雨に唄えば (2002.5.22)


 まったくこの5月ときたら、梅雨のごとく雨ばかり降り続く。ゴールデンウィークは撮影を堪能する絶好の機会だというのに、今年の近畿地方はほとんど雨か曇りだった。

 やはり写真を撮るなら、抜けるような青空の下で撮りたい。月1回のクラブ例会での会話は、必ず
「明日晴れるかな?」

写真に天候は重大な要素である。曇っていると「光」が現れないのが痛い。さらに、本人のテンションも下がってしまう。
 写真家の岩合光昭氏は、ある雑誌の中で
「僕は光を感じないとシャッターを切らないんです」というようなことをおっしゃっていた。まさに写真は「光と影」によって成り立っているので、曇天では人工光でも用いない限り、その光と影を写し込むことはできない。

 てな難しいことを書いたが、要するに晴れの写真の方が、撮っていても後から見ても気持ちがいい、ということなのである。
 ましてや雨なんぞ降ると、何とか持ちこたえていたテンションがプツンと切れてしまうのである。

 その日も朝から雨が降っていた。いまいち盛り上がらない気分で撮影の準備をしていると、
「あ〜あ、また雨や」と誰に向けたわけでもない愚痴のひとつも出てくるものである。すると妻が
「雨は雨のいい写真が撮れるやん」
そのとき、僕は軽く頭を叩かれたような気がした。
「う〜む、そうやねんなあ。基本中の基本や。雨は雨の雰囲気のある写真が撮れるんや」
忘れてた。いや、忘れてたわけではない。頭の中ではわかっていた。頭の中でわかっていたけれども、ブルーな気分に占有されて基本をどこかに押しのけてしまっていた。

「雨はドラマティックだ。今日はドラマティックな写真を撮るぞ」
 そう思うと、なんだか「雨よ、降ってくれてありがとう」てなことさえ言いながら、雨の町へ出かけてしまうのである。


明石市・大久保駅前  2002.5
Canon EOS7 EF28〜135mm F3.5-5.6 IS
RDPV



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