作品づくりにあたって、高級な一眼レフカメラでないといい写真は撮れないと思われている方がおられるかもしれない。特定のジャンル、たとえば精密な描写を必要とする風景写真や、動きの激しいスポーツ、バックのボケと一瞬の表情が重要なポートレートなど、こういった分野ではまず間違いなくコンパクトカメラでは役者不足だ。子供の運動会などに最近人気のある高倍率ズームつきコンパクトカメラを持ってこられる方がおられるが、はっきり言って満足のいく写真は撮れないだろう。なぜなら、この種類のカメラは操作レスポンスが一眼レフにおいてかなり劣るからである。
具体的には、シャッターを切ったときのタイムラグが大きかったり、AFスピードが遅いなどの理由が挙げられる。また、ズームが電動となっている機種が多いので、すぐに望遠側にしたくても間に合わないことが多いだろう。これは私も経験済みで、400mm相当の望遠がついたデジタルカメラを、こういった理由から早々に売ってしまったことがある。
しかし、スナップなどにはコンパクトカメラはとても相性がいい。厳密なスナップショットは一瞬の勝負なので、タイムラグがあるようでは困るのだが、心象スナップや思いつくまま撮るスタイルでは、小さいボディがかなり有効だ。ふだん持ち歩いても負担にならないので、その分シャッターチャンスをモノにしやすいといえる。また、機種によっては液晶モニタがあらゆる角度に動くので、今までにない写真を撮ることができるかもしれない。
一眼レフと比べると、撮像素子の性能やその他いろんな点で劣るのは確かだが、スナップではそんなことはあまり意識せず、むしろ今までにない表現をコンパクトカメラでやってみよう、という心意気が大切なのではと思ったりする。事実、私はそういう意味でコンパクトカメラを愛用しているし、ベテラン向けのコンテストにもコンパクトカメラで撮った写真で何度か入賞した。
ただ、やはり一眼レフは1台持っておいた方がいいだろう。コンパクト機で一眼レフの代用は困難だ。テーマを限定して写真を撮っているのでない限り、一眼レフと併用がベストではないかと考える。