【写真関係資料 目次へ】
★31
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第031号:2005/01/22
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■■■目次■■■
【前号のポイント】
【第五の心得:一番厳しい批評家は自分 その2】
【あなたの声を聞かせてください】
【『風の写真館コレクション』より】
【最高のアマチュア合唱団・再始動プロジェクト】
【あとがき】
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【前号のポイント】
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●第五の心得とは、「自分の作品に一番厳しい批評家は自分である。
作品セレクションが撮影以上に大切と知っている」です。
●まず最初に質問。「写真はパッションだ」ということで、自分の
衝動の赴くままに撮影し、出来上がった写真のセレクションは一切
行なわず、「これがオレの表現したかったことだ!」と発表して、
何か問題はあるのでしょうか?
●実は全然ダメなのです。プロフェッショナル・サンデー・フォト
グラファーには、自分の作品に対して厳しい姿勢を求められるから
です。
●一つ目の理由は、多くの場合、様々な技術的未熟さや企画段階の
未熟さにより、作品が思った通りに写らず、必ずしも十分に自己表
現できていないからです。(分かり易く言うと、「自分はいい」と
思っていても、作品としての完成度が低いのです)
●二つ目の理由はもっと根本的なものです。
写真はその人にとっての真実、言い換えると自分そのものを写しま
す。アートとは自分の価値観が評価軸になるからこそ、自分で自分
の作品に対して厳しくしなければならないのです。
●セレクションとは、「選ぶ」作業ではなく、「捨てる」作業です。
自分の作品の完成度は、いかに不十分な作品を捨てるかにかかって
きます。
ということでした。
下記で前号について詳しくご覧いただけます。
http://www.takahisanagai.jp/photoexhibition/psp/psp30.html
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【第五の心得:一番厳しい批評家は自分 その2】
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今回は、写真を鑑賞する立場で、セレクションを考えてみましょう。
ここで、また質問です。
あなたが他の人の写真展に来ているとします。
あなたは、興味が沸かない写真作品に対しては、次のどの態度を取
りますか?
1.その作品を何回も眺め、何故自分が評価できないかを徹底的に考
える
2.写真展会場にいる作者に声を掛け、作品の意図を理解できるまで
問いただす
3.この写真展は素通りして、次の写真展に行く。
1.や2.を選んだ方は、素晴らしい方です。
でも、多くの方は3.の態度を取るのではないでしょうか?
ちなみに私も3.です。
さて、次に、これを逆に考えて再度質問します。
あなたは自分の写真展を開催しているとします。
あなたは、来場者が自分の作品を評価できないと感じた場合、次の
どの態度を取ることを期待しますか?
1.自分の作品を何回も眺め、何故評価できないかを考えて欲しい
2.写真展会場にいる作者である自分に声を掛け、作品の意図をちゃ
んと聞いて欲しい
3.自分の写真展は素通りして、次の写真展に行って欲しい
多くの方は、1.又は2.を期待するのではないでしょうか?
しかし、ご自身が他人の写真展で取った態度と同じく、圧倒的に3.
の態度を取る人が多いのです。
マザー・テレサの言葉に、「愛の対極にあるのは、憎しみではなく、
無関心である」というのがあります。
人は、評価しない作品に対しては、決して悪口は言いません。
また、「こう直せ」とも言いません。
単に無視するだけです。
何故なら、あなたという人は、他人にとってはあくまで他人であり、
愛情の対象ではないからです。
しかしながら人間は、興味が沸かない他人の作品には無関心である
にも関わらず、何故か自分が作品を発表する立場になると、他人に
自分の作品に最大限の関心を持って欲しいと思ってしまうのです。
さて、三番目の質問です。
評価できない作品を発表し続ける写真家に対しては、市場はどのよ
うに対応するでしょうか?
「メディアで徹底的に叩かれる」
....というのは、それなりに名を遂げた写真家だけです。
単に無視されるだけです。
写真家の単なる自己満足で終わってしまうということです。
プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーにとって、一番
怖いこと、それは、自分の作品が無視されることです。
自分自身が一番厳しい批評家として、自分の作品をセレクションし
なければならない理由がここにあります。
プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーは、他の誰より
も自分の作品に厳しくあらねばならないのです。
それでは、他人や市場の評価を作品セレクションの基準とすべきで
しょうか?
今までも何回か述べてきた通り、これは間違いです。
でも、何故他人の評価を基準にしてはいけないのでしょうか?
次回は、その点について考えてみましょう。
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【あなたの声を聞かせてください】
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本メルマガは、読者の皆様と一緒に作っていきたいと思います。
是非あなたのご意見・ご質問・ご要望を聞かせてください。
mailto:news@takahisanagai.jp
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【『風の写真館コレクション』より】
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今回は、"Graceful Flowers"シリーズから「寒椿 - 神奈川県大和
市、1998」です。
この週末は大雪でした。カメラを持って出かけると、こんなに寒い
日にも関わらず鮮やかな赤い色の椿が雪の中で咲いていました。
冬の花を撮っていると、いつも花の生命力の強さには驚かされます。
こちらでご覧いただけます。
http://www.takahisanagai.jp/collection/News/collection-026.html
『風の写真館コレクション』への登録は下記でどうぞ。
http://www.takahisanagai.jp/collection/collection.html
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【あとがき】
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先日、銀座キヤノンサロンで行われた竹内敏信さんの写真展を見ま
した。
キヤノンのカレンダーに使用された写真12点を展示したもので、
あの広いギャラリーに畳2枚分程の大きさに伸ばした作品は圧巻
でした。
カメラはデジカメのEOS−1Dsでした。35mmフィルムカメ
ラの画質をはるかに凌駕し、中判カメラ並の画質を持っていること
がよく分かりました。
会場には竹内さんもおられましたが、やはり圧倒的な存在感ですね。
欧州から帰国されて、そのまま会場に来られたそうです。
このような写真展を見ると、「自分も写真展を!」と大きな刺激に
なりますね。
では、また。
永井孝尚
★32
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■■■今回のポイント■■■
作品のセレクションは他人の意見に従って決める、という考え方も
あります。
合理的な考え方のような気もしますが、これでいいのかな、という
気もしますね。ちょっと考えてみましょう。
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≫≫本メルマガについて≪≪≪
本メルマガは、「ライフワークは写真」と考える方々に、
プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーという生き方
を提案します。
7つの心得を順番に紹介しています。(詳しくは下記参照)
http://www.takahisanagai.jp/photoexhibition/psp/psp-backnumber.html
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第032号:2005/02/06
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■■■目次■■■
【前号のポイント】
【第五の心得:一番厳しい批評家は自分 その3】
【あなたの声を聞かせてください】
【『風の写真館コレクション』より】
【あとがき】
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【前号のポイント】
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●写真を鑑賞する立場で、セレクションを考えてみましょう。
●写真展に来る多くの人達は、興味が沸かない作品は素通りします。
●その作品を何回も眺めて何故自分が評価できないかを徹底的に考
えたり、写真展会場にいる作者に声を掛けて作品の意図を理解でき
るまで問いただす人は非常に稀です。
●これは、自分が写真展を開催している場合も同じです。あなたの
写真展の来場者は、あなたの作品に興味が沸かないとそのまま素通
りします。
●マザー・テレサは、「愛の対極にあるのは、憎しみではなく、無
関心である」と語りました。人は評価しない作品に対しては決して
悪口は言いません。単に無視するだけです。
●しかしながら人間は、興味が沸かない他人の作品には無関心であ
るにも関わらず、何故か自分が作品を発表する立場になると、他人
に自分の作品に最大限の関心を持って欲しいと思ってしまうのです。
●自分自身が一番厳しい批評家として、自分の作品をセレクション
しなければならない理由がここにあります。プロフェッショナル・
サンデー・フォトグラファーは、他の誰よりも自分の作品に厳しく
あらねばならないのです。
●しかし一方で、他人や市場の評価を作品セレクションの基準とす
べきでないのです。何故でしょうか?
ということでした。
下記で前号について詳しくご覧いただけます。
http://www.takahisanagai.jp/photoexhibition/psp/psp31.html
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【第五の心得:一番厳しい批評家は自分 その2】
──────────────────────────────
職業的プロフェッショナル・フォトグラファーの場合、市場の評価
が写真作品セレクションの絶対基準です。ただこの場合、写真は
「作品」ではなく「商材」と考えた方がいいかもしれません。
職業的プロフェッショナル・フォトグラファーにとって、写真とは
お金を得るための手段です。クライアントの要求・要望が写真評価
軸になりますので、市場の評価が写真セレクションの絶対基準です。
ただし、極一部の恵まれたケースを除き、ほとんどの場合は売れる
写真とクライアントに必要とされる写真が一致することはありませ
ん。
しかし、プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーは、市
場評価を作品セレクションの基準にすべきではありません。
これは、自分の中の写真評価軸をどこに置いているのか、というこ
とによる違いによります。
プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーにとっては、写
真とはお金を得るための手段ではなく、自分自身の表現手段です。
従って、写真評価軸はあくまで自分自身の厳しい作品選定基準です。
例えば、絵画の世界のゴッホを考えてみましょう。
現在、作品オークションで巨額で取引されています。その是非はさ
ておき、生前は作品は全く評価されず極貧の生活を送っていました。
1890年に自殺。彼が評価されるようになったのは、1901年
と1905年に大回顧展が開かれてからです。
生前のゴッホが、作品が売れないことを悩んでいたのかどうかは分
かりません。しかし死ぬまでの最後の2年間の素晴らしい作品を見
る限り、創作活動と市場評価は全く別物であることがよく分かりま
す。
逆説的な言い方ですが、自分の厳しい選定基準をクリアしていれば、
市場が受け入れなくても、それは問題と考えるべきではないのかも
しれません。
「市場が自分の作品を受け入れてくれない」というのは寂しいもの
ですし、「世の中に認められたい」という自分のエゴをマネージす
ることは難しいものですが....。
従って、例えば、アンケートを取って自分の作品を選ぶ、という行
為は、プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーとして何
よりも大切な自分の評価軸を放棄していることになります。
(ただし、自分の評価軸を予め持っていて、世の中の基準と自分の
評価軸がどれだけ離れているのかを把握するために、アンケートを
取る、ということはありうるかもしれません)
私は、一つの基準は、自分自身が心の底から感動しているかどうか、
というのが一つの評価軸になりうるのではないかと考えています。
英国の宰相だったウィンストン・チャーチルは、次のように語って
います。
誠実でなければ人を動かすことはできない。
人を感動させるには、自分が心の底から感動しなければならない。
自分が涙を流さなければ、人の涙を誘うことはできない。
自分が信じなければ、人を信じさせることはできない。
これは、写真の作品作りにも当てはまる言葉ではないかと思います。
さて、セレクションについて述べてきましたが、作品セレクション
という作業は実に難しいものです。
次回は、その点について考えてみましょう。
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【あなたの声を聞かせてください】
──────────────────────────────
本メルマガは、読者の皆様と一緒に作っていきたいと思います。
是非あなたのご意見・ご質問・ご要望を聞かせてください。
mailto:news@takahisanagai.jp
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【『風の写真館コレクション』より】
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今回は、Tokyo Bay Areaシリーズから、「真冬の早朝、東京湾 - 城
南島、1991」です。
この年の冬は、火山活動の影響で明け方の空が真っ赤に染まりまし
た。年末・年始休暇の1週間は、東京湾岸で写真を撮り続けました。
http://www.takahisanagai.jp/collection/News/collection-027.html
『風の写真館コレクション』への登録は下記でどうぞ。
http://www.takahisanagai.jp/collection/collection.html
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【あとがき】
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先日、ブルーノート東京でTAKE6を聴いてきました。
6人の声だけで紡ぎ出すコーラス・ハーモニーは、身体の芯からゾ
クゾクする程の感動モノでした。
生の音楽に接して、ここまで感動したのは初めての体験です。
何故感動したのか、考えてみました
・誰にも真似できない圧倒的なテクニック
・6人が一心同体となったコラボレーション
・何よりも彼ら自身が心から音楽を楽しんでいること
・音楽を聴いてくれる人達に楽しんでもらおうとする徹底したプロ
意識
世界レベルでの激しい競争が行われる米国で、厳しい審美眼を持つ
顧客がいてこそ、彼らのようなグループが育ってくるのでしょう。
ひるがえって、日本。
ミリオンセラーになる音楽が必ずしも高い音楽性を持っている訳で
はありません。これは、我々顧客が日本のアーティストを育ててい
ない、ということなのかもしれません。
では、また。
永井孝尚
★33
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第033号:2005/02/20
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■■■目次■■■
【前号のポイント】
【第五の心得:一番厳しい批評家は自分 その4】
【あなたの声を聞かせてください】
【私のお気に入り】
【『風の写真館コレクション』より】
【あとがき】
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【前号のポイント】
──────────────────────────────
●職業的プロフェッショナル・フォトグラファーの場合、写真はお
金を得るための手段ですので、クライアントの要求・要望、つまり
市場の評価が写真セレクションの絶対基準です。
●一方、プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーは、市
場評価を作品セレクションの基準にすべきではありません。プロフ
ェッショナル・サンデー・フォトグラファーにとっては、写真とは
お金を得るための手段ではなく、自分自身の表現手段であり、写真
評価軸はあくまで自分自身の厳しい作品選定基準です。
●例えばゴッホは、生前は作品は全く評価されず極貧の生活を送っ
ていました。彼が評価されるようになったのは、死後10年以上経
ってからです。しかし、死ぬまでの最後の2年間の素晴らしい作品
を見る限り、創作活動とその時点の市場評価は全く別物であること
がよく分かります。
●自分の厳しい選定基準をクリアしていれば、市場が受け入れなく
ても、それは問題と考えるべきではないのかもしれません。
●英国の宰相だったウィンストン・チャーチルは、次のように語っ
ています。
誠実でなければ人を動かすことはできない。
人を感動させるには、自分が心の底から感動しなければならない。
自分が涙を流さなければ、人の涙を誘うことはできない。
自分が信じなければ、人を信じさせることはできない。
●一つの基準は、自分自身が心の底から感動しているかどうか、か
もしれません。
下記で前号について詳しくご覧いただけます。
http://www.takahisanagai.jp/photoexhibition/psp/psp32.html
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【第五の心得:一番厳しい批評家は自分 その4】
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今回のテーマはセレクションの難しさについてです。
第30号で、
『自分の衝動の赴くままに撮影し、出来上がった写真のセレクショ
ンは一切行なわず、「これがオレの表現したかったことだ!」と発
表すればよいのか?』
という問いかけをさせていただきました。
http://www.takahisanagai.jp/photoexhibition/psp/psp30.html
これに対して、やはりセレクションは必要であると申し上げました。
写真のセレクションについては、以前テレビ番組で面白い場面を見
たことがあります。
カメラマンを題材とした、10年程前に放映された深夜放送でした。
この番組では、カメラマンの卵が10分程度の与えられた時間内で
初対面のモデルを撮影し、出来上がった写真で競いあう、という内
容でした。
ある回に、ゲスト出演していた加納典明がこの撮影に参加しました
が、彼の撮影方法と作品は圧巻でした。
モデルとコミュニケーションを取った後、レンズ付フィルムカメラ
でノーファインダーで無造作に3枚だけパシャパシャ適当に撮影し、
「これで終わり」と、そのまま現像係に渡しました。
その3枚がそのまま作品になっているのですが、全て露出・ピント
・構図・シャッターチャンス、そして何よりも写真の迫力が素晴ら
しい出来でした。
恐らく、加納典明の場合、撮影前のモデルとのコミュニケーション
の段階で最終的な作品イメージも作っていたのかもしれません。
番組なので多少やらせっぽい点があるかとは思いますが、本来はこ
れがあるべき姿なのでしょう。
しかし、残念ながら我々は必ずしも加納典明のような天才ではあり
ません。
また、何回か申し上げたように、プロフェッショナル・サンデー・
フォトグラファーに対しては、他人は誰も厳しいことを言ってくれ
ないと覚悟しなければなりません。
そこでセレクションという作業が必要になってくる訳です。
さて、何が写真のセレクションを難しくしているのでしょうか?
それは、自分自身の作品への思い入れ、被写体への思い入れ、迷い、
エゴ等です。
実は、自分の作品に一番甘いのは自分なのです。
実際には、プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーは自
分が自分の作品に対して一番厳しい批評家である必要があります。
作品の隅々に責任を持たなくてはいけません。
一箇所でも納得できない場所があれば、それは作品として世の中に
出すべきではありません。
このように考えると、セレクションは、撮影した写真作品から技術
的未熟さやエゴを洗い流すために必要な作業である、と考えること
も出来るかもしれません。
さて、このように難しいセレクションの作業ですが、参考までに私
が心掛けている方法は既に何回か述べてきた以下の方法です。
・今、自分が死んで、作品だけが残った。
・人々はその作品で自分という人間を評価することになる。
・その場合、自分は、ここでセレクションした作品のみで自分とい
う人間を評価されて、納得できるのか?
このプロセスを通じて残った写真のみを作品として残すように心掛
けていますが、実際には難しい点もあります。
例えば、一つのテーマで写真展を行う場合です。
数十点の作品で流れを作っていくのですが、どうしても流れの中で
作品に強弱を付ける必要も出てきます。また現実的な問題として、
同じテーマで数十点の作品を揃えるには非常に高度な技量が必要で
す。どうしても作品としては弱いものも出てきます。
しかしながら、それでもやはり、私はこのような心掛けを常に持っ
て作品を選んでいかなければならないのではないか、と思っていま
す。
以上、第五の心得の最終回として、セレクションの難しさについて
述べさせていただきました。皆様のご参考になれば幸いです。
次は、第五の心得のまとめをお送りします。
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【あなたの声を聞かせてください】
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本メルマガは、読者の皆様と一緒に作っていきたいと思います。
是非あなたのご意見・ご質問・ご要望を聞かせてください。
mailto:news@takahisanagai.jp
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【私のお気に入り】
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私のお気に入りの写真集や書籍をご紹介します。
■■ "Coincidences" Sarah Moon ■■
私が大好きな作家の一人、Sarah Moonの作品集です。
約200点の作品は、主に1990年以降のものが大部分を占めて
います。
Sarah Moonの作品集自体、日本ではなかなか入手できない状況です。
私は10年ほど前に銀座プランタンで行われた写真展で彼女の写真
集を入手しましたが、このような写真展企画と併せて販売される写
真集は一般に販売されないのが実情のようです。
数ヶ月前に何気なくアマゾンで検索してみたところ、この写真集が
見つかりました。新品の場合12000円以上するところ、マーケ
ットプレイスで3500円で出品している方がいて、思わず購入し
てしまいました。
Sarah Moonの作品に触れてみたい方にはお勧めです。
詳しくは下記をご覧下さい。
http://amazon.co.jp/o/ASIN/1892041464/wps-22
ところで、アマゾンでは何故か「アダルト商品につき18歳未満の
方は購入できません」と出てきます。確かに一般的なヌード写真は
入っているのですが、アダルトという程の過激な写真はないように
思うのですけど、何故でしょう?
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【『風の写真館コレクション』より】
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今回は、Tokyo Bay Areaシリーズから、「真冬の早朝、東京湾 -
城南島その2、1991」です。実は前回お送りした写真と同じ時間・
同じ場所の撮影です。
前回は超広角レンズで明け方の真っ赤に染まる空全体とそれを受け
て輝く海を表現しました。
今回は超望遠レンズを使用して水平線に陽炎のように浮かぶ工業地
帯を撮ってみました。
表現手段の違いで同じ被写体が全く変わるいい例かもしれません。
こちらは今回の作品。
http://www.takahisanagai.jp/collection/News/collection-028.html
ちなみに、前回の作品はこちらです。
http://www.takahisanagai.jp/collection/News/collection-027.html
『風の写真館コレクション』への登録は下記でどうぞ。
http://www.takahisanagai.jp/collection/collection.html
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【あとがき】
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知り合いの方々から、「仕事をしながら、よくメルマガを書く時間
がありますね」と言われます。
私の場合、通勤時間に電車の中で書いています。
ただ、昨年引っ越して電車の中で座れる時間が少なくなったので、
最近はウィークディにある程度の骨格を作っておいて、週末の土日
にまとめて書くことが多くになりました。
まぁ、メルマガスタート時に第七の心得までの全体の構成を予め作
っていて、全くのゼロから毎回書き起こしている訳ではないので、
なんとか発刊し続けています。
でも、今回も出来上がったのは日曜日の午後10時過ぎでした。
もうちょっと早めに仕上がるようにしたいですね。
では、また。
永井孝尚
★34
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第034号:2005/03/06
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■■■目次■■■
【第五の心得のまとめ】
【あなたの声を聞かせてください】
【私のお気に入り】
【『風の写真館コレクション』より】
【あとがき】
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【第五の心得のまとめ】
──────────────────────────────
●第五の心得とは、「自分の作品に一番厳しい批評家は自分である。
作品セレクションが撮影以上に大切と知っている」です。
●「写真はパッションだ」ということで、衝動の赴くままに撮影し、
一切セレクションせずに、「これがオレの表現したかったことだ!」
と発表しても、素晴らしい作品にはなりません。
●一つ目の理由は、様々な技術的未熟さや企画段階の未熟さにより、
「自分はいい」と思っていても、作品としての完成度が低いからで
す。
●二つ目の理由は、写真はその人にとっての真実、言い換えると自
分そのものを写しますので、自分自身が自分の作品に対して厳しく
しなければならないからです。
●言い換えれば、セレクションとは、「選ぶ」作業ではなく、「捨
てる」作業です。作品の完成度は、いかに不十分な作品を捨てるか
にかかってきます。
●プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーには、自分の
作品に対して厳しい姿勢を求めらます。
●写真を鑑賞する立場でセレクションを考えるとよりセレクション
の重要さがわかります。
●例えば、自分が写真展に行ったときのことを考えてみてください。
興味が沸かない作品は素通りしますよね。その作品を何回も眺めて
何故自分が評価できないかを徹底的に考えたり、写真展会場にいる
作者に声を掛けて作品の意図を理解できるまで問いただすことは、
通常行わないと思います。
●自分が写真展を開催している場合も同じです。
あなたの写真展の来場者は、あなたの作品に興味が沸かないとその
まま素通りします。
●人は、自分自身は興味が沸かない他人の作品には無関心であるに
も関わらず、自分が作品を発表する立場になると他人に自分の作品
に最大限の関心を持って欲しいと思ってしまうのです。
●マザー・テレサは、「愛の対極にあるのは、憎しみではなく、無
関心である」と語りました。人は評価しない作品に対しては決して
悪口は言いません。単に無視するだけです。
●だからこそ、自分自身が一番厳しい批評家として、自分の作品を
セレクションしなければならないのです。
●しかし、プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーは、
他人や市場の評価を作品セレクションの基準とすべきでないのです。
何故でしょうか?
●職業的プロフェッショナル・フォトグラファーの場合、クライア
ントの要求・要望・市場の評価が写真セレクションの絶対基準です。
何故なら写真はお金を得るための手段だからです。
●一方、プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーにとっ
ては、写真はお金を得るための手段ではなく、自分自身の表現手段
であり、写真評価軸はあくまで自分自身の厳しい作品選定基準です。
市場評価を作品セレクションの基準にすべきではないのです。
●ゴッホは、生前は作品は全く評価されず極貧の生活を送っていま
した。評価されるようになったのは、死後10年以上経ってからで
す。しかし、死の直前の2年間の素晴らしい作品を見ると、創作活
動とその時点の市場評価は全く別物であることがよく分かります。
●自分の厳しい選定基準をクリアしていれば、市場が受け入れなく
ても、それは問題と考えるべきではないのかもしれません。
●以下は英国の宰相・ウィンストン・チャーチルの言葉です。
誠実でなければ人を動かすことはできない。
人を感動させるには、自分が心の底から感動しなければならない。
自分が涙を流さなければ、人の涙を誘うことはできない。
自分が信じなければ、人を信じさせることはできない。
●セレクションの一つの基準は、自分自身が心の底から感動してい
るかどうか、かもしれません。
●逆説的に言えば、セレクションは必要悪と言えます。撮影の段階
で、作品の最終イメージが確定し、かつその通り作品を仕上げる実
力を持っていれば、撮影した時点で作品は出来上がっている筈であ
り、セレクションは不要です。 ⇒加納典明の事例参照
http://www.takahisanagai.jp/photoexhibition/psp/psp33.html
●しかし、残念ながら我々は必ずしも写真の天才ではありません。
また、プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーに対して
は、他人は誰も厳しいことを言ってくれません。
●そこでセレクションという作業が必要になってくる訳ですが、何
が写真のセレクションを難しくしているのでしょうか?
●それは、自分自身の作品への思い入れ、被写体への思い入れ、迷
い、エゴ等です。
●実は、自分の作品に一番甘いのは自分なのです。
●プロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーは自分の作品
の隅々に責任を持たなくてはいけません。一箇所でも納得できない
場所があれば、それは作品として世の中に出すべきではありません。
●セレクションは、撮影した写真作品から技術的未熟さやエゴを洗
い流すために必要な作業である、と考えることも出来ます。
●参考までに私が心掛けている方法は以下の方法です。
・今、自分が死んで、作品だけが残った。
・人々はその作品で自分という人間を評価することになる。
・その場合、自分は、ここでセレクションした作品のみで自分とい
う人間を評価されて、納得できるのか?
●しかし、実際には難しい点もあります。例えば、統一テーマで写
真展を行う場合です。
●数十点の作品で流れを作る際に、流れの中で作品に強弱を付ける
必要も出てきます。また同一テーマで数十点の作品を揃えるには非
常に高度な技量が必要で、どうしても弱い作品も出てきます。
●しかしながら、それでもやはり、このような心掛けを常に持って
作品を選んでいかなければならないのではないか、と思っています。
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【あなたの声を聞かせてください】
──────────────────────────────
第五の心得、いかがでしたでしょうか?
是非あなたのご意見・ご質問・ご要望を聞かせてください。
mailto:news@takahisanagai.jp
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【私のお気に入り】
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私のお気に入りの写真集や書籍をご紹介します。
■■ 「知的プロフェッショナルへの戦略」田坂広志 ■■
何回か本メルマガで引用させていただいる田坂広志先生の著書です。
田坂先生の著書は私はいつも座右の銘としております。
本書は、写真・ビジネスの両面で学ぶところが大です。
その一部を挙げましょう。
『知識資本主義の時代に求められる人材はナレッジ・ワーカー。
しかし、我々が目指すべきはナレッジ・ワーカーではない。
知的プロフェッショナルである。
求められる人材と活躍すべき人材は異なる。
「求められる人材」とは、
これからの企業や産業や社会が「労働力」として欲する人材である。
一方、「活躍する人材」とは、
これからの企業や産業や社会で「影響力」を発揮していく人材であ
る。』
ビジネス面でも深いメッセージが込められていますが、
「人材」を「写真家」と読み替えてみると、また別の示唆を与えて
くれます。
プロフェッショナル・サンデ・フォトグラファーも、また、知的プ
ロフェッショナルでありたいですね。
知識社会を生きていく全ての人に、ご一読をお勧めします。
詳しくは下記をご覧下さい。
http://amazon.co.jp/o/ASIN/4062111535/wps-22
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【『風の写真館コレクション』より】
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今回は、Tokyo Bay Areaシリーズから、「深紅の空とインターコン
チネンタル - 横浜MM21、1992」です。
前回、前々回の写真と同じ時期に撮影しました。この冬は、火山活
動の影響で世界中で明け方・夕方にこのような真っ赤な空を見るこ
とができました。
http://www.takahisanagai.jp/collection/News/collection-029.html
『風の写真館コレクション』への登録は下記でどうぞ。
http://www.takahisanagai.jp/collection/collection.html
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【あとがき】
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先日、母校写真部の現役生写真展批評会に参加してきました。
喫茶店を数週間借り切って行った、有志での合同写真展でした。
限られたスペースの中で、真剣に作品を選び、お互いに切磋琢磨し
て仕上げて展示していく姿勢は素晴らしいですね。
私も現役当時、喫茶店で行っていた写真展の壁面をどのように埋め
ていくか、ワクワクしながら考えていましたが、これは社会人にな
って写真展を行う今も同じ気持ちです。
写真にかける情熱には年齢は関係ない、と思いました。
では、また。
永井孝尚
★35
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第035号:2005/03/20
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■■■目次■■■
【改めて、七つの心得について】
【第六の心得:作品発表の場を、自分で創る 1】
【あなたの声を聞かせてください】
【私のお気に入り】
【『風の写真館コレクション』より】
【あとがき】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【改めて、七つの心得について】
──────────────────────────────
本メルマガでは、七つの心得を以下の通り紹介してきました。
第一の心得:第4〜6号
第二の心得:第8〜15号
第三の心得:第16〜20号
第四の心得:第21〜29号
第五の心得:第30〜34号
あと残りは二つとなりました。
ここで改めて七つの心得を見てみましょう。
詳しくは、バックナンバーを参照ください。
<http://www.takahisanagai.jp/photoexhibition/psp/psp-backnumber.html>
【第一の心得】写真を趣味ではなく、ライフワーク、自己表現手段
と捉え、「写真とは何か?」を考え続けている
【第二の心得】数十年という人生の中での長い時間スパンで、自分
だけのテーマを追い続け、撮り続ける
【第三の心得】最高の作品を作る道具として撮影機材には拘る。し
かし、機材には溺れない
【第四の心得】自分の選んだテーマでは第一人者としてプロと同等
の技術を持つ。但し、技術が全てでないことも知っている
【第五の心得】自分の作品に一番厳しい批評家は自分である。作品
セレクションが撮影以上に大切と知っている
【第六の心得】作品発表の場を、自分で創る
【第七の心得】そして何よりも、写真を楽しむ
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【第六の心得:作品発表の場を、自分で創る 1】
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第六の心得は、「作品発表の場を、自分で創る」です。
最初に質問です。
何故、我々は作品発表の場を創り、他人に作品を見せる必要がある
のでしょうか?
⇒自分の乾坤一擲の作品に感動して欲しいから。
⇒自分の生き様を世に問いたいから。
⇒自分が作品を撮っているということを認識して欲しいから。
それらも正しい理由です。
これらに加えて、私は
⇒他人に作品を見せることで、作品自身が成長するから
を挙げたいと思います。
単に作品を見て欲しいのであれば、必ずしも作品発表の場を創る必
要はありません。
例えば、両親・兄弟・妻・夫・子供等の家族や、同級生・同僚等の
友人に作品を見せれば、それなりの反応を得ることが出来ます。
しかし、その反応は、「あなた」という個人に対する評価も含めた
反応です。必ずしも、純粋に作品単体で評価される訳ではありませ
ん。
これは、自分自身が家族の発表会に参加する場面を考えてみると、
分かりやすいかもしれません。
例えば、自分の子供が描く絵画作品については、どうしても評価が
甘くなるという現象が起きます。これは作者と自分との関係が濃密
なため、作品評価の際に「xxxちゃんが描いたxxの絵」という
ように、予めイメージが固まってしまうからです。
本来、作品はそれ単体で評価されるべきです。
作者自身の人物評価と併せて作品が評価されることは、プロフェッ
ショナル・サンデー・フォトグラファーにとっては必ずしも望まし
いことではありません。
作品を見る人が自分から離れた人である程、つまり自分との関係性
が低いほど、作品はそれ単体で他人から評価されます。
このためには、自分とは関係性がない多くの人達に作品を見ていた
だき、忌憚のない評価に晒すことが必要です。
このような評価に晒し、揉まれることで、作品自体が成長していき
ます。
次回は、もう少し掘り下げて考えてみたいと思います。
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【あなたの声を聞かせてください】
──────────────────────────────
あなたのご意見・ご質問・ご要望を聞かせてください。
mailto:news@takahisanagai.jp
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【私のお気に入り】
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私のお気に入りの写真集や書籍をご紹介します。
■■ 「プロカメラマンになれる本」 北斗 景 ■■
私自身、二十代中頃、ビジネスマンを続けるか、プロの写真家にな
るかで悩んだ時期に出会った本です。
プロフェッショナル・フォトグラファーとはどのような仕事で、ど
のような心構えを持たなければならないかを教えてくれた本でした。
それから20年近くが経過しました。
書店でこの本に出会うことはなくなりましたが、ある日インターネ
ットで何気なく検索してみると、なんと、この本の内容全体を掲載
しているサイトがあるではないですか!
この本は、このメルマガを始めるにあたっても、多くの示唆を与え
てくれました。ご興味のある方は、是非ご一読を。
http://www.kitanet.ne.jp/~aash/
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【『風の写真館コレクション』より】
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今回は、Tokyo Bay Areaシリーズから、「建設中のランドマーク・
タワー - 横浜MM21、1992 」です。
この時期の横浜みなとみらい21地区は、横浜博が終わって残され
た非常に大きな空間に、新しくいくつかの建物が建設されていまし
た。 この横浜ランドマーク・タワーもその一つでした。
現在とは違って周囲には視界を遮る建物は一切なく、寒い夜空に、
その大きな威容を見せていました。
http://www.takahisanagai.jp/collection/News/collection-030.html
『風の写真館コレクション』への登録は下記でどうぞ。
http://www.takahisanagai.jp/collection/collection.html
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【あとがき】
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先日、ラジオを聴いていたら、元プロスポーツ選手だったキャスタ
ーと、現プロスポーツ第一人者が対談をしていました。
その中で、「プロは常に、たとえ1cmでも、1mmでも、自分自
身を成長させ続けなければならない」という話をしていました。
第六の心得「作品発表の場を、自分で創る」も、作品を成長させる
ことを狙っています。
これから数回、お付き合いの程よろしくお願いいたします。
では、また。
永井孝尚
★36
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第036号:2005/04/03
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■■■目次■■■
【前号のポイント】
【第六の心得:作品発表の場を、自分で創る 2】
【あなたの声を聞かせてください】
【『風の写真館コレクション』より】
【あとがき】
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【前号のポイント】
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●第六の心得は、「作品発表の場を、自分で創る」です。
●何故、我々は作品発表の場を創り、他人に作品を見せる必要があ
るのでしょうか?
●色々な理由が考えられますが、私は「他人に作品を見せることで、
作品自身が成長するから」を挙げたいと思います。
●単に作品を見て欲しいのであれば、必ずしも作品発表の場を創る
必要はないのです。ただ、実際には、自分の知り合いに作品を見せ
た場合、その反応は、「あなた」という個人に対する評価も含めた
反応です。必ずしも、純粋に作品単体で評価される訳ではありません。
●本来、作品はそれ単体で評価されるべきなのです。作者自身の人
物評価と併せて作品が評価されることは、必ずしも望ましくありま
せん。
●作品を見る人が自分から離れた人である程、つまり自分との関係
性が低いほど、作品はそれ単体で他人から評価されます。
●このためには、自分とは関係性がない多くの人達に作品を見てい
ただき、忌憚のない評価に晒すことが必要です。
●このような評価に晒し、揉まれることで、作品自体が成長してい
きます。
ということでした。
下記で前号について詳しくご覧いただけます。
http://www.takahisanagai.jp/photoexhibition/psp/psp35.html
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【第六の心得:作品発表の場を、自分で創る 2】
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プロフェショナル・サンデー・フォトグラファーは、ある意味で、
求道者的なところがあります。
自分の作品を徹底的に深耕していく中で、ともすると作品発表のチ
ャンスを持たないまま、撮影のみに没頭してしまい、他人には自分
の作品を一切見せようとしない人もあります。
それも一つの考え方だと思いますが、私は「作品は積極的に他人に
見ていただくべき」との考えです。それも出来る限り自分との関係
が薄い人に、です。
理由は前回書いた通り、「他人に作品を見せることで、作品自身が
成長するから」です。
写真とは、人に見せることが前提であるメディアです。
つまり、写真というメディアを通じて、他人に何らかのメッセージ
を「伝える」ために生まれたものです。
逆に言えば、他人に見せるつもりがないのであれば、感動した場面
は自分の記憶にしまっておけばよいのであって、敢えて写真を撮る
必要はないのではないかと私は考えます。
さて、他人に見せるために生まれた写真というメディアですが、作
品を見ていただく全ての人々に作品を通じて自分のメッセージを伝
えるのは困難です。これは、我々が出会う全ての人とよい関係を築
くのが困難であるのと同じことなのかもしれません。
それでも作品を見ていただくことを続けるのは何故でしょうか?
それは写真作品を介してモノゴトに意味(=メッセージ)を与え、
それを他人が認識する場に身を置くことで、さらに新しい価値を生
み出すためです。
他人の反応は、仮に実際に声にならなくても、その場に身を置けば
無言でも空気として伝わります。それを感じ、作品をどのように成
長させるのかを考えることが重要なのです。
このプロセスを通じて、作品は成長していきます。
ちょっと抽象的な表現なので、具体例として私自身の経験をご紹介
します。
1989年、私は東京湾岸をテーマにした写真展「Tokyo Bay Area」
を開催しました。
テーマは「東京湾岸の持つ無国籍な独特の透明な空気感」でした。
東京湾岸をこのように捉えた作品は存在していなかったので、写真
展会場ではそれなりの反応がありました。しかしながら、誰も明示
的には言いませんでしたが、会場に来られる人達の様子を1週間見
ていて、私自身には「しかし作品全体の洗練度がちょっと足りない
かなぁ」、という影の声が聞こえたような気がしました。
そこで、再度シナリオを組み直して、1993年に第二弾「Tokyo
Bay Area II」を発表しました。この写真展は、1989年の写真
展を見た方々からも「洗練度が上がった」との評価をいただきまし
た。
数年後、ホームページでは第一弾・第二弾の作品を再構成して、一
つのシリーズとして発表しました。
しかし同時に、このパターンをどのように発展させるか、という行
き詰まりも感じました。そこでしばらく東京湾岸シリーズはお休み
をさせていただきました。
10年後の今、第一弾・第二弾をどのように成長させていくかをテ
ーマに、再び東京湾岸シリーズに取り組んでいます。
仮に、私が他人に一切作品を見せることなく東京湾岸の作品を撮り
続けていたら、作品がこのように成長することはなかったでしょう。
やはり、写真展の審査や、実際の写真展で来場する人達に作品を晒
し続け、明示的・暗示的なメッセージをいただいたからこそ、今で
も作品が成長し続けているのだと思います。
次回は、作品発表の方法についてご紹介したいと思います。
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【あなたの声を聞かせてください】
──────────────────────────────
あなたのご意見・ご質問・ご要望を聞かせてください。
mailto:news@takahisanagai.jp
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【『風の写真館コレクション』より】
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今回は、Tokyo Bay Areaシリーズから、「早朝、城南島の釣り人 -
城南島、1987」です。
18年前に撮影した作品です。 東京湾岸を撮影する際に一番出会
う人達は、釣り人です。 羽田空港の拡張工事をしていたこの当時、
羽田空港の北側にある城南島には、朝になると釣り人達が集まって
いました。 300mmの超望遠レンズで捉えてみました。
http://www.takahisanagai.jp/collection/News/collection-031.html
『風の写真館コレクション』への登録は下記でどうぞ。
http://www.takahisanagai.jp/collection/collection.html
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【あとがき】
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今回、『風の写真館コレクション』でお送りした作品を撮影したの
は25歳の時でした。それから18年間が経過し、今43歳です。
今回、何気なく選んだ作品ですが、この18年の間に、私自身は色
々な経験をさせていただきました。
それでも、この作品を見ると、18年前に撮影した瞬間のその場の
空気が、まるで今朝のことのように鮮明に思い出されます。
では、また。
永井孝尚
★37
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第037号:2005/04/17
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■■■目次■■■
【前号のポイント】
【第六の心得:作品発表の場を、自分で創る 3】
【あなたの声を聞かせてください】
【『風の写真館コレクション』より】
【あとがき】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【前号のポイント】
──────────────────────────────
●作品は積極的に、出来る限り自分との関係が薄い人に、見ていた
だくべきです。 理由は「他人に作品を見せることで、作品自身が
成長するから」です。
●写真は、他人に何らかのメッセージを「伝える」ために生まれた
メディアです。しかし一方で、作品を見る全ての人々に自分のメッ
セージを伝えるのは困難です。(我々が出会う全ての人とよい関係
を築くのが困難であるのと同じように)
●それでも他人に作品を見せ続けなければならない理由は何でしょ
うか?
●それは写真作品を介してメッセージを発信し、それを他人が認識
する場に身を置くことで、さらに新しい価値を生み出すためです。
●他人の反応は、その場に身を置けば無言でも空気として伝わりま
す。それを感じ、作品をどのように成長させるのかを考えることが
重要なのであり、このプロセスを通じて、作品は成長していきます。
●具体例として、私の写真展「Tokyo Bay Area」を紹介します。
●1989年、私は東京湾岸を題材に、「東京湾岸の持つ無国籍な
独特の透明な空気感」をテーマとして写真展を開催しました。
●写真展会場ではそれなりの反応がありましたが、私自身には会場
の空気から「しかし作品全体の洗練度がちょっと足りないかなぁ」、
という影の声が聞こえたような気がしました。
●再度シナリオを組み直して、1993年に第二弾「Tokyo Bay
Area II」を発表しました。この写真展は、1989年の写真展を
見た方々からも「洗練度が上がった」との評価でした。
●しかし同時に、このパターンをどのように発展させるか、という
行き詰まりも感じ、しばらく東京湾岸シリーズはお休みをさせてい
ただきました。 10年後の今、第一弾・第二弾をどのように成長
させていくかをテーマに再び東京湾岸シリーズに取り組んでいます。
●仮に、私が他人に一切作品を見せることなく東京湾岸の作品を撮
り続けていたら、作品がこのように成長することはなかったでしょ
う。
●やはり、写真展の審査や、実際の写真展で来場する人達に作品を
晒し続け、明示的・暗示的なメッセージをいただいたからこそ、今
でも作品が成長し続けているのだと思います。
ということでした。
下記で前号について詳しくご覧いただけます。
http://www.takahisanagai.jp/photoexhibition/psp/psp36.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【第六の心得:作品発表の場を、自分で創る 3】
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作品発表の方法は以下のように色々あります。
・写真コンテスト
・ホームページ
・写真集出版(スポンサーによるもの)
・写真集出版(自費出版によるもの)
・写真展(合同展)
・写真展(個展)
それぞれについて考えてみましょう。
● ● ● ● ● ●
1.写真コンテスト
写真団体、企業、公共機関等が主催して行うコンテストです。
レベルの高い写真コンテストに上位入賞すると、それだけでも立派
な写歴となり、世の中に通用します。
ただし、多くの場合、入賞作品の版権はコンテスト主催側に渡りま
すし他媒体での発表は禁じられますので、ライフワークとして撮り
続けている作品を出品する際には注意が必要です。
2.ホームページ
何といっても気軽に始められる点がよいと思います。
国内のインターネット普及率も50%を超えてきましたので、非常
に多くの方々に見ていただける可能性があります。
但し、写真のホームページは世の中に氾濫しているのが実情であり、
多くの方々に見ていただくためには各種検索エンジンやポータルサ
イト、他の方々のホームページ等で紹介される必要があります。
各種サイトで紹介されるためにはどうればよいのでしょうか?
ホームページ上の作品を充実させる前に、片っ端から各サイトに掲
載お願いメールを出すのはよい方法ではありません。
また、「取り敢えず撮ったので、ホームページに掲載して他の人達
の意見を聞いてみよう」というような姿勢で写真を掲載している限
り、そのホームページは世の中の多くのホームページの中に埋もれ
てしまう可能性が極めて大です。
従って、ホームページでの写真発表と言えども、厳しい姿勢が求め
られることには変わりありません。
むしろ高品質の作品を厳選してホームページに登録することが必要
です。品質の高い作品を厳選して掲載することで、こちらからお願
いしなくても他サイトからリンクが張られ、その結果、検索エンジ
ンに上位登録されます。
また、PC画面上の写真の画質面の品質は、写真集の印刷画質、写
真展等でのオリジナルプリントの画質と比べると大きく見劣りする
ことも考慮する必要があります。画質の比較で考えると、
ホームページ < 写真集 ≪ オリジナルプリント
といった感じでしょう。
但し、ホームページ上の作品の場合は、色はそれ自身が発光してい
る点光源の集まりであり、オリジナルプリントや写真集のような反
射原稿ではありません。従って鮮やかな色彩の作品の場合は、ホー
ムページ上で見ると割ときれいに見えます。
3.写真集出版(スポンサーによるもの)
出版社等が出版社側の経費負担であなたの写真集を出版するケース
です。全国の書店で販売されるので、もしこの方法で写真集出版が
可能であれば、作品発表の方法としては非常に魅力的です。
但し、非常に厳しいのが現実です。
まず、無名の写真家に対して、出版社が自社負担で出版に応じるこ
とはめったにありません。多くの場合は折半の負担になります。
出版社によっては、この方法を新しい収入源としているケースもあ
るようです。
具体的には、ホームページで写真を発表しているアマチュア写真家
に対して「素晴らしい写真なので写真集を出版させて下さい」と持
ちかけ、本人がその気になった段階で「ただし当社としてもリスク
があるので初版の費用は折半でお願いします」という条件を付ける
という方法です。
よくよく考えてみると、この会社は実際の売上げを、購入者の代わ
りに写真家本人から立てていることになります。もし本が売れた場
合は、売れた分がさらに出版社の収入になる訳です。
出版不況の中、この方法は出版社側にとっては確実に利益を出せる
非常にリスクが低く美味しい方法で、世の中に広まっているようで
す。
写真家から見ると、書店に置いていただける可能性があることを除
けば、実態は自費出版とあまりかわりがありません。
また、写真集の寿命は意外と短いのが現実です。世の中には非常に
多くの写真集が次から次へと出版されていますが、書店の写真集の
棚は限られています。この結果、短期間で売れない写真集は絶版と
なり、売れ残った写真集は悲しいことに裁断される運命にあります。
また、写真集のデザイン(ページ数、掲載作品数、キャプションの
付け方、装丁の方法等)は、基本的に出版社側が決定します。写真
家本人の意見が全て100%通ることはありません。
従って、最初からこの方法を狙うのはあまりお勧めできません。
4.写真集出版(自費出版によるもの)
3.と異なり写真集のデザインは全て自分でコントロールできます。
但し一般の書籍流通システムでは販売できない点は注意が必要です。
10年程前は写真集を自費出版しようとすると最低500部程度か
らで100−200万円必要でしたが、最近は少数部数の自費出版
も可能になってきました。それでも数十部作成する場合は数十万円
の経費がかかります。
5.写真展(合同展)
写真展では、一番品質がよいオリジナルプリントの状態で見ていた
だける点が大きなメリットです。
しかし、合同展の場合、自分の作品はあくまで写真展に参加してい
る人達全体の中の一部でしかありません。残念ながら、自分の作品
でメッセージを伝える力は弱くならざるを得ません。
6.写真展(個展)
写真展会場を全て自分の作品で埋めて、会場の空間全体で統一した
メッセージを出すことが出来ます。BGMや照明等の効果を活かす
こともできます。
一般的な写真展の場合、費用は数十万円から100万円かかります。
また、時間的・労力的負担も大きい点も、考慮が必要です。
統一テーマで数十点の作品を構成し、メッセージを出すのは大変で
すが、このプロセスを通じて写真の力は確実に向上します。
● ● ● ● ● ●
色々な発表形態がありますが、私は個人的にオリジナルプリントを
そのまま見せられる写真展(個展)を中心に考え、補足的にホーム
ページで写真展で発表した作品を常時アクセスできるようにする、
という方法をお勧めしたいと思います。
さて、あなたは写真展というものは非常に遠くにあるものと思って
いないでしょうか?
そんなことはありません。
写真展は、誰でも開催することが出来るものです。
誰にでも写真展開催のチャンスが与えられています。職業的プロフ
ェッショナル・フォトグラファーよりもむしろ、自由に自分の時間
が使えるプロフェッショナル・サンデー・フォトグラファーこそ、
写真展開催の近道にいるとも言えます。
実際、世の中で開催されている多くの写真展は、アマチュア写真家
によって開催されています。私も写真とは関連がない会社に勤務し
ていますが、過去数回の写真展を開催しています。
ただし、写真展開催のチャンスは、写真を撮り続けていれば他の人
が与えてくれる、というものではありません。写真展を開催するた
めには、相当のエネルギーを注ぎ込む必要があります。
次回は、写真展開催の方法についてご紹介したいと思います。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【あなたの声を聞かせてください】
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あなたのご意見・ご質問・ご要望を聞かせてください。
mailto:news@takahisanagai.jp
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【『風の写真館コレクション』より】
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今回は、"Graceful Flowers"シリーズから「ゼラニウム - 柏木牧場,
1995」です。
初夏というにはまだ早い時期に、ハーブガーデンで出会ったゼラニ
ウムです。明るい淡い緑色の中に花弁が浮き上がっていました。
http://www.takahisanagai.jp/collection/News/collection-032.html
『風の写真館コレクション』への登録は下記でどうぞ。
http://www.takahisanagai.jp/collection/collection.html
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【あとがき】
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会社に入って3年目、24歳の時、
「30歳までに個展を開催したい」
と思い、東京湾岸の写真を撮り始めました。
写真展審査に何回も落ちながら、作品を練り上げるといった過程を
繰り返した結果、この思いは当初の希望よりも早く、27歳の時に
叶いました。
その後も何回か写真展を開催してまいりました。
次回以降、写真展開催のためには何を行うのかをご紹介していきた
いと思います。よろしくお願いいたします。
では、また。
永井孝尚
★38
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第038号:2005/05/01
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■■■目次■■■
【前号のポイント】
【第六の心得:作品発表の場を、自分で創る 4】
【あなたの声を聞かせてください】
【『風の写真館コレクション』より】
【あとがき】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【前号のポイント】
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●作品発表の方法は色々あります。一つずつ見ていきましょう。
1.写真コンテスト
高レベルの写真コンテスト上位入賞は立派な写歴になります。
一方で、入賞作品の版権の問題で作品を他媒体で使えなくなります
ので、ライフワークを出品する際には注意が必要です。
2.ホームページ
気軽に始められ、多くの方々に見ていただける可能性があります。
しかし写真のホームページが世の中に氾濫している中で多くの方々
に見ていただくためには、検索サイトに登録したりリンクをお願い
する前に、まず高品質の作品を厳選してホームページに登録するこ
とが必要です。
品質の高い作品を厳選して掲載することで、こちらからお願いしな
くても他サイトからリンクが張られ、その結果、検索エンジンに上
位登録されます。
また、写真の画質も考慮が必要です。一般に画質の比較で考えると、
ホームページ(PC画面) < 写真集 ≪ オリジナルプリント
ですが、ホームページでは、色は点光源の集まりであり、オリジナ
ルプリントや写真集のような反射原稿ではありません。従って鮮や
かな色彩の作品の場合は、ホームページ上で見ると割ときれいに見
えます。
3.写真集出版(スポンサーによるもの)
出版社等が出版社側の経費負担であなたの写真集を出版するケース
で、全国の書店で販売されるので、作品発表の方法としては非常に
魅力的です。
但し、無名の写真家の場合、多くの場合は出版費は折半です。出版
社によっては、この方法を新しい収入源としています。
単に売上げを購入者の代わりに写真家本人の負担に転嫁しているケ
ースが多く、出版社から声が掛かってきても注意が必要です。
また、写真集のデザインは、基本的に出版社側が決定し、写真家本
人の意見が全て100%通ることはありません。
従って、最初からこの方法を狙うのはあまりお勧めできません。
4.写真集出版(自費出版によるもの)
写真集のデザインを全て自分でコントロールできますが、一般の書
籍流通システムでは販売できません。
少数部数出版も可能になってきましたが、それでも数十部作成する
場合は数十万円の経費がかかります。
5.写真展(合同展)
一番品質がよいオリジナルプリントの状態で見ていただける点が大
きなメリットですが、自分の作品はあくまで写真展に参加している
人達全体の中の一部でしかなく、自分の作品でメッセージを伝える
力は弱くならざるを得ません。
6.写真展(個展)
写真展会場の空間全体を使い統一したメッセージを出すことが出来
ます。
時間的・労力的負担も大きい点、考慮が必要です。例えば一般的な
写真展の場合、費用は数十万円から100万円かかります。
統一テーマで数十点の作品を構成し、メッセージを出すのは大変で
すが、このプロセスを通じて写真の力は確実に向上します。
● ● ● ● ● ●
私は個人的には写真展(個展)を中心に考え、補足的にホームペー
ジで写真展で発表した作品を常時アクセスできるようにする、とい
う方法をお勧めします。
さて、写真展というものは遠くにあるものではなく、誰でも開催す
ることが出来るものです。自由に自分の時間が使えるプロフェッシ
ョナル・サンデー・フォトグラファーこそ、写真展開催の近道にい
るとも言えます。
ただし、写真展開催のチャンスは、写真を撮り続けていれば他の人
が与えてくれる、というものではありません。写真展を開催するた
めには、相当のエネルギーを注ぎ込む必要があります。
ということでした。
下記で前号について詳しくご覧いただけます。
http://www.takahisanagai.jp/photoexhibition/psp/psp37.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【第六の心得:作品発表の場を、自分で創る 4】
──────────────────────────────
写真展開催の方法については、私のホームページで詳しくご説明し
ています。
http://www.takahisanagai.jp/photoexhibition/qanda.html
ここでは、そのエッセンスをQ&A形式で紹介させていただきます。
尚、ここでは既に作品がある程度溜まっていることを前提に書いて
います。 日頃どのような姿勢で写真を撮ればよいかは、今まで本
メルマガでご紹介してまいりましたので、割愛させていただきます。
●ギャラリーを選ぶ際の考慮点はありますか?
写真ギャラリーは大きく分けて2種類あります。
・自分でお金を払って写真展の期間中ギャラリーを借りるもの
ギャラリーに対してレンタル料金を払い、スケジュールが空いてい
ればいつでも開催できます。但し、作品の質は保障されません。
・ギャラリー審査に受かれば無料で写真展会場を貸してくれるもの
厳しい審査があります。が、審査を通れば、作品のレベルを保証さ
れますので、一般的に世の中では高く評価されます。写真雑誌の写
真展ガイドには常に掲載されますし、写真雑誌でページを割いて作
品を取り上げられることもあります。
また、審査に落ちた場合に改善点を指摘してくれるギャラリーもあ
ります。このフィードバックを得て、自分の作品をより高める事が
できます。
私自身は、一人で色々と悩みながら撮り貯めてきた作品を提出し、
落選し、再度撮り直してセレクションを行い、再提出する、という
プロセスを繰り返す事で、作品のレベルが上がっていったことを経
験しました。
私は、是非後者の写真展を行う事をお勧めします。苦労が多い分、
達成感は非常に大きいものです。 写真雑誌の写真展ガイドに掲載
されているギャラリーの多くは、審査を通過できれば写真展を開催
できますので、是非ご自分で確認してみて下さい。
尚、審査の時期はギャラリーによって異なります。半年又は3ヶ月
毎にまとめて審査を行うギャラリーが多いようです。詳しくはギャ
ラリーに確認してみましょう。
また、実際にはギャラリーにより以下のように違いがあります。
自分の優先順位を考慮し、応募するギャラリーを決定されるとよい
かと思います。
・自社製品の利用を義務付ける場合
メーカーが運営するギャラリーの多くは、原則的として自社製品を
使用した作品のみ受け付けます。 但し、建前としてこのように言
っているケースと、あくまで自社製品使用しか受付けないケースが
ありますので、個別にギャラリー側に確認されるとよいでしょう。
・来客数
立地条件等により、一日当たりの来場数は数十名から1000名ま
で分かれます。当然のことながら、来場者の多いギャラリーは応募
が殺到し審査は厳しくなります。
・ギャラリーの性格
ギャラリーによって展示する写真の性格が異なるケースもあります。
例えば、ドキュメンタリー中心、コマーシャル系写真中心、風景自
然写真中心、等です。 頻繁に写真ギャラリー巡りをしていると、
大体の傾向が掴めてきます。
・交通の便
写真展に来場されるお客さんの立場に立つと、交通の便は重要です。
多くの写真ギャラリーは銀座・新宿等、交通の便が極めてよい一等
地にありますが、ギャラリーによっては最寄駅から10分以上歩い
たり、初めて行く人にとっては分かりにくい場所にあったりするケ
ースもあります。これも複数のギャラリーを比較検討してみましょ
う。
・ギャラリーのオープン時間
アマチュア写真家の場合、月曜日から金曜日の平日は仕事でギャラ
リーに行けるのは週末に限られるケースが多いかと思いますが、ギ
ャラリーによっては日曜祝日は休館になるところもあります。
写真展開催が決定してからはギャラリー側と頻繁に打合せを行う必
要がありますし、写真展中に来ていただける人も限られてしまいま
すので、この点考慮が必要です。
また、オープンしている時間帯も確認する必要があります。 平日
の閉館時間が5時のケースと7時のケースを比較すると、前者は勤
務を終えてギャラリーに行くのは非常に難しいですが、後者なら何
とかなります。
次回は引続き写真展企画の実際についてご説明します。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【あなたの声を聞かせてください】
──────────────────────────────
あなたのご意見・ご質問・ご要望を聞かせてください。
mailto:news@takahisanagai.jp
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【『風の写真館コレクション』より】
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今回は、"Graceful Flowers"シリーズから「チューリップ-バラクラ
・イングリッシュ・ガーデン、1996」です。
長野県茅野市バラクラ・イングリッシュ・ガーデンで出会ったチュ
ーリップです。ファインダー上では、春の柔らかい陽射しの中で凛
々しく咲いていました。
http://www.takahisanagai.jp/collection/News/collection-033.html
『風の写真館コレクション』への登録は下記でどうぞ。
http://www.takahisanagai.jp/collection/collection.html
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【あとがき】
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先日、来日中のfourplayの演奏を聴く機会がありました。
Bob James、Nathan East、Larry Carlton、Harvey Masonという、
スーパースターが集まったグループです。
強烈な個性を持つメンバーのコラボレーションがうまくいかず、ス
ーパースターを集めたチームが必ずしも強くないということはスポ
ーツの世界でも散見されますが、ことfourplayについては全くあて
はまりません。
これだけの素晴らしい個性をもつミュージシャン同士が絶妙なコラ
ボレーションを見せて、1+1+1+1が4ではなく10にも20
にもなる素晴らしい演奏を聴かせてもらえました。
このようなトップクラスのメンバーが集まり、お互いに相乗効果を
生み出すグループが存在すること自体、奇跡なのかもしれません。
私も、それぞれの写真同士がお互いに高めあうような、そんな写真
展を開ければと思います。
では、また。
永井孝尚
★39
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第039号:2005/05/15
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■■■目次■■■
【前号のポイント】
【第六の心得:作品発表の場を、自分で創る 5】
【あなたの声を聞かせてください】
【『風の写真館コレクション』より】
【あとがき】
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【前号のポイント】
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●写真展開催の方法については、私の下記ホームページで詳しく説
明していますが、ここではエッセンスを紹介します。
http://www.takahisanagai.jp/photoexhibition/qanda.html
●ギャラリーを選ぶ際の考慮点は何でしょうか?
●写真ギャラリーは2種類あります。
●一つは自分でお金を払って写真展の期間中ギャラリーを借りるも
の。ギャラリーにレンタル料金を払い空いていればいつでも開催で
きます。作品の質は保障されません。
●もう一つはギャラリー審査に受かれば無料で写真展会場を貸して
くれるもの。厳しい審査がありますが、審査通貨後はレベルを保証
され、一般的に世の中では高く評価されます。審査に落ちた場合に
改善点を指摘してくれるギャラリーもあり、このフィードバックを
得て、自分の作品をより高める事ができます。
●是非後者の写真展を行う事をお勧めします。苦労が多い分、達成
感は非常に大きいものです。
●また、ギャラリーにより以下のように違いがあります。ご自分の
優先順位に従って決定してください。
・自社製品の利用を義務付けるか?
但し、建前としてこのように言っているケースと、本当に自社製品
使用しか受付けないケースがあります。個別に確認されるとよいで
しょう。
・来客数
立地条件等により、大きな違いがありますし、来場者の多いギャラ
リーは応募が殺到し審査は厳しくなります。
・ギャラリーの性格
例えば、ドキュメンタリー中心、コマーシャル系写真中心、風景自
然写真中心、等の違いがあります。写真ギャラリー巡りで傾向を掴
みましょう。
・交通の便
多くの写真ギャラリーは銀座・新宿等、交通の便が極めてよい一等
地にありますが、ギャラリーによっては初めて行く人にとっては分
かりにくい場所にあったりします。
・ギャラリーのオープン時間
ギャラリーによっては日曜祝日は休館になるところもあります。ギ
ャラリー側と写真展の打合せを行ったり、来場者のことも考慮する
必要があります。
ということでした。
下記で前号について詳しくご覧いただけます。
http://www.takahisanagai.jp/photoexhibition/psp/psp38.html
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【第六の心得:作品発表の場を、自分で創る 5】
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引続き、写真展開催の方法です。
●何点位の作品を用意する必要がありますか?
通常の写真展では、作品数は40−50点位の場合が多いようです。
作品数を決定するにあたっては、以下を参考にしてください。
・ギャラリーの壁面長の合計
例えば、東京・数寄屋橋にある富士フォトサロンでは、サロン1か
ら3の3種類があり壁面長は26mから47mあります。また、東
京・新宿東口にあるコニカミノルタプラザでは、ギャラリーAから
Cの3種類があり壁面長は29.8mから45.0mになります。
各ギャラリーで用意しているギャラリー使用申込書に壁面長が明記
されているので、確認しましょう。
また、ギャラリーによっては、移動式展示パネル等を使用して展示
スペースを増やせる場合もあります。
・作品のフォーマット
写真展企画の際に、予め作品を展示するフォーマットを考えておく
必要があります。
例えば、大四切プリント(35cmx28cm)を木製フレームに
マット加工して展示する場合を考えてみましょう。
35mmフィルムをノートリミング・横位置でプリントする場合、
作品がプリントされる部分は、余白(リバーサルの場合は余黒)の
部分も考慮すると、33cm×22cmになります。
このプリントを木製フレームに収める場合、マット加工で上下左右
10cmづつの余裕を取るとして見積もると52cm×42cmに
なります。これに合うサイズのフレームは大衣(だいころ)という
形式で52cm×40cmになります。
このフォーマットで作品を並べることを想定し、ギャラリーの壁面
長を考慮して作品数を決定します。例えば、上記フォーマットで作
品は全て横位置、フレームの間隔10cmで、壁面長30mのギャ
ラリーに展示する場合、作品数は約48点になります。
また、作者のメッセージや略歴を説明したパネル等も必要ですので、
これらの長さも予め使用する壁面長を計算する際に考慮しておく必
要があります。
実際に写真展のギャラリーで、展示方法・展示点数・作品のプリン
トの大きさとフレームの大きさ・作品以外の説明資料が占める大き
さ・等をチェックしてみると、参考になるかと思います。
・写真展審査で必要な作品点数
審査のことだけを考えると、提出する作品数は必ずしも展示点数に
満たなくても構いません。例えば、各ギャラリーの展示申込書によ
ると、提出作品数は、富士フォトサロン15点以上、コニカプラザ
30点、コダック フォト サロン20−30点となっています。
しかしながら、セレクションの過程で作品数は少なくなっていきま
すし、審査を通過してから写真展開催までの期間は限られており、
写真展開催決定後は多くの時間を写真展準備に割く必要があります
ので、審査に受かった後は新規に作品は撮れないと考えておいた方
がよいでしょう。
従って、審査の時点で出来上がっている作品数は、展示点数の2−
3割増(例えば40点展示する場合は50点程度)を目安にすると
よいのではないかと思います。
次回も、引続き写真展企画の実際についてご説明します。
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【あなたの声を聞かせてください】
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あなたのご意見・ご質問・ご要望を聞かせてください。
mailto:news@takahisanagai.jp
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【『風の写真館コレクション』より】
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今回は、"Graceful Flowers"シリーズから「白い花 - 柏木牧場、
1995」です。
初夏の日、柏木牧場で見つけた白い花です。白い花の周りが青い光
でにじんでいたり、茎が幻想的に表現できたのは、ソフトレンズの
効果です
http://www.takahisanagai.jp/collection/News/collection-034.html
『風の写真館コレクション』への登録は下記でどうぞ。
http://www.takahisanagai.jp/collection/collection.html
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【あとがき】
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ゴールデンウィークが終わって早くも1週間。
皆様はどんな休みを過ごされましたか?
引越しの後片付けもあった関係で、うちは自宅で過ごしました。
旅行先で新しい出会いや発見を楽しむ休みもよいですが、自宅で
ゆったりと過ごす休みもよいものですね。
ただ、ここ1−2年間というもの旅行に行っていないので、そろ
そろまた出かけたいなぁ、と思っています。
では、また。
永井孝尚
★40
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第040号:2005/05/29
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■■■目次■■■
【前号のポイント】
【第六の心得:作品発表の場を、自分で創る 6】
【あなたの声を聞かせてください】
【『風の写真館コレクション』より】
【あとがき】
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【前号のポイント】
──────────────────────────────
●何点位の作品を用意する必要がありますか?
・通常の写真展では作品数は40−50点位です。
・以下を作品数を決定する際の参考にしてください。
・ギャラリーの壁面長の合計
各ギャラリーで用意しているギャラリー使用申込書に壁面長が明記
されているので、確認しましょう。
・作品のフォーマット
写真展企画の際に、予め作品を展示するフォーマットを考えておく
必要があります。作品のプリントサイズから額縁のサイズを決め、
額縁サイズに各作品の間隔を考慮して、何点の作品が入るかを決め
ます。作者のメッセージや略歴を説明したパネル等の幅も考慮して
おきます。
・写真展審査で必要な作品点数
審査の提出作品数は、必ずしも展示点数分は必要ありません。
しかし、セレクションの過程で作品数は減りますし、審査通過後か
ら写真展開催までの期間は限られていますし、写真展準備の諸々の
作業を考えると、他に仕事を持っている方は、審査通過後は新規に
作品を撮る時間がないと考えるべきです。
従って、審査の時点で出来上がっている作品数は、展示点数の2−
3割増(例えば40点展示する場合は50点程度)を目安にすると
よいのではないかと思います。
ということでした。
下記で前号について詳しくご覧いただけます。
http://www.takahisanagai.jp/photoexhibition/psp/psp39.html
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【第六の心得:作品発表の場を、自分で創る 6】
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引続き、写真展開催の方法です。
●写真展の費用は全部でどの位かかりますか?
ギャラリーを無償で借りても、一般的には数十万円程かかります。
実際にかかる費用は下記の通りです。
・作品のプリント料金
カラープリントの場合は単価が高く、作品点数が増える程費用がか
かります。
尚、ラボ等に頼む際に「写真展を行うためにプリントをお願いした
い」と言うと、通常よりも安くプリントできる場合があります。
自分で暗室でプリントしたり、カラープリンターで印刷する場合は
かなりコストがセーブできます。
但し、使用しているカラープリンターが写真展展示に必要な印刷品
質を持っているかどうかは、予め確認する必要があります。メーカ
ー系のギャラリーによっては、自社のカラープリンターで印刷する
場合に優遇してくれる可能性もあります。
・作品の額装料金(加工料金含む)
額装は作品の印象を大きく左右します。出来ればお金をかけたいと
ころですが、これも作品数分の費用が発生しますので、単価を抑え
ると大きく費用を削減できます。ギャラリーによってはフレームを
貸し出してくれる場合もあります。
まめに画材店等を回ってみると、フレームを特売している場合があ
りますので、このような機会にまとめて購入しておくという手もあ
ります。
私の場合、最初の写真展の時に、ある画材店で特売していた木製フ
レーム40セットを合計10万円で購入しました。既に4回の写真
展で使用しましたので、最終的にはかなり安く上がりました。ただ、
かなり大きな保管場所が必要になるのが難点で、引越しのたびに収
納場所に悩んでいます。
マット加工は自分で行う方法もありますが、自信がある方以外は画
材店等の専門業者にお願いするのが無難です。自分でやってみると
なかなかまっすぐにカットできず、失敗した場合はマット自体が無
駄になりますので、最終的に高く付いてしまいます。
・作品キャプション制作費用
写真展背景と作者略歴を説明したパネル、及びそれぞれの作品の下
に付ける説明です。ギャラリーによっては無料で制作してくれます。
有償の場合、結構お金がかかるので自分で制作した方がよいでしょ
う。パソコンとプリンターで出力し、のり付きの発砲スチロール製
パネル(貼れパネ)に貼るだけでも、いい仕上がりになります。
・ギャラリーへの経費支払い分
無償で展示させてくれるギャラリーでも、別途に光熱費等の負担が
必要な場合があります。予め確認するとよいと思います。
もし銀座・渋谷・新宿等の一等地で、壁面30mのギャラリーを1
−2週間借りた場合は、数十万円から100万円程の料金がかかり
ますので、それを考えるとこの程度の負担は仕方ないと言えるでし
ょう。
・写真展案内状の印刷代
ギャラリー側がポストカード作成の経費を負担して作成してくれる
場合、ギャラリー側が作成し経費を出展者が負担する場合、出展者
が自分の経費負担により自分で作成する場合があります。
自分で作成する場合、写真展案内状は一般のポストカードよりも複
雑なデザインになりますので、印刷会社が版下制作に対応できるか
どうかをサンプルを提出して予め確認しておきましょう。可能であ
れば色校正も出来るとベストです。
通常、印刷部数は2000−3000部必要です。
・写真展案内状の送付費用
知り合いの人達に案内状を送付するための費用です。
ポストカードをそのまま送付しても結構ですが、ポストカードを未
使用状態で渡したかったり、オープニングパーティの案内や挨拶文
を同封する場合は、封筒に入れて送ることになりますので、この分
の費用も考えておきましょう。
・オープニング・パーティ
写真展開催初日等に写真展会場又は近くのレストラン等で行うパー
ティです。お世話になった方々や友人達に写真展会場に来ていただ
き、簡単な軽食を取ってリラックスしていただきながら自分の作品
を見ていただく出入り自由のパーティで、実際にやってみると大変
楽しいものです。
ギャラリーによっては、飲食物でギャラリーが汚れるのを嫌い、オ
ープニングパーティ不可としているところもあります。事前にギャ
ラリー側に相談することをお勧めします。
尚、全て自分で負担するのではなく、参加者それぞれから参加費用
を負担していただく方法もあるでしょう。
・写真展期間中の諸経費
作品を宅急便で送る場合は配送手数料、芳名帳、コメントノート、
テープ、画鋲、期間中に会場にスタンバイする際の食費、オープニ
ングパーティや写真展期間中に撮影する写真代、等、結構色々とか
かります。余裕を見ておくとよいでしょう。
こうして改めて見ると、写真展って本当にお金がかかりますね。
次回も、引続き写真展企画の実際についてご説明します。
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【あなたの声を聞かせてください】
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あなたのご意見・ご質問・ご要望を聞かせてください。
mailto:news@takahisanagai.jp
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【『風の写真館コレクション』より】
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今回は、Tokyo Bay Areaシリーズから、「横浜博を1週間後に控えた
大観覧車 - 横浜MM21、1989」です。
まだ工事中の横浜みなとみらい21地区で撮影しました。ちょうど
大観覧車がまばゆい白さにライトアップされていました。
http://www.takahisanagai.jp/collection/News/collection-035.html
『風の写真館コレクション』への登録は下記でどうぞ。
http://www.takahisanagai.jp/collection/collection.html
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【あとがき】
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国立近代美術館で行われていたゴッホ展に行きました。
印刷物やインターネットで予め作品を見ていましたが、やはり本物
を間近で見ると、その存在感に圧倒されます。まさにこれがアート
が持つ力ですね。
年代順に展示された作品に接して、若い頃に様々な技術や手法を試
行錯誤して貪欲に身に付けていく様子や、晩年それらを完全に自分
の中に取り入れて昇華し、力強い作品を描いている様子がよく分か
りました。
ゴッホは、貧窮生活に加えて入院もしたりして、最後は自ら命を絶
ち早世しました。 しかしながらその真摯で非常に密度の濃い人生
に接して、改めて刺激を与えられました。
ちなみにこのゴッホ展、最終日には2時間待ちだったとか。
会場の人達も真剣だったように感じました。
では、また。
永井孝尚