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引用1
 
プリンタの「写真画質」を使いこなす
 
http://www.itmedia.co.jp/news/0210/15/nj00_digital.html 
プリンタの「写真画質」を使いこなす 第1回
 
なぜ“写真”がきれいに出力できないのか
プリンタの写真画質の性能は年々向上している。ところが実際に印刷して見ると、思ったような表現ができなくて悩むケースが少なくない。写真画質プリンタの使いこなしを紹介するこの連載、1回目はまず、何が問題なのかを考えてみよう
 
 写真画質のインクジェットプリンタが容易に入手できるようになったが、その性能を使いこなすのが難しいと感じている人も少なくないようだ。数カ月前に某社の最高機種を購入したカメラマニアの友人が「うちで印刷しても、こんなにきれいな色にならない」と、わが家でポートフォリオを開きながら話していた。パソコンが素人なわけではない。れっきとしたIT技術者なのだが、色合わせや画質調整の話になると、どうしていいかわからないという。
 
 詳しく話を聞いてみると、フォトレタッチソフトでデジタル写真を開き、ディスプレイ上で確認しながら好みの色へと合わせ、それを細かく色設定を調整しながら出力している。ところが、うまく合わせたつもりでも、別の部分で色合いが破綻していたり、思った通りの陰影が再現されないとか。
 
 このケースの一番大きな問題は、プリンタドライバの作る色も、デジタルカメラの作る色も、最初から信用していないところにあると思う。しかし、近年の製品はいずれも時間をかけてチューニングされており、なかなか自分で調整を行ってもうまくいかないケースが多い。
 
 
デジタル写真出力、2つのアプローチ
 
 “きれいに写真を出力する”といっても、実際にはさまざまな視点がある。普通に写真を1枚ずつ出力するだけでなく、写真集のようにきれいにレイアウトして出力したいという視点。これは良質のアルバムソフトを利用すれば可能だ。しかし、ここで扱おうと考えているのは、写真のような出力を行える高画質プリンタで、“写真のような仕上がり”を得ること。
 
 その際のアプローチは大きく分けて2つある。
 
 まずデジタル写真のデータ(主にデジタルカメラのデータ)を、DPEにプリント依頼を行うがごとく、簡単・手軽に出力し、その結果が“きれい”と感じられれば良いというアプローチだ。このアプローチで出力したものに対して、元の被写体の色が少し違う、あるいは画面上の画像ビューアで開いた色と違う、といった意見を言うのは少々野暮だ。
 
 もともと写真に“本物の色”などあり得ない。銀塩写真の場合でも、フィルムと印画紙が異なれば得られる写真の色は違うものになるし、そもそも被写体の色と同じではない。(銀塩でも)鮮やかな発色のフィルムと印画紙が一般に好まれる傾向にあり、DPE的アプローチでは、元々の場面の雰囲気を壊さない程度にきれいな写真へと演出された出力の方が好まれる場合が多い。
 
 とは言うものの、データとは異なる色で出てくるという悩みはよく話に聞く。これにはデジタル写真固有の事情もある。一般的なネガフィルムを眺めてみても、フィルムに収められた色が直接見えるわけではないが、デジタル写真だとディスプレイ上で見えてしまうからだ。おかげで、その間のギャップで悩むわけだ。ただ、本物の色などない(翻って言えばもともとのデータが嘘色)のだから、好ましい色で出力されればそれでいいと考える方が合理的だと思う。
 
 もちろん、すべての色を合わせたいという要求もある。例えば、作業工程の中で色が変化しては困る出版業界のプロフェッショナル向けの画像処理システムなどがそうだ。これに用いられるのがカラーマッチングシステム(CMS)である。
 
 このCMSの基本的な仕組みは、CIE(国際照明委員会)が規定したデバイスに依存しないLab色空間を通して、各種デバイス(ディスプレイモニタ、プリンタ、イメージスキャナ、タイプセッタなど)の特性差を吸収しようというものだ。デバイスに依存しないひとつの色空間(CIE Lab)を基礎として色情報をやりとりするため、作業工程を経るなかで色が変化してしまうことを防げる。
 
 カラーマッチングに関しての話は少々難しい解説も必要となるため、次回以降に繰り延べることにするが、いくつかの理由で個人ユーザー向けにはカラーマッチングの仕組みはあまり紹介されてこなかった。特に色をデジタル化する場合の概念や、デバイスの種類ごと機種ごとの特性の違い色空間の違いによる影響やCMSを利用できるソフトウェアの少なさなど、一般ユーザーが扱うには概念的にも技術的にも敷居が高いと考えられてきたことが大きい。
 
 しかし本来のCMSが作業工程の中で、色差を小さくするために考え出された背景とは別に、作品としての写真を思い通りに出力したいという欲求を持つユーザーもいる。先に“もともとが嘘色なのだから、好ましい色にアレンジして出力する方がいい”という趣旨のことを書いたが、出力する色彩に撮影者の意図が含まれるのであれば、その意図に対して可能な限り忠実に印刷されるべきだろう。
 
 例えば、寒々しい雰囲気の写真を撮影したはずなのに、明るく健康的な色になってしまっては、撮影意図も季節感も吹っ飛んでしまう。フォトレタッチでトーンカーブを固めにしたハズなのに、印刷してみると全く違うトーンで印刷されることもある。
 
 デジタル写真を趣味として楽しんでいく上で、(好ましい色への補正と忠実な色再現の)どちらが正しいかという議論は正しくない。一般コンシューマー向けだから、プロ向けの機能は不要なのではなく、忠実な色再現を求めたい場合もあり、そこにプロ向けの既存技術を応用できるならば、それを積極的に使ってソリューションを提供すべきだろう。技術はニーズを満たすために存在するのだから。
 
 結局、どちらが重要ではなく両方が重要なのだ。
 
 
DPE感覚で使うなら付属ソフトを使うのが一番
 
 さて、もしDPE感覚でデジタルカメラの画像を、手軽かつきれいな色で出力したいなら、各社が添付している印刷ソフトを使うのがいい。エプソンならば「PhotoQuicker」、キヤノンならば「Easy-PhotoPrint」が製品に添付されており、最新版を各社Webページからダウンロードできる。
 
 これらのツールは、それぞれのプリンタ機能に特化しており、基本的に設定を変更することなく、そのまま印刷したい写真を指定して出力すれば、プリンタの性能を活かした色合いを得ることができる。
 
 さらに使用しているデジタルカメラがPIMやPIM II、ExifPrint(Exif 2.2)に対応している場合は、ディスプレイ上では確認できない美しいビーチの色や抜けるような空、鮮やかな新緑も、くすみなどなく再現してくれるはずだ。これは各社の専用DPEソフトが、デジタルカメラが記録しているJPEGデータに含まれるディスプレイ上では確認できない色もプリンタの能力を活かす形で出力しているためだ。
 
 この色を一般的なフォトレタッチソフトで活かす方法がないわけではないが、手軽さを求めるのであれば純正を使う方がいい。例外的にはPIM対応のアプリケーションでPIM対応画像を出力する場合は、純正のPhotoQuickerで印刷した時と同様の効果を得ることができる。
 
 もし別に使いやすい写真印刷用のアプリケーションを持っている場合は、各社のドライバが持っている自動調整機能を積極的に使うといい。エプソンならば「オートフォトファイン!」、キヤノンならば「オートフォトパーフェクト」、ヒューレット・パッカードなら「hp Digital Photography」という機能がある。このうちオートフォトファインにはさまざまなオプションがあるが、基本的にはデフォルト設定のままで出力すればいい。
 
 ただしヒューレット・パッカードのhp Digital Photographyは、デフォルトでは補正が強すぎる場合がある(しかも他社のドライバは写真の自動調整機能は自分でオンにするのだが、hp Digital Photographyは写真用紙を選択すると、自動的にオンになってしまう)。好ましい色を自動的に作って欲しいモードとはいえ、日陰が日向のようになる極端な補正が行われるため、手動で効果のオプションを調整することをオススメしたい。
 
 hp Digital Photographyのオプション設定画面を開き、各自動調整項目の[自動]チェックを外し、効果の強さを[小]もしくはその一つ右側のノッチに調整しておけばいい。なお、hp Digital PhotographyはDeskJet 5550(今年夏)以降に発売された6色インク機のドライバにのみ搭載されている。
 
 例外的な場合を除き、一番簡単な方法が一番きれいな写真への近道だ。それもそのはず。各社とも一番簡単にきれいな写真が印刷されるように気を払ってデフォルト設定や色作り、自動補正プログラムを開発している。写真用紙を選択した時に設定されるデフォルト値は、各メーカーが推奨するものと捕らえていいだろう。
 
 もちろん、色に関しては出力結果を鑑賞する環境によっても変化するため、一概に言えない部分はある。しかしプリンタのドライバを開発している現場では、好ましい色作りを目指して、手作りで細かい色味の調整を行っている。まずはそれを信用して、なるべくシンプルに出力するところから始めるのが良い。
 
 
好みの色味へ調整するには
 
 デジタルカメラがキャプチャしたデータを、できる限りシンプルに出力するのが良いと述べたが、それだけでは意図した写真にはならない。好みの色へとディスプレイ上で調整した写真を、そのままプリンタに出力できないのだろうか?
 
 デジタル写真の出力に慣れるに従い、そうした考えが出てくるようなら、そこで初めてフォトレタッチとカラーマッチングについて考えるといい。次週は好みの色で写真を出力するための基礎知識と具体的な方法について触れることにしよう。
 
 
http://www.itmedia.co.jp/news/0210/22/nj00_digital02.html 
プリンタの「写真画質」を使いこなす 第2回
 
デジタル画像の色とプリンタの関係(1/2)
普通にWindowsを使っている範囲であれば、プリンタで出力してもなんとなく色が合っているはず。それがデジタル画像の取り込み・出力ではなぜ色が合わなくなってくるのか。今回はその仕組みをもう少し詳しく説明しよう
 
 DTP関連の知識がある人ならば、色に関する情報を持っている人も多いが、普通にWindowsでデジタル画像を扱っている範囲では、色に関してあまり意識することがない。このため、画面で見たようにプリンタから出力されないけれども、何が原因なのかわからないという悩みを持つユーザーも出てくる。
 
 今回はパソコンで扱われるデジタル画像の色がどのように表現され、プリンタとどのような関係を持っているのかを解説することにしよう。
 
 
普段はなぜ色を意識しなくて良いのか?
 
 先週、デジタルカメラで撮影した写真を、最も手軽かつきれいに出力できるのは、各社が添付しているDPEソフト(PhotoQuickerやEasy-PhotoPrint)だと書いた。これらDPEソフトは、基本的にどんなコンシューマー向けデジタルカメラでも同じように機能してくれる。これはWindowsで扱う色の表現方法が決まっているからだ。
 
 WindowsはWindows 95でsRGBという色表現に関する規格に準拠する形で画像データを扱うというガイドラインが定められた。sRGBはStandard RGBの略で、赤、緑、青という光の三原色で色を表現する。RGBはデバイス依存型色空間だが、sRGBでは規格としてRGBそれぞれの色度や特性を決めているため、これに対応したアプリケーションやデジタルカメラ、スキャナ、プリンタなどの間で、色に関する互換性を取ることができる。
 
 と、ここでいきなり“デバイス依存型色空間”という言葉が出てきた。デバイス依存とはどういう事なのか?
 
 RGBで色を表現するデバイス(機器)は、CRTやLCDなどRGBがそれぞれ発光する強さを制御して色合いを表現している。RGBデータは、RGBそれぞれの強さを数値化したものだ。ここでRGBがそれぞれ255、0、0(各色8ビット)のRGBデータがあったとすると、表示される色は“真っ赤”となるハズだ。
 
 
 
RGB色空間はデバイスの能力次第で頂点の位置が変化するため、共通のデータとならない。そこでsRGBは平均的CRTの色域を割り当てているが、異なるRGBデバイス同士がすべてこの色空間とマッチするわけではない
 
 もちろん、結果もその通りになるが、CRTは蛍光体の、LCDはカラーフィルタの赤が出るだけで、デバイスごとに少しずつ異なる赤になってしまう。これはGやBにも言えるため、同じRGBデータを表示しているはずなのに、デバイスごとに表示される色が異なる結果となる。
 
 同じことはCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)で表現する印刷デバイスにも言え、インクの特性やインクが用紙に乗った時の具合によって色が変化してしまう。CMYKもまた、デバイス依存型色空間の一種だ。
 
 sRGBはこうした色の違いを吸収するため、あらかじめ特性を決めてある。またsRGBは平均的なCRTの特性に合わせて規格が決められているため、パソコン上でアプリケーションが色の違いを意識せず、そのまま出力すれば(厳密に一致するわけではないが)、おおむねおかしな色で表示されることがない、という長所もある。
 
 このため、デジタルカメラは一部機種を除いてsRGBと互換性のあるJPEGデータを生成している。どんなソフトを使って表示しても、「それなり」に正しい色で閲覧できるからだ。またマイクロソフトはドライバ品質に関するテストと承認を行うWHQL(Windows Hardware Quality Lab.)という組織で作ったルールの中に、Windows対応プリンタがsRGBを正しい色で表現できなければならないというルールがある(実際にはデータと出力結果で色度差がある水準を超えないことが決められている)。
 
 つまりプリンタ側も受け付けるデータがsRGBフォーマットであることを前提に、色作りをしているのである。従ってsRGBデータをそのまま印刷すれば、(細かな色の違いを許容すれば)何ら困ることなく、本来意図している印象の色で写真を印刷できる“ハズ”なのだ。普段、あまり意識しなくとも色がなんとなく合うのはsRGBのおかげと言えるだろう。sRGB中心で考えるならば、複雑なプロ向けのカラーマッチングシステムなど意識する必要はない。
 
 
 
 
sRGBの良いところは特別な変換処理を行わなくとも、それなりに色が合ってくれること。ただ、厳密にどこまで色が合うかはデバイス次第なので、組み合わせによっては色があまり合わないと感じる可能性もある
 
 
合うはずなのに違うのはなぜ?
 
 sRGBなら“なんとなく”色が合うはずなのに、うまく色が合わないというケースももちろんある。その大半はディスプレイの色やトーンカーブがsRGBと、かなり異なる特性になっている場合だ。
 
 
 
 
 
デジタル画像の色とプリンタの関係(2/2)
 
 先週、デジタルカメラの画像を印刷するなら、そのまま何も考えずに添付DPEソフトで印刷を……と書いた理由の1つは、間にディスプレイ表示と色合わせが入ってしまうと、望んだ色味で出力されないという話になってしまうからだ。
 
 しかし、スキャナで入力した画像データの微調整や、デジタルカメラ画像のレタッチなどを自分で行いたいならば、調整を行う時の目安としてディスプレイ表示の色合わせも無視できない。デジタルカメラやプリンタの画質が向上したことで、なんとなくディスプレイの色がsRGBに近ければ問題なしとはいかなくなってきたとも言えるのかも知れない。
 
 この問題を回避する1つの方法は、sRGB対応の(できればデジタル接続の)ディスプレイを使うことだ。sRGB対応ディスプレイのカラーモードをsRGBにセットすると、ディスプレイ本来の色を補正し、sRGBに近づける補正を内部的に行ってくれる。ちなみにHTML標準を検討する組織W3Cでも、Webページの標準色空間としてsRGBが指定されているため、Web上のコンテンツを正しい色で見るためにもsRGBモードは便利だ。
 
 サードパーティ製のディスプレイを利用しているならば、sRGBモードの有無を確認してみるといい。ただし、sRGBモードをはじめとするカラー設定は、パソコンに標準添付されているディスプレイにはほとんど装備されていない。sRGBのためだけにディスプレイを買い換えるというのも、ナンセンスな話だ。
 
 ディスプレイで色を微調整できる機種を使っている場合や、グラフィックカード側に色調整機能があるものも存在はするが、測定機器を使わずに色を正確に合わせるのは至難の業。たとえ1つの写真について色合わせを行うことができたとしても、すべての写真で色合わせを行うことは非常に難しい。
 
 では全く無理なのか? と言うと、カラーマッチングシステム(CMS)を用いる手法がある。CMSが万能でこれを使えば色合わせが完璧、とはならないのだが、それでも色の違いに関して悩んでいるならば、トライしてみる価値はあるだろう。
 
 本来、カラーマッチングシステムはDTPなど何工程にもわたって色を扱うワークフローの中で、工程間の色差をなるべく小さくするために使われている。その仕組みは、この先の連載で詳しく説明する予定だが、簡単に言えばすべての色を表現できるデバイスに依存しない色空間(CIE Lab)を中心に、CIE Labとの色の相関関係を記したファイル(カラープロファイル)を用いて、デバイス間の色差を小さくするというもの。
 
 
異なる特性のデバイス同士で色を合わせるためには、デバイスに依存しないすべての色を表現できる色空間が必要となる。明るさと色座標で色を表現するCIELab(CIEは国際的な標準化団体)は、すべての可視光線をカバーする絶対的な色を決めた規格
 
 例えばsRGBの写真データをディスプレイに表示するとき、そのままディスプレイに出力を行わず、いったんsRGBからCIE Labへと変換し、さらにCIE Labからディスプレイのカラープロファイルに合わせたRGBデータへと変換してから出力する。画像データはsRGBのままで、表示の時だけディスプレイの特性に合わせて色を変換表示してくれる。
 
 
 
 
CMSはカラープロファイル(ICCプロファイル)を用い、CIE Labを経由して色合わせを行う。ICCプロファイルのフォーマットは規格化されており、さまざまな機器間で色を統一できる
 
 ディスプレイのカラープロファイルはディスプレイが同梱されたPCやノートPCの場合、あらかじめ設定されている(Windowsの画面のプロパティを開き、[設定] タブから [詳細設定] をクリック。[色の管理] タブ内の [現在このデバイスに関連付けられているカラープロファイル] に設定されている項目があれば、プロファイルが指定されていることになる)。
 
 また、サードパーティ製のディスプレイの多くはCD-ROMやフロッピーディスクでカラープロファイルが添付されているので、説明書を参照してそれらをインストールするといい。カラープロファイルを保存したメディアを見つけることができないようならば、ディスプレイメーカーのWebサイトに行けばダウンロードできることが多い。
 
 それでもカラープロファイルを見つけることができない場合は、カラープロファイル作成のユーティリティを使って作成するしかない。カラープロファイルの作成については、追々紹介していきたいと思う。なお、日本語で利用できるカラープロファイル作成ユーティリティはアドビシステムズの「Photoshop」「Photoshop Elements」に添付されているものが、最も入手しやすい。
 
 ただし、CMSを利用するためにはCMSに対応したアプリケーションが必要だ。CMS対応アプリケーションはプロ向けの製品が多いが、Photoshop Elementsならば入手しやすいだろう。ただしPhotoshop ElementsでCMSを利用する場合には、いくつかの注意点があり、それを守らなければディスプレイ上の色は正しく表示されない。
 
 また、きちんと調整されたディスプレイで確認したsRGBデータをプリンタに入力しているはずなのに、印刷結果が思ったような色ではないということも、残念ながらあるのが実情だ。エプソン製プリンタのユーザーなら、自動調整がsRGB対応なのに、なぜプリンタ設定には別途sRGBに合わせるがあるのか? という疑問も出てくるだろう。
 
 次回は実際にPhotoshop Elementsを使った出力方法を紹介するとともに、プリンタドライバの設定について話を進めていくことにしよう。
 
 
http://www.itmedia.co.jp/news/0210/28/nj00_digital03.html 
プリンタの「写真画質」を使いこなす 第3回
デジカメ画像の印刷――ディスプレイで色合わせするためのノウハウ(1/4)
 
今回はディスプレイ表示を基準にして色味を合わせつつ、プリンタに出力するための基本ノウハウを紹介しよう。使うソフトは「Adobe Photoshop Elements 2.0」。各社のプリンタドライバに合わせるコツについても説明する
 
 先週予告した通り、今週は「Adobe Photoshop Elements 2.0」でデジタルカメラ画像をディスプレイを基準にして色味を合わせつつ、プリンタに出力するためのノウハウを紹介することにしよう。ただし、今回紹介する方法は最もシンプルな手法であるため、以下の点に注意してほしい。
 
 
 
sRGB外の色域データは失われる
色味が合う度合いはプリンタの忠実度によって異なる
あらかじめディスプレイのキャリブレーションを行い、ガンマ値や色温度を調整するユーティリティが実行されている必要がある
 
 
 sRGB外の色域データが失われる点については、これまでにも実際のデジタルカメラ画像の中には、それほど多くの色域外データがあるわけではないと述べていたが、実際に鮮やかな海、空、森などを表現するためには、sRGB外の色も必要になってくる。
 
 しかしエプソン製、キヤノン製のプリンタには、sRGB画像を入力すると、上記のようなシーンでsRGB外の色で印刷されるようなチューニングが施されている(例:EPSON Natural Photo Color)。そこで今回は、ディスプレイでは確認できないsRGB外の色域を使わないことにした。
 
 またコンシューマー向けカラープリンタは、デフォルトでsRGBデータが入力されることを期待したチューニングになっているが、どれだけ忠実にsRGBを再現するかはプリンタによって異なる。例えばエプソン製ドライバには、デフォルトの [ドライバによる色調整] 以外にsRGBモードが設定されている。キヤノン製ドライバもsRGBを入力しても自動調整にするだけでは、トーンカーブがうまく合わない。これについてはプリンタメーカーごとに、合わせるためのコツがあるので、記事の最後で紹介することにしよう。
 
 最後にディスプレイのキャリブレーションだが、今回、作業の基本となるPhotoshop Elementsには「Adobe Gamma」というキャリブレートを行うためのユーティリティが付属しているので、それを利用するといいだろう。また2Dの色再現を重視したディスプレイカードの中には、キャリブレーションを行うユーティリティがあらかじめバンドルされている場合がある(例 : Matrox Perhelia)。
 
 
Photoshop Elementsのカラーモード
 
 Photoshop Elementsは1.0、2.0、双方ともに [編集] − [カラー設定...] から設定できる3つのカラーモードがある。1つは [カラーマネージメントを行わない] 、もう1つは [限定的なカラーマネジメント(Webに最適)] 、最後に [完全なカラーマネジメント(印刷に最適)] だ。それぞれのモードの違いをかいつまんで説明しよう。
 
  [カラーマネージメントを行わない] に設定すると、Photoshop Elementsは読み込んだ画像をそのまま画面上に出力する。このため、ディスプレイカードの信号が正しい状態であれば、画像を見ているディスプレイの色特性がそのまま画像の色特性となる。また印刷時にも色の変換は行われない。
 
 ディスプレイはおおむねsRGBに近い特性を持っているため、画面上で色味を見てそのまま出力すれば色が合うことになるが、先週述べたように“なんとなく”合うだけなので、ディスプレイの種類(CRTかLCDか)やメーカー、調整具合によってズレが生じる。
 
 Photoshop Elementsには、ディスプレイの色特性を持つ画像を色変換し、sRGBで出力する機能もあるが、将来的にディスプレイを買い換えるなどした場合に、せっかく調整した画像が新しいディスプレイで望むような色で見えない可能性がある。
 
  [印刷に最適] に設定すると、編集データの色空間はデフォルトで(ヘルプファイルには書かれていないが)Adobe RGBに設定される。画面表示はCMS(Color Matching Sysytem)エンジンを通してディスプレイの特性に変換され、正しい色味で表示される。また印刷時には同じくCMSエンジンを通し、指定した色特性(もちろんsRGBも含む)のデータへと変換可能だ。しかも、Adobe RGBは一般的なCMYKで表現できる色域をおおむねカバーする広さがあるため、印刷をきれいに行うには最適なモードというわけだ。
 
 しかし、ここには重要な落とし穴が一点だけある。
 
 このモードではICCプロファイルが埋め込まれた画像を読み込む場合、そのICCプロファイルに準ずる形で表示や印刷のプロセスが実行される(Adobe RGBに自動的に変換されることもなく、色も合う)が、プロファイルなしの画像を読み込むと確認を行わないままAdobe RGBの画像として扱ってしまう。ところがデジタルカメラの画像には一部プロ向けの機種を除き、ICCプロファイルなど添付されていない。多くのデジタルカメラはプロファイルなしsRGB画像なので、そのまま [印刷に最適] に設定した状態で読み込むと、本来の色よりもずっと派手な、正しくない色になってしまう。
 
  [印刷に最適] モードを活かす手法もあるが、基礎編では [Webに最適] モードで作業を進めることにしたい。
 
  [Webに最適化] に設定すると、作業用の色空間はsRGBに設定され、表示時にはディスプレイの色域に変換され正しい色で表示できると共に、編集後の画像はそのまま変換せずにプリンタへと引き渡すだけで正しい色で印刷できる。また、このモードで編集・保存したデータはCMS非対応のアプリケーションで印刷しても正しい色となるなど、扱いを簡略化できるメリットがある(反面、冒頭で述べたようにsRGB外の色を扱うことができないという欠点もあるが)。
 
 従ってsRGBデジタルカメラの画像をPhotoshop Elementsで扱う場合は、[Webに最適] を使うのが、最も楽と言えるだろう。ただし、sRGBデジタルカメラと言っても、Exif 2.2以降のデジタルカメラはsYCCというフォーマットで記録しており、sRGBとマッチしつつも色域外の色情報もデータ中に残されている。そのデータは今回の手法では失われる。また元画像がsRGBであっても、編集中に彩度を向上させるなどのレタッチを行えば、sRGB外の色になってしまうこともある。
 
 それらsRGB外の色にこだわる手法については、次週以降に紹介することにしたい。まずはあくまでも、sRGBを正しく扱うところから始める方が理解が早いはずだ。
 
 
プリンタとのインタフェースとしてsRGBを使う
 
 さて実際に [Webに最適] モードでデジタルカメラの画像を読み込み、プリンタから出力してみよう。
 
 色々と理屈を重ねてきたが、実際に印刷する手順はとても簡単だ。なにしろ、画像データそのものをsRGBで編集しているのだから、そのまま何のカラーマッチング処理も行わずにプリンタへと引き渡せばいいのだ。
 
 しかし、来週以降のために、少しだけ設定部分を紹介しておきたい。印刷する画像を読み込んで色味を調整したら、まず [ファイル] − [プリントプレビュー] を呼び出そう。すると次のような画面が表示されるはずだ。
 
 
 
 この機能は文字通り印刷レイアウトを確認するためのものだが、カラーマネジメントの設定もここから行う。画面左下にある [その他のオプションを表示] をチェックしてみよう。すると次の画面に切り替わるはずだ。
 
 
 
 ここで [ソースカラースペース] と書かれているのが、編集中画像の色空間である。今回は [Webに最適] モードのため、ドキュメントのソースプロファイルはsRGBになっている。そのさらに下に表示されている [プリントカラースペース] は、プリンタの色空間ではなく印刷時に出力する時、どのような色空間へと変換して出力するかを指定する部分だ。
 
 sRGB以外の色空間で編集している場合――例えばカラーマネジメントを行わない(画像にディスプレイのプロファイルが割り当てられている)時など、[プロファイル] でsRGBを指定しておくと、データをいったんCIE Labというデバイスに依存しない色へと変換し、さらにプロファイルを通じてsRGBへと変換することで、sRGBプリンタに対して正しい色情報を伝えられる。
 
 ここではソースプロファイルがsRGBであるため、[カラースペースを変換しない] に設定しておくといいだろう。
 
 さて、設定を確認したら後は印刷するだけだ。プリンタドライバの色に関する設定はデフォルトのままで出力し、数時間乾燥させたあとでディスプレイと見比べてみよう(写真用紙に出力した場合、理想的には半日以上乾燥させた方が色の安定性を得られる。特に最初の10分は大きく色が変化するので、印刷直後に評価しない方がいい)。
 
 どうだろう? 似た印象の写真になっただろうか? 「画質はともかく、色はさほど見た目通りじゃない」という声が聞こえてきそうだ。
 
 
プリンタ側の設定
 
 ディスプレイのカラーマッチを取り、さらにsRGBを入力しても思い通りの色にならない理由は、単にディスプレイのキャリブレートが正確に行われていない可能性やドライバの問題といったものだけでなく、出力結果を見ている環境(明るさや照明の色温度、光源の種類など)によって色の感じ方が異なるなどの外的要因もある。
 
 
 例えばPXインクを採用する「PM-4000PX」の場合、蛍光灯下で印刷結果を見ると、色評価用の標準光源下で見た場合よりもマゼンタが強く見えやすい。PXインクは光源による影響が特に大きいので、ユーザーならば蛍光灯や白熱灯、太陽光、窓からの光など、さまざまな環境光で見比べてみるといい。
 
 さて、そうした鑑賞環境の問題とは別に、ドライバの設定を正しく行うことも重要だ。ここではエプソンとキヤノン、両社のドライバの設定について紹介しよう。
 
 
エプソン製ドライバの場合
 
 エプソンのプリンタドライバは、詳細設定ダイアログ内にあるカラー調整ラジオボタンで、色調整の方法を選択できる。通常、sRGBデータを印刷する場合は[ドライバによる色補正]でガンマ1.8が選択されているはずだ。この設定のままsRGBデータをドライバに送れば、エプソンが開発時に設定した調整パラメータで、感覚的に色がマッチするように出力される(ただし、純正紙しか想定されていない)。
 
 
 ドライバによる色補正は、基本的にsRGBにマッチさせながら、青や緑で色が飽和している色域(sRGBにクリッピングされた可能性のある領域)を拡張する補正処理が施されているのが特徴だ。また、「PM-970C」と「PM-930C」に関しては、彩度圧縮を行い低彩度領域の鮮やかさをアップさせる処理も施される。それ以外は、基本的に素直な色モードであるため、デフォルト値を基準として、明度、コントラスト、彩度、それにカラーバランスなどをトライ&エラーで調整するのがいいだろう。
 
 またガンマカーブやクリッピングされた可能性のある色域などを含め、完全にsRGBにマッチさせるように設計されたモードもある。 [カラー調整] をsRGBに設定すると、色補正の微調整を行うスライドバーが消える。
 
 
 
 sRGBにすると微調整を行えないため、エプソン純正の用紙以外では期待する結果が得られない。ただ、EPSON Natural Photo Colorによる色補正が気に入らない場合や、ドライバによる色補正のトーンカーブが気に入らない場合は、sRGB設定を試すといい。鮮やかさに欠けて見栄えがしないと感じる場合もあるだろうが、基本的にディスプレイと同傾向の色で出力されるはずだ。
 
 
キヤノン製ドライバの場合
 
 キヤノンのプリンタドライバはメイン画面の [色調整] ラジオボタンで色調整方法を選択する。デフォルトの [自動] は、sRGB入力を自動的に補正してキヤノンの色設計意図通りに出力するモードである。
 
 このモードでは一切の調整は行えないが、EPSON Natural Photo Colorと同様にsRGBが不得手とする色域に関して拡張した色作りが行われるが、青や緑に加えて肌色を含む全体的な色空間を好ましい色へとシフトさせ、なおかつ破綻がないように非線形な色相変化になるよう調整しているという。
 
 ディスプレイとのマッチング、データとのマッチングともに正確さを意識せず、データに忠実な色を中心に、sRGBで表現できない色域を拡張するのがエプソンのドライバだったが、キヤノンの場合はより好ましい色になるように積極的に色相をずらしながら味付けがされているわけだ。
 
 ユーザーが行えるのは、この色設計を軸としてカラーバランス、濃度、明るさ(ガンマ)を変更することである。 [色調整] ラジオボタンをマニュアル調整に変更し、[マニュアル色調整] ダイアログを呼び出すことで、調整を行えるようになる。
 
 
 基本的に調整で変更するのは、カラーバランスと濃度だけで構わないだろう。デフォルトで一度出力し、それを基準にして自分の鑑賞環境に合わせた色の微調整を繰り返し、最適な値を見つけるといい。
 
 ただし基本はキヤノンが味付けした色味になるため、バランスや濃度の変更は行えても、キヤノン色(と言っていいほど特徴的)は基本的に変化しない。あくまでも微調整を行うだけだ。
 
 ダイアログには [ICMを使用] というチェックボックスもある。ICMを使用するためには、Photoshop Elementsに戻り、カラーマネジメント設定画面で、プリンタカラースペースのプロファイルから [BJ Color Printer Profile 2000] を選択しておく必要がある(他の項目はそのままで良い)。
 
 
 
 ICMとはWindowsが搭載しているCMSエンジンで、オンにすることで色がマッチするハズなのだが、実際にはトーンカーブが元画像に近いものになる効果はあるものの、色相は変化しない(キヤノンの開発メンバーによると、ドライバ側がそのようなチューニングになっているとのこと)。
 
 トーンカーブが合うだけでも、それなりに雰囲気は出るものだが、本来のICMの目的からすると不満が残る。他に選択肢がないため、ディスプレイとのマッチングを重視するならばICMを使うといい。ただし、デフォルトの方が見栄えのする色になることは確かだ。
 
 また、おそらく純正以外の用紙に対応するためだと思うが、ICMに設定していても、なぜかカラーバランスを調整するスライドバーが利用できる(本来、カラーマッチングをプロファイルで行うのだから、調整は行う必要がない)。ICM使用/非使用好みのモードを選び、そこからカラーバランスの微調整を行うのが、キヤノン製ドライバで色を使いこなすコツと言えるだろう。
 
 さて、実際に出力した結果はいかがだっただろう? この先、さらにカラーマッチングを突き詰めることも可能だが、それは何週か先にすることとして、来週は今回紹介した方法をベースに、写真の見栄えを良くするフォトレタッチの基礎について紹介することにしよう。
 
 
 
http://www.itmedia.co.jp/news/0211/11/nj00_digital04_3.html 
プリンタの「写真画質」を使いこなす 第4回
sRGB以外の色空間による印刷――データの扱い方とプリンタの設定方法(1/3)
sRGBを使った色管理は簡便だが、sRGBで表現できない色は丸めの処理が行われてしまう。狙った色をきちんと出すためにはより広い色空間を扱うことが必要だ。今回はそのやり方と、エプソン、キヤノンの各プリンタでの設定方法を説明しよう
 
 前回の記事で次回はフォトレタッチの基礎についてお伝えしたいと書いたが、レタッチを行う前に、sRGB以外の色空間を使って印刷する手順を紹介してほしいとのメールをいくつかいただいた。そこで予定を変更して、sRGBよりも広い色空間で編集する手順を紹介しよう。
 
 まず今回の記事でデータの扱い方とプリンタの設定方法、そして明日掲載の(2)で各社の最新型プリンタにおける色のマッチング具合を紹介しよう。
 
 
Photoshop Elementsで広い色域を扱うには
 
 前回の記事で、「Photoshop Elements」には3つのカラー設定があることを紹介した。そしてsRGBを基本として色の管理を行うため、[限定されたカラーマネジメント] を用いて色を合わせた。
 
 しかし、このカラー設定では、sRGBで表現できない色に関してはすべて丸め処理(クリッピング)が行われる。Photoshop Elementsで色管理を行いながら、かつsRGBよりも広い色空間を扱うためには、[完全なカラーマネジメント] に設定しなければならない。
 
 しかし前回もお伝えしたように、カラーマネジメントに対応したスキャナから画像を読み込むのであれば、これで何ら問題ないのだが、デジタルカメラ画像となると少々問題がある。色特性を示すプロファイルが埋め込まれていない画像を読み込むと、デフォルトの色空間であるAdobe RGBへと自動的にマッピングしてしまうのだ。
 
 
 
Exif 2.2、PIM、PIM II対応画像の場合
 
 
 この問題は読み込む画像がExif 2.2に対応しているならば、エプソンが無償で配布している「Photoshop」のPIM IIプラグインを用いることで解決できる。PIM IIプラグインはここからダウンロード可能だ。このプラグインはPIM IIタグを見ながら、sYCC色空間で記録されたJPEG画像をEPSON RGBというAdobe RGBと似た色空間にマッピングし、タグで指示された画像処理を自動的に行うソフトウェア。
 
 またPIM IIのみならず、PIMやExifPrintの動作もサポートし、さらには画像処理を行わずsYCC色空間の画像をEPSON RGBに展開し、データ中にEPSON RGBのICCプロファイルをタグとして埋め込むだけの動作(Color Extention Only)も指定できる。
 
 PIM、PIM II、Exif 2.2では画像をsYCCで記録することを規定しているため、Color Extention OnlyでPhotoshop Elementsに読み込めば、デジタルカメラ画像が持つ本来の色を失うことなく、sRGBよりも広い色空間でフォトレタッチを行える。
 
 sYCCについては以前にも一度解説したことがあるが、YCCからRGBへの変換を行うとRGB値がsRGBとなるように調整されたYCC色空間のこと。この変換を行うとRGBそれぞれの値は0−255の外になる場合がある。Exif 2.2のsYCCはsRGBの外の色も意識して記録することになっているため、sRGBからはみ出した色を変換し、より広い色空間にマッピングすることでsRGB外の色を取得できる。
 
 Photoshop Elementsの [完全なカラーマネジメント] では、画像ソースにICCプロファイルが埋め込まれている場合は、デフォルトのAdobe RGBではなく埋め込まれたICCプロファイルを作業用色空間として利用できる。このため、PIM IIプラグインを用いれば、簡単にプロファイルなしのデジタルカメラ画像を正常な色で編集可能なのである。
 
 
 
 一方、対象とするデジタルカメラ画像がExif 2.2(もしくはPIM、PIM II)でない場合は、少々面倒なことになる。PIM、PIM II、Exif 2.2以外の画像では、記録されている画像がsYCCかどうかは分からない。分かっているのは、JPEGを展開した時にsRGBになるという事実だけだ。この場合でも、JPEG展開のアルゴリズムの中でYCCからRGBへの変換を行うとsRGB外の色が計算上はできるのだが、カメラ側がその色を意図して記録しているかどうかは全く保証されないことになる。
 
 
 
 
 このため、前述したPIM IIプラグインを用いた手法は利用できない。そこで少々面倒だが、以下の手順を踏むことでAdobe RGBを作業用色空間としてフォトレタッチを行えるようになる。ただし、残念ながらsRGB外の色は失われてしまう。
 
 まずカラー設定を [限定されたカラーマネジメント] に設定し、タグなしのsRGBデジタルカメラ画像を読み込む。次に [別名で保存] を行い、ファイル保存ダイアログで [オプションを保存] の [カラー] 項でICCプロファイルにチェックを入れて保存する。こうすることで、新しく保存した画像はsRGBにクリッピングされる代わりに、sRGBのICCプロファイルが埋め込まれる。
 
 いったん画像を閉じてから、カラー設定を [完全なカラーマネジメント] に変更し、sRGBプロファイルを埋め込んだ画像を読み込む。この時、デフォルトの色空間とは異なることを示すため、ウィンドウタイトルに「(RGB*)」と表示される。アスタリスクがポイント。このままレタッチを行うと、色調の調整などを行った後にsRGB外の色になる部分は、すべてクリッピングされてしまう。つまり、作業用色空間自身がsRGBになっているわけだ。
 
 そこで画像全体を選択してからクリップボードにコピー( [Ctrl] + [A] を押した後、[Ctrl] + [C] )し、[ファイル] - [新規作成] の後 [OK] ボタンをクリックする。この新しく作成したキャンバスは作業用色空間がAdobe RGBに設定される。ここで [Ctrl] + [V] で画像を貼り付けると、sRGBだった画像はAdobeRGBへと変換して張り付けられるのだ。
 
 ちなみにElementsではない、プロ向けのPhotoshopでは、このような面倒な操作は必要ない。画像を読み込む際、タグのない画像をsRGBとして読み込み、その後、カラープロファイルを任意の色空間へと変換する機能が備わっているからだ。
 
 アマチュア向けのElementsには不要ということで、この機能は削除されているが、[完全なカラーマネジメント] に設定すると、プロファイルなし画像をすべて無変換のままAdobe RGBにしてしまうという悪癖のため、このような手順を踏まないと色がおかしくなってしまう。
 
 
広い色空間でレタッチするコツ
 
 sRGB、あるいはモニタプロファイルよりも広い色空間を作業用として利用する場合、モニタプロファイルさえ正しく設定しておけば、表示可能な範囲の色はすべて正しく表示される。しかし、一方ではデータ上では存在するが画面には表示できない色も出てきてしまう。そうした“見えない色”をモニタ上で目視しながら色を調整することは不可能だ。しかし、全く無意味というわけではない。
 
 連載の中で何度か触れてきたように、sRGBは狭いと言われつつも、一般的なデジタルカメラ画像はほとんどの部分がsRGB内に収まっている。例えばポートレイトの中で肌色を中心にして、画像全体に色調補正をかけたり、何らかのレタッチ処理を行ったとしよう。すると、特別なテクニックを使わない限り肌色以外の部分も相対的に変化する。
 
 つまり着目している場所を基準に色調を合わせた時、結果として画像の中のどこかがsRGB外に出てしまうことがある。それがより広い作業用色空間を利用することで、データ上、ディテールを失わなくて済む。視点を変えてみると、画像の中で主被写体など一部分に着目して全体の色調を整えることが、広い色空間でレタッチを行うコツと言えるだろう。
 
 ただし、海や新緑を記憶色再現したいといった場合は、sRGBが特に弱い色域であるため、合わせることができない。Photoshopでは画像全体の彩度を落として表示することで、本来は画面上で確認できないディテールを確認しながら作業進める機能があるが、Elementsではそのようなことはできない。
 
 そうした点にこだわるのであれば、上位のPhotoshopを使うべきだが、作業してみると全く使い物にならないほど不便なケースはあまりない。写真のレタッチと色合わせを主眼としているのならば、フル機能のPhotoshopに投資する必要性はない。
 
 
印刷時の設定
 
 さて、では実際に印刷する場合、どのようにすればsRGBよりも広い色域を活かすことができるのだろうか? 第3回でも述べたように、Windows用のインクジェットプリンタドライバは、sRGBデータが入力されることを前提に色作りをしている。つまり、そのまま印刷したのでは色が合わなくなってしまう。
 
 そこでICCプロファイルを用いた色変換を行いながら印刷する。そのための手法は主に2通りある。ICMを用いる方法とPhotoshop Elements内蔵の色変換エンジンを用いる手法だ。
 
 
ICMを使ったカラーマッチング
 
 
 ICMはWindowsがシステムとして組み込んでいるカラーマッチングのための仕組み。プリンタドライバはICMモードで動作するとき、アプリケーションから受け取った印刷画像のプロファイルを参照し、ICMのAPIを通してプリンタの色特性へと変換する。
 
 具体的には第3回で解説した [プリントプレビュー] ダイアログの [カラーマネジメント] で、プリントカラースペースの [プロファイル] を [プリンタ側でカラーマネジメント] に設定しておく(こうすることでプリンタドライバに画像ソースのICCプロファイルが引き渡される)。
 
 
 
 
 
 
 次に印刷を行う際、各プリンタドライバの設定で色補正モードをICMにしておく。エプソンドライバの場合は [詳細設定] ダイアログのカラー調整モードをICMに設定。キヤノンドライバの場合は、[マニュアル色調整] ダイアログで [ICMを使用] をチェックしておく。これだけ設定しておけば、後はプリンタドライバ自身が用紙種別の設定に合わせて、ICMによるカラーマッチング機能を用いて印刷してくれる。
 
 
 
 ただしICMはMacOSにおけるColorSyncとは異なり、用紙種別ごとにカラープロファイルを選択できない。1プリンタにつき1つのICCプロファイルしか、割り当てることができないためだ。これはICMのシステム上の制限であるため、メーカーが対処することはできない。ちなみにMac OSの場合、エプソンドライバは用紙ごとに異なるプロファイルが適用されるが、キヤノンは常に1つのプロファイルが用いられる。
 
 そのままでは選択する用紙によって色が合わなくなるため、ドライバ内で若干の補正をかけているという。しかしどこまでキッチリと用紙ごとの色を合わせているかは、ドライバ次第だ。通常、色補正のパラメータは開発の最後期に行われる(量産ヘッドが完成しなければハードウェアの色特性が確定しない)。このため、用紙ごとに厳密な色合わせを行うことは時間的にもコスト的にも難しく、低価格製品ほどマッチングは悪くなる傾向にある。
 
 
 
Photoshop Elementsを用いたカラーマッチング
 
 
 エプソンとキヤノンのドライバには、色補正を行わずに出力する設定もある(HP DeskJetシリーズにはない)。これはドライバ側で補正を一切行わず、プリンタのファームウェアがヘッドを直接駆動した時に出るそのままの色で出力するモードのこと。このモードでは、そのプリンタが印刷可能なすべての色域をアプリケーションから利用可能になる。
 
 この [色補正なし] 時の色特性をICCプロファイルにすれば、Photoshop Elements側でカラーマッチングをかけることも可能だ。プリンタ用のICCプロファイルは高価なカラーマッチングシステムを用いれば自分で作成することも可能だが、満足のいくプロファイルを作るにはトライ&エラーで微調整を行う必要があるし、費用対効果の点でもオススメはできない。
 
 では手軽にICCプロファイルを使った印刷ができないか? と言えばそうでもない。エプソンは主要機種のICCプロファイルをWebサイトからダウンロード可能にしているからだ。PIM IIプラグインのページから、対応機種のICCプロファイルを入手できる。現時点では、最新モデルのプロファイルはダウンロード可能になっていないが、エプソンによると近日中に最新機種のプロファイルも配布を開始する予定とのこと。インストール方法はプロファイルに添付されたマニュアルを参照して頂きたい。
 
 プロファイルの利用方法するには、まずPhotoshop Elementsのプリントプレビュー画面、[カラーマネジメント] で [プロファイル] から、自分の利用している機種と印刷する用紙のプロファイル名を選択する。プロファイルは用紙ごとに異なるので注意して選択しよう。なお、エプソン配布のプロファイルであるため当然ではあるが、純正用紙のプロファイルしか用意されていない。
 
 [マッチング方法] はデフォルトで [相対的な色域を維持] が選ばれ、[黒点の補正を使用] にチェックが入っている。基本的にはこの設定でかまわないが、写真を印刷する場合は [知覚的] を選んだ方が良い結果が出る場合も多い。両方で印刷し、どちらが色のマッチングが良いのかを試してみるといいが、個人的には写真素材の場合は [知覚的] を選んだ方が色傾向は近似するように感じる。この設定を行ってしまえば、後はプリンタドライバの色補正モードを [補正なし] に設定して印刷するだけだ。
 
 
 
 
 
カラーマッチングをかけて印刷する際の注意点
 
 次回はエプソンとキヤノン、今年発売された両者のフラッグシップモデルを用いて、実際に今回紹介した手法で印刷を行い、その結果を検証してみることにしよう。今回紹介した手順は、カラーマッチングを行うための基本的なものだが、実際に色が合うかどうかはドライバの品質やICCプロファイルの作り込みに依存する。そこで、比較対象としてプロフェッショナルの使用も意識しているというPM-4000PXとの比較も行ってみることにしよう。
 
 なお、sRGBで色が合うかどうかも、ドライバがどれだけ色をきちんと合わせているかに依存したが、ICMやICCプロファイルを用いても、その事情は変わらないことになる。両手法の違いは作業用色空間の広さだけだ。
 
 エプソンとキヤノンの色設計担当者に話を伺ったが、厳密にカラーマッチングをサポートするには、かなり時間をかけた作り込みが必要になるという。最上位機種でも実売価格が5万円を大きく下回るコンシューマー向けインクジェットプリンタでは、そこまでの時間をかけられないというのが実情のようだ。
 
 しかし、それでも上位機種ほど作り込みは行われている。印刷業界向けのプロフェッショナルな機種(ヒューレット・パッカードDesignJetなど)ほどではないにしても、ある程度近似する出力結果は出ている。
 
 
http://www.itmedia.co.jp/news/0211/13/nj00_digital05.html 
プリンタの「写真画質」を使いこなす 第5回
PM-970CとPIXUS 950iのカラーマッチングを評価する(1/4)
エプソンとキヤノン、それぞれの今年のフラッグシップ機で、自動モードやICM、ICCプロファイルを用いた出力を行い、そのカラーマッチングを評価してみた
 
 さて、一昨日お約束した通り、エプソンとキヤノン、それぞれのA4フラッグシップ機「PM-970C」と「PIXUS 950i」でICM、ICCプロファイルを用いた印刷結果を紹介することにしよう。テストに使用した画像は2種類。何種類かをプリントし、特徴が最もよく現れるものをピックアップした。
 
 カップルの写真は陰影が強く、肌のトーンや色の再現が非常に難しいサンプルである。背景や砂の色も、本来とは異なる色相に転びやすい。また、肌のシャドウにかけてのグラデーションでは、トーンジャンプが非常に発生しやすい。なお、夕日の最も明るい部分や男性の赤いパンツは、元々CMYKでは表現できない色であるため、どんなプリンタでも色が合うことはない。
 
 
 
 
 
 ウミガメの写真は背景のブルーが非常に微妙な色になっており、わずかな陰影でディテールが描かれている。手前の赤紫の岩(実際には海綿)や亀自身の色、トーンカーブなど、自動モードで出力するとイメージとは異なる写真になってしまう。非日常的な写真だけに、カラーマッチング機能を用いなければ色を合わせるのは難しい。
 
 
 PM-970Cはデフォルトのドライバによる色補正、ICM、Photoshop ElementsでICCプロファイルを用いて印刷、の3パターンで出力。PIXUS 950iは自動モードとICMモード、2パターンを出力している。
 
 また、リファレンス機として「PM-4000PX」にPhotoshop ElementsとICCプロファイルの組み合わせでも出力した。マッチング方法は [知覚的] を選択し、ICCプロファイルはエプソンが配布予定のICCプロファイルβ版を用いている。いずれもカラーマッチング機能を用いる場合はAdobeRGBの作業用色空間で、自動モードではsRGBに変換してから出力している。なお、掲載したサンプルデータは画面表示用にsRGBへと変換済みだ。
 
 印刷結果は「CanoScan D2400UF」でスキャンし、あらかじめ作成しておいたICCプロファイルを用いて色補正を行っている。暗部のディテールを残すため、コントラストを甘めに設定している以外、色相はほぼオリジナルとマッチしていると考えていい。スキャン結果の色空間はsRGBにしている。
 
 ただし、キャリブレートしたCRTディスプレイでは正しい色ではない可能性があるので考慮頂きたい(注:サンプル1のスキャン画像において、一部の雲が消えていますが、これはスキャナから読み取った後、カラープロファイルを用いて正しい色に変換する過程で誤変換が発生しているのが原因です。すべての印刷結果には雲がきちんと印刷されています)。
 
 
サンプル1
PM-970Cの場合
 
 PM-970Cのデフォルトである [ドライバによる色補正] モードは、全体に明るめのガンマカーブで出力され、またコントラストが強く、彩度も高い派手な印刷になる。特に青い服などで顕著だ。この傾向そのものはいつものエプソンカラーだが、男性の肌は少しギトギトとしすぎている。また、顔の陰影も元画像をトレースしていない。
 
 
 
[ドライバによる色補正] モードでの出力
 
 一方、ICMモードに関しては、元絵に忠実なトーンカーブとなった。明暗の調子に関しては、ほぼ文句なし。コントラストの高さは相変わらずで、青もわずかに彩度が上がっているように見えるが、元絵のイメージに非常に近い。両人の顔の赤さだけが多少気になるが、カラーマッチングという観点から言えば、かなり良い結果である。しかし、顔のシャドウにかけてのグラデーションでトーンジャンプが(特に女性の頬や額)発生してしまっているのが残念。
 
ICMモードによる出力
 
 一方のICCプロファイルを用いた出力では、シャドウの階調がつぶれてしまい、また色温度も低い印刷結果となった。色温度の低さはD65光源を用いた観察環境で色を合わせているためだろう。
 
 
ICCプロファイルを用いた出力
 
 通常、昼白色蛍光灯や直射日光の色温度が5000度程度、電球は2000度程度で、D65の約6500度で写真を見る機会はあまりない(色温度だけでなく、スペクトラム構成が異なることも色が変わる原因の1つ)。印刷業界で色校正を行うために使うのではなく、コンシューマーユーザーが写真出力のために使うのであれば、もう少し一般的な観察環境を想定した設定でも良いのでは? と思えるほど、黄色っぽく見える。なお、シャドウ部のつぶれに関してはエプソン側でも把握し、修正することを検討しているという。
 
 結論から言えば、ICMを用いるのが最もCRTとのマッチングが良いようだが、この例に限るとトーンジャンプが気になった。このトーンジャンプはドライバによる色補正でも若干ながら現れることを考えると、エプソン製ドライバの癖と言えるのかもしれない。ただし、このような独特の癖はPM-950C時代よりも減っているようだ。
 
 
PIXUS 950i
 
 キヤノン製のドライバはICMで印刷しても色相は全く変化せず、トーンカーブだけが変わるという印象があったが、PIXUS 950iの出力結果を見るとカラー設定を自動にした場合とICMを用いた場合では、ICMの方が多少黄色が強目に出るなど色調にも手が加えられているようだ。
 
 
 
 
カラー設定を自動にした場合
 
 
 
ICMを用いた場合
 
 自動のあっさりとした色味はICMで多少濃くなり、画面に近い雰囲気となるものの、それでも肌の軽い部分はオリジナルよりも明るく印刷されてしまう。しかし、シャドウ部にかけてのトーンカーブは正確で、しかもトーンジャンプを一切しない完成度の高さは特筆に値する。若干マゼンタが弱い印象を受けるものの、かなりイメージに近い印刷ができる。
 
 実は前モデルのBJ F900/F930では、ここまで色は合わなかった。今年の年末向け新製品も、PIXUS 950i以外はここまで色は合わない。前モデルまではICMが使い物にならないと感じていたが、これぐらい近似した絵になるならば利用する価値はありそうだ。4万円前後のコンシューマー向けプリンタで、ここまでトーンジャンプが少ないドライバは珍しい。
 
 
サンプル2
PM-970Cの場合
 
 デフォルトの [ドライバによる色補正] では、EPSON Natural PhotoColorの影響が強く出て、少し濁った海が鮮やかになってしまっている。また全体に明るくトーンカーブが合っていない印象。ウミガメは全体的に白っぽくなってしまった。
 
 
[ドライバによる色補正] モードでの出力
 
 これに対してICMによる出力は見た目に近い色、トーンカーブを再現する。かなり難しい色のハズだが、この出力に限っては特別に取り上げる必要があるほど悪い部分は見あたらない。
 
 
ICMモードによる出力
 
 ただしICCプロファイルによる印刷では、ICM時よりも暗部がつぶれがちで黄色も強いが、黄色の強さの度合いはサンプル1ほど極端には感じない。サンプル1と同傾向ながら、こちらの方が良い結果となった。あるいはサンプル1の絵柄が、特別に不得手なだけなのかもしれない。トーンジャンプに関しても目立つ部分は見られなかった。
 
 
 シャドウ部のトーンだけチューニングされたICCプロファイルがリリースされれば、このサンプルにおける問題は解決するだろう。
 
 
PIXUS 950i
 
 自動モードでの色はPM-970Cと同傾向で、背景の海が鮮やかになり、全体に明るめに補正された出力となる。ウミガメの白っぽさも同じだ。キヤノンも自動モードでは、海などの色を鮮やかに補正するようにセッティングされており、その結果が悪い方向で出てしまっていると推測される。
 
 
 
 ICMに設定するとトーンカーブがオリジナルに近くなり雰囲気はよく出ている。ただ控えめの発色はサンプル1と同じで、ウミガメの色はもう少し濃度がある方が雰囲気が出る。またマゼンタが弱めなのも同傾向だ。全体的にオリジナルと近似はしており、大きな不満はないものの完璧ではない。背景の海の色も鮮やかすぎるようだ。オリジナルはもう少しくすみがある。
 
 
 
 ただ、こちらのサンプルも他のキヤノン製インクジェットプリンタよりも忠実度が高く、扱いやすいという印象はある。
 
 
本年末になって改善されたプリンタのカラーマッチングへの適応度
 
 エプソンのPM-970Cは、昨年までと異なりICMやICCプロファイルを用いた印刷を、多少意識した作りになっているようだ。サンプル1でトーンジャンプが見られたものの、以前よりもその頻度は低くなっており、またICM時の色再現性も高くなった。家庭用の色温度が低く照度も低い蛍光灯下でマッチングが取れるように工夫しているのかもしれない。
 
 ただICCプロファイルを適用した場合は、黄色が強く出てしまう。これはおそらく光源にD65を用い、かなり明るい照度で観察した時に色を合わせているからだろう(もっとも、それを考慮してもサンプル1の黄色は強いが)。
 
 写真データをレタッチし、色を合わせて出力したい場合、PM-970CではICCプロファイルではなくICM機能を利用する方が良い結果が得られるようだ。
 
 キヤノンのPIXUS 950iは、デフォルトの色調が他のキヤノン機とは異なり、かなり自然な色合いになっている。このため、トーンカーブや一部の色調に多少の手を加えるだけで、オリジナル画像との近似をICMで得られるようになった。従来機ではトーンカーブこそ合っていたものの、色に関しては全く異なるものになっていたからだ。トーンジャンプの少なさも賞賛に値する。
 
 ただし、どんな絵を出力した場合でもマゼンタが弱めになってしまう理由は、結局テストを通してわからなかった。あるいは印刷ヘッドの細かいバラツキが原因なのかもしれない。キヤノン製ドライバは(なぜか)ICMモードでもカラーバランスを調整できるので、マゼンタを多少強めにすることで、問題を回避できるかもしれない。
 
 さて、最後にリファレンスとしてPM-4000PXの出力をスキャンしてみた。さすがに滑らかで、特にサンプル1の出力結果は破綻がなく色のマッチもよく、グラデーションが美しい。価格クラスが今回セレクトした2機種とは大きく異なるとは言え、色の素直さだけでも選ぶ価値がある。
 
 
PM-4000PXによるサンプル1の出力結果
 
 
 
 
 ただし、思っていたよりも差がなかったことも強く感じている。本来ならば、メーカーによっては全く近似せず、カラージャンプも激しいものになると予想してた。実際、以前の機種ではここまで良好な結果が出たことはない。それだけ今年のインクジェットプリンタが優秀だったということだろう。