なぜズームが電動か (2004.2.24)


 キヤノンが新発売するPowerShot Pro1は、高画質がうたい文句のレンズ一体型デジカメである。28〜200mm域(35mm換算)をカバーするL仕様のレンズを備えているのだが、そのズームがUSMモーター採用らしい。

 USM(超音波モーター)だから、どうということはない。静かで動きが機敏というだけである。AFフォーカスには素晴らしい技術だと思うが、ズームの動作において大きなメリットがあるかといえば疑わしい。だいたい、ズームが電動モーターというのがそもそも気に入らない。ビデオカメラじゃないんだから、一定の速度で変化するよりも、一瞬のうちに目的とする焦点距離に合う方が大切なのである。さらに、細かな微調整も必要なので、手動のほうが使いやすいのは言うまでもない。

 コンパクト機はほとんどが電動ズームである。手動にするほうがコストが高くなるのだろう。しかし、コストをかけて高いカメラになっても、それを望むユーザーが多いはず。ましてや写真愛好家なら電動ズームの使いにくさを痛いほどわかっているはずだ。一眼レフの交換レンズで電動ズームというのは、私は聞いたことがない。レンズ交換式だとコストが高くなるのだろうが、何より使いにくいのだから、そんな高くて不便なものに消費者が金を払うはずがない。

 さて、ハイエンドコンパクトではズームを手動にしているカメラが多い。コニカミノルタのA1・A2、PanasonicのLC1など。いずれも10万円以上のハイアマチュアをターゲットにしたカメラで、使う側のことをよく考えていると歓迎できる仕様だ。

 PowerShot Pro1は前述のとおり、ズームはモーター駆動。なんでなの?と言いたくなるが、このカメラ、ゆっくり見ているとそれ以外にも「なんでなの?」が多い。Lレンズ採用で実売13万近くもするカメラ、レンズが28mmからというのも、ある程度写真をやっている人間をターゲットにしていると思われる。運動会撮影用なら35〜350mmというようなズームにしていただろし、それはPowerShot S1としてISつきで発売される。そんなカメラなのに、イメージプログラムがてんこ盛り。これって、どんな人向けに作ったカメラなんでしょうか?

 キヤノンって、すごく技術力が高い会社だけど、その技術を詰め込んで「どうだ!すごいだろう!これで文句ないはずだ!」ってユーザーに押しつけているところがあるように感じるのは私だけだろうか。単なる自己満足でカメラ作って、実はユーザーのことを全然考えてないような気がする。

 いろんな技術詰め込んでると言ったが、このPro1にIS機能がないのは、これまた不思議。これこそ必要なスペックだと思うのだが、コストの関係なのかどうか。このカメラを観察していると「ホントの写真好きは買わないだろうな」と思えてくるのである。

 デジタル先端技術で作られたデジカメも、扱うのはしょせん人間。ビジネス用途は別にして、趣味で写真を撮っている人向けのカメラ、とくにデジカメは、ほんとうに少ない。まだまだ市場が成熟していない証拠だろうし、そうだとしたら、私が期待するようなカメラが出てくるのは、まだもう少し先なのでしょう。

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