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これから働き方はどう変わるのか―すべての人々が「社会起業家」となる時代  著:田坂広志
 
<要約>
●なぜ我々は働く喜びを失ってしまったか。
 
それは、世にはびこる「生き残りをかけて〜」のような「寂しい言葉」にある。
 
たしかに、改革していかなければいけない現状ではあるが、そもそも改革とはその先に
「希望」や「喜び」があったはずではないか。
 
我々が働くのは「生き残る」ためだけではない。
もっと素晴らしい何かがあるはずだ。
 
それを理解するには
「仕事の思想」が求められている。
原点に回帰しなければならない。
 
●その思想を考える。
・報酬という観点
 
目に見える報酬・・・給料、収入、役職、地位
目に見えない報酬・・・
1 職業人としての能力〜プロフェッショナル
2 働き甲斐〜仕事仲間が楽になる、社会に貢献する
3 人間としての成長〜スキルだけでは仕事はできない。人間同士の豊かな心の関係を築くために心得を持つ。そして、これは決して失われることはない。
 
自ら求めて得るべき報酬・・・能力、仕事、成長
結果として得られる報酬・・・収入、地位
 
「仕事の意義」を深く考える〜積極的な姿勢
誰からでも「謙虚に学ぶ」という姿勢
 
●ゼロサムの報酬よりプラスサムの報酬
ゼロサム:誰かが増えると誰かが減る〜給料、地位(経済の高度成長が終わったから)
プラスサム:誰もが増える〜能力、仕事、成長
 
●どうすればプラスサムを得られるか
まず、順序がある
(働き甲斐のある)仕事→能力→成長
 
働くというのは、「社会」のために仕事をすることである。
〜本来、すべての仕事は「社会に貢献する仕事」である。
問題は「そのことに気がついているか否か」
 
●働き甲斐を感じるために
「社会貢献」ということを見据えた「働き方」のスタイルに切り変えること。
 
キーワード:社会起業家
 
従来の概念
「営利企業」で働いているかぎり「社会貢献」をすることは難しい。
「社会貢献」を行うには「非営利組織」で働かなければならない。
 
   収益を上げることのみに目を奪われ、いつのまにか「社会貢献」という原点を忘れてしまった。
 
 しかしこれからは
 「営利企業」で働くことが「社会貢献」となっていく。
 
  さらに、起業がやりやすくなった・・・「ネット革命」
 
これからは、すべての人々が「社会起業家」となる。
 
 
●六つの社会動向を背景とした六つの理由
 
@「社会貢献」の働き方を求めている人が増えている。
〜世の中の役に立ちたい、社会に貢献したい
 
A営利企業にも「社会貢献」が求められる時代となる。
 1)製造物責任
 2)環境対応
 3)地域に対する役割
 4)文化支援
 5)社員の「社会貢献」活動を支援すること
 
営利だけを目的とした活動をしている企業は、消費者や市場から評価されない時代がやってくる。
 
よって「営利企業」で働くことが「社会貢献」をめざした働き方と矛盾しない。
 
B「非営利組織」でも事業性が求められる
〜現在の構造改革では民営化が進められている。また、NPOなども寄付金等でまかなうのではなく、自立化が求められる。(中立性を保ち、持続性を強固なものにするため)
活動資金を、事業を通じて獲得することが必要。
 
 
  へーゲルの弁証法 ・・・ 対立物の闘争による相互浸透
 
 
C「起業家」という言葉が広い意味で使われるようになる。
 
D会社や組織を創らずとも「起業家」としての活動が可能になる。「ネット革命」
 
E「起業家」に必要な知識が容易に手にはいるようになる。「ネット革命」
 
では、「社会起業家」に求められる資質は
 
1.何度失敗しても挑戦し続ける「志」と「使命感」
2.人々が集まってくる「人間的魅力」と「根性」
 
●社会起業家としての働き方「七つのスタイル」
 
これからは「社会起業家」の定義が書き換えられる
〜従来は「営利」対「社会貢献」が二項対立的は発想であった。
これが変わる。
1.「営利企業」で働いていても「社会貢献」の理念を持っておれば「社会起業家」としての働き方である。
2.「新しい事業」を起こさなくても、日々の仕事に「革新」を起こせば「社会起業家」としての働き方である。
 
 
七つのスタイル
@立志 「良き社会」を実現しようとの「志」と「使命感」を持つ。
A成長 自分自身の「自己改革」と「人間成長」をめざす。
B共感 多くの人々との「共感」と「協働」を生み出す。
C革新 「現在の事業の革新」や「新しい事業の創造」を行う。
D創発 事業の革新や創造を通じて「社会の創発」を続ける。
E信念 生涯にわたって「社会改革の歩み」を続ける。
F伝承 次の世代に「志」と「使命感」を伝えていく。
 
 
社会起業家はその志と使命感を明確な「ビジョン」として語らなければならない。
抽象的な「理想」や「理念」として留めてはならない。
 
 
<注意>----------------------------------------------------------------------------------------------------------
「志」や「夢」を語る人のなかには、ときおり観念的に語るだけで、それを実現するための「努力」や「苦労」を避ける人がいる。→夢想家
 
「社会貢献」や「社会変革」を語る人のなかには、ときおり現実社会での仕事や職場に「適応」できないため、その「逃避」としてそれらを語る人がいる。
 
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人々の共感を得ようとする → ×
「自分が相手に共感する」
 
 
「社会変革のパラダイム」が変わる
「機械論パラダイム」から「生命論パラダイム」
「機械論パラダイム」とは・・・社会や市場、企業をひとつの「機械的システム」とみなす。〜「理想的な社会」を「設計」し、「構築」し「管理」することができるという発想。
「生命論パラダイム」とは・・・社会や市場、企業をひとつの「生命的システム」とみなす。〜あたかもひとつの生命体のように、外部から何の働きかけなくとも自然に「秩序」や「構造」が生まれ、「複雑系」の持つ「創発性」や「自己組織性」と呼ばれる性質。
「新しい社会の創発を促す」という思想
 
二つの強さ
「失敗しても、必ず立ち上がる」
「失敗を通じて成長し続ける」
 
 
「志」と「野心」を混同してはならない。
似て非なるふたつのことば。
「野心」 己一代で成し遂げようとする願望、小さな自我の叫び。
「志」 己一代では成し遂げ得ぬほどすばらしき何かを次の世代に託する祈り。
 
 
 
 
・・・以上・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・