメラ
画面サイズ 24×36mm
標準レンズ FD50mm F1.2、FD50mm F1.4(この機種以降ニューを省略)
マウント FDマウント
シャッター 4軸式の金属幕横走行フォーカルプレーン 1/2000、1/1000、1/500、1/250、1/125、1/60、1/30、1/15、1/8、1/4、1/2、1、2、4、8秒、B、X(1/2000〜1/125秒・B・X=1/90秒は機械制御式、1/90〜8秒を電子制御式としたハイブリッド方式、時限調節式セルフタイマー内蔵(電子音作動報知)、シャッターレリーズは電磁式および機械式、多重露出可能
フラッシュシンクロ X接点、抜け止め式ドイツ型ソケットおよびホットシュー式
ファインダー ペンタ着脱可能アイレベル式(アイレベルファインダーFN=倍率0.8倍、視野率97%、スクリーン中央にニュースプリットプリズム式距離計、その周囲にマイクロプリズム式距離計を備えたレーザーマット式)3種類の測光感度分布特性を基本に13タイプ32種の交換スクリーン完備、視野内に測光範囲、露出計指針および追針、設定シャッタースピード値、絞り値、絞り込み測光用定点、各種の警告表示
測光・露出制御 SPC素子使用、TTL開放追針合致式マニュアル測光を基本に、交換ファインダーのAEファインダーFNとAEモータードライブFNの使用でシャッタースピード優先式AEに機能化するなどのシステム化が図られている、測光感度分布特性は交換スクリーンのタイプにより中央部スポット測光(約3%部)、中央部分測光(約12%部)、中央重点平均測光の選択が可能、露出補正機構=±2EV、測光連動範囲はEV-1〜18(ISO100:F1.4)、フィルム感度使用域はISO6〜6400
使用電源 6Vの2CR-1/3Nリチウム電池又は4LR44 アルカリマンガン電池1個、バッテリーチェック機構付き
フィルム装填・給送 ロック機構付き裏蓋開閉スプール差し込み式、上部レバー139度回転、予備角30度(小刻み巻き上げ可能)
フィルムカウンター 裏蓋開放に連動して自動復帰する順算式
フィルム巻き戻し 折り畳み回転クランク式
大きさと質量 147×97×48mm、795g(ボディのみ、アルベルファインダーFN付き)