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鉄道写真1998   廣田 尚敬

ネコ・パブリッシング 1998年5月 ¥2000(税込)






Rail Beautyあとがき 「清々しさとは、自分を取り戻すこと」

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 今回のモノクロは、一人旅して、静かに撮影したという感じの写真が多かったようです。現地では誰との語らず、黙々と歩き、時折シャッターを切る。そんな光景が目に浮かぶようです。写真そのものがメディアの先端から脱落すると、歩んだ一つの道がモノローグでした。物事を極端に思えるほど小さく眺め、殻に籠もったような写真を、人の来そうにもない会場にあてもなく並べる。そういった流れから生まれてきたように思えてなりません。たしかにモノクロームはカラーのような華やかさに欠けます。今風でない暗室作業の孤独も災いしているのかもしれません。

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 さて、そうは言うものの皆さんのモノクロームからも、アマチュアらしい清々しさの一端が感じられました。私が言う清々しさとは、自分の気持ちをたしかに表現しているということです。世の中の写真の傾向がこうだからとか、あの人がこう撮っているから自分もというのことが強く出ていては、ものを表現したり創り出していくうえではマイナスです。
 あこがれというものがあります。誰かの作風に魅入ってしまうということは、どこの世界にもあることで、微笑ましい現象です。趣味ですし、一つの過程としては決して悪いことではありませんが、一定の期間が過ぎて満足したら、撮影の主役はいったい誰かということを認識して自分を取り戻すことが大事です。自分の写真に後ろめたさなどを感じていううちは、当然にことながら清々しい写真は程遠いと思います。
 カラーもモノクロも、次回は確実に自分自身の鉄道写真を期待します。借り物の作風より簡単で気分いいですよ。何より撮影を楽しめます。

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 上記ほか、印象に残ったのは、レイル・オンのメンバーとの対談。はっきりいって、メンバーそれぞれに廣田氏はかなりきつい調子でコメントされている。それはメンバーに対して小さい世界で収まってほしくない期待の裏返しと、新雑誌に対する意気込みだと思う。たしかに、メンバーの写真はそれぞれ「きれい」と思わせるものがあるが、それで終わってしまっている。保守的な写真で、創作性が感じられない。それをズバリ言い当てている氏は素晴らしいと思う。