”踏切劇場”

鉄道ファン誌2012年3月号フォトサロン掲載作品
 





踏切は、人々の生活と鉄道が交錯する場所。
踏切のそばに立って行き交う人々や自転車、クルマなどを見ていると、鉄道はとても身近な存在なんだなあと、あらためて思ったりする。
祭があれば御輿が線路を横切ったりするのだけれど、
都市ではダイヤが過密なため、そう簡単には渡れない。
祭の責任者は御輿と人の規模、鉄道会社の担当者は上下線のダイヤの空き具合を、それぞれ打ち合わせして渡るタイミングを見計らう。それまで御輿は踏切で待機する。
踏切周辺は人があふれ、祭特有の熱気でごった返す。



幼い頃、おばあちゃんの家に行った時は、よく近くの踏切へ行ったっけ。
国鉄と私鉄の線路が6本も通っていて、電車ウオッチングには最適の場所だった。
複線が3つもあって列車が頻繁に通るから、例によって地元では「開かずの踏切」と呼ばれていた。
大人にとってはとても迷惑な場所だったのだろうけど、鉄道少年にとっては至福の時間を過ごせるありがたい場所だった。飽きもせず、いつまでも走り去る電車を見送っていた。
その自分は大人になっても、やはり踏切のそばに立っている。ただし、興味は通り過ぎる電車だけでなく、横断するいろんなモノにも広がった。少し歳をとった、ということなのかもしれないけれど。