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鉄道写真2001   廣田 尚敬

ネコ・パブリッシング 2001年5月 ¥2500(税込)






 読み応えがあったのは、廣田氏が新婚旅行で屋久島を訪ねたときの記録。奇しくも自分の両親と同じ年。そして、それに対比させる35年目の夫婦旅行で再び屋久島を訪れたルポ。トロッコを追いかける姿勢がマニア過ぎず、しっかりと作品になっているところに作品制作のヒントが詰まっているように思う。
 驚いたのは氏のモノクロ写真で、宵の京都市電を撮ったもの。撮影は1957年という。まだ機材も感材も今ほど発達していない時代に、悪条件でこれだけの写真を撮っているのが驚愕。しかも記録写真にとどまらず、作品性が高いのは、やはり天才に他ならないか。いや、先天的なものもあっただろうが、何より努力と意欲のたまものだと思う。