「リコー キャプリオG4wide」の感触を得てデジタルをやり始めたのだが、もうひとつ、大きなきっかけがあった。それを「デジタルに足を踏み入れたもうひとつの理由」と題して2003年12月26日に書いている。
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デジタルフォトを本格的に始めた理由は、先述のとおりモノクロをやりたかったからなのだが、実はもうひとつ理由があった。
初秋の夕暮れ時、家族で淀川の河川敷へ遊びに行った。天気はすこぶる快晴で、当然のようにカメラを持参。EOS7と28mmのセットにリバーサルを詰めて、子供たちが遊ぶ姿を写した。少しの時間だったが、フィルムを2本使った。
現像が上がってきてルーペで確認。空はきれいなブルーの発色、そこに西日の赤い順光によって浮かび上がった子供たち。けっこう満足のいく仕上がりだった。
数日後、もう一度ポジをルーペで眺めて選択をしていたときである。絞り込んだコマをよく見ていると左端の空バック部分に、黒い糸のようなものが写りこんでいた。
「??? なんじゃいこりゃ?」
隣もコマを見ると、そこにもあった。不吉な予感を感じつつ、最初のコマから順番に左端を確認していく。
「全部アウトや・・・。」
原因はシャッター幕に糸くずがこびりついていたとしか考えられない。しかも1本目は写ってうないので、フィルム交換をした際、シャッターにフィルムへ写る形で固定されてしまったのだろう。
念のため、EOS7の裏ブタを開けてみると、なんと同じ形をした糸くずがシャッターの左側にあった。
会心の出来と思っていたものが、すべてパーになってしまった。これはショックだった。フィルムに傷がつくことがあるので、裏ブタを開けた内部は時々掃除していたのだが、こういうこともあるのだ。
しばらく立ち直れないでいたのだが、すべてパーにするにはしのびなく、スキャンしてレタッチ修正することにした。フラットベッドタイプのフィルムスキャナなので、高解像は期待できないが、パーになるよりはマシである。
レタッチも、糸くずが写りこんでいる部分が青い空のグラデーション部分なので、修正には手を焼いた。
とはいうものの、デジタルのレタッチという技で一度は死んだと思われた写真が生き返った。もちろん、デジタルでも撮影トラブルやリスクはあるだろうが、今回の件はデジタルへ足を踏み入れる大きなきっかけになったことは確かである。
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デジタルの危うさをいろいろ考えてきたが、銀塩写真の世界にも危うさがあった。そのことを痛く感じることになったのは幸か不幸かどちらだったのだろうか。
手持ちのスキャナで取り込んだデータは、それほどきれいにプリントできるわけでもなかった。やはりフィルムで撮ったものはDPEでプリントしたほうが格段にきれいだ。いや、それともスキャナの性能はそれなりに上がっているのだろうか?
紆余曲折はいろいろあったが、結局のところ、現在はデジタルオンリーで作品づくりをしている。でも、やはり正直なところ銀塩写真の魅力も捨てがたい。いつか余裕ができたなら、フィルムを使ってゆったりした気持ちで作品づくりに取り組みたい。
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