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ディザスタリカバリ
http://www.sw.nec.co.jp/lecture/word/dr/ 
 
■ 不測の事態に対応するデータ復旧作業
■ データの重要度とシステム特性に応じた対策
■ ビジネスの継続のため、評価、構築、再評価が必要
■ 不測の事態に対応するデータ復旧作業
 ディザスタ(disaster)は、英語で天災、災厄、災害という意味です。同じようにリカバリ(recovery)は、復旧、修復を意味しています。つまり、ディザスタリカバリとは、災害などによって生じたシステム障害を復旧させる作業という意味で使われます。
 現代のビジネスや企業活動のほとんどは、情報システムの利用を前提に行われています。企業規模の大小や業種・業態を問わず、IT基盤を活用し、日常の業務を行っています。しかも、対顧客や業務のフロント部分で使われる各種システムからバックエンドの基幹システムまで、複数のシステムを利用しているのが普通です。もしも災害などの原因によって、これらのシステムがダウンしたり、パフォーマンスの著しい低下が起こったりすると、業務に支障を来し、多大な損失を被ります。そればかりではありません。顧客満足度の低下や、企業に対する信頼の低下を招きかねません。
 そこで企業は、あらかじめシステムの特性や規模に応じて、想定しうる最悪の状況からの回復作業をどうするかという対策を講ずる必要があります。とくに大切なのは、企業の保持する各種データです。それは、何らかの災害によってシステムが壊れたとしても、まったく同一のシステムを再現することは可能ですが、仕入・販売などの取引データや、顧客に関するデータ、会計データ、管理データなど、企業にとって生命線ともいえるデータは、いったん物理的に完全に失われてしまうと、もはや復旧させることは不可能だからです。
 どんなに大切なデータでも、バックアップをとっておく以外に、データを修復する方法はありません。そこで、ディザスタリカバリとは、一般的にデータの復旧作業という意味で使われます。そして、このデータ復旧作業は、事前に対策をどのように講じてあったかによって、作業の難易度が大きく変わってきます。
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■ データの重要度とシステム特性に応じた対策
 ディザスタリカバリの基本は、事前の対策にあります。その対策の方法は、データの重要度とシステムの特性によって、適切な方法を選択する必要があります。
 たとえば、システムの重要性はそれほどでなくても、データの消失があると困るようなケースでは、単体ドライブによる定期的なバックアップをとることで対応します。定期的なバックアップをとることは、ディザスタリカバリ対策の基本です。この方法をとると、障害が起こっても、低コストでのデータリカバリが可能になります。
 次は、テープオートローダーやディスクアレイによって、自動的にデータのバックアップをとる方法です。この方法では、データバックアップ作業の自動化によって、バックアップ作業にかかるコストの削減や、人為的に発生するミスの減少が図れます。
 さらに、より大切な主要データの場合には、定期的にバックアップをとり、そのバックアップデータを外部のストレージに保管します。またWANを経由して、遠隔地にあるサイトにデータをバックアップする方法もあります。とくに遠隔地にバックアップデータを保管するのは、広域に及ぶ自然災害による障害からのリカバリを考慮すると、きわめて効果の高い方法であるといえるでしょう。この段階の対策は、速やかなデータリカバリによって、高度なサービスの継続が求められる業務に関して、多くの企業が採用しています。
 最もミッションクリティカル性の要求される業務の場合は、業務の継続性をより完全にするため、システムやサイト間の距離に関係なく、リアルタイムのデータバックアップのとれる、遠隔クラスタリングによる方法を採用しています。この方法をとると、コストもかかりますが、現段階では最も高度なディザスタリカバリ対策になります。
 しかし日本では、遠隔地へのデータバックアップと、業務の継続については、一部の大規模システムで、業務アプリケーションとして実現している例はありますが、ハードウェアやミドルウェアを利用したディザスタリカバリの運用を行った例はほとんどありません。
 そこで、多くの企業が連携し、企業の基幹システムクラスについて、遠隔地間でのネットワークを利用したデータ転送によって、 
・ さまざまなディザスタリカバリ方式の運用手順、性能、コストの検証
  ・ さまざまなデータ複製ソフトを活用したディザスタリカバリ性能の検証
  ・ 災害、障害時の復旧方法や手順の検証
などの実証実験を行い、本格的なディザスタリカバリに対応するサービスの提供を実現しようとしています。
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■ ビジネスの継続のため、評価、構築、再評価が必要
  では、どのようなディザスタリカバリ対策を講ずればよいかの判断基準は、どう考えればよいのでしょうか。判断基準のベースとなるのは、災害によって生ずる損失額と、復旧のために必要な投資額とのバランスです。
 したがって、ディザスタリカバリ対策の前に、まずバックアップの現状を把握し、評価を行ったうえで、全社的にバックアップ管理を行う必要があります。そして、バックアップポリシーを決める際に重要なのは、データの重要性とともに、データ更新の頻度も考慮することです。システムインテグレーターやベンダーは、さまざまなソリューションを提供してくれますが、これを利用する側の企業は、このデータだけは守り抜く、というものを見極めておく必要があります。
 また、ディザスタリカバリの対策をプランとして練り、システム化していても、ディザスタはしばしば起こるわけではありません。いざというときに社員が対応できなくては、せっかくの対策もむだになりかねません。したがって、不測の事態が起こったときに、何をすべきかを社員が知っておく必要があります。そこで、平素から起こりうる状況を想定し、あらかじめ訓練やテストをしておくことが大切です。
 さらに、立てたプランを定期的に見直し、レビューすることも忘れてはなりません。新たなローカルデータの管理法やミドルウェアソフトの登場、通信回線の利用法など、常に最新技術の動向に目を配り、対策の方法が陳腐化しないようにプランを更新する必要があります。
 こうした点を見ると、ディザスタリカバリは、セキュリティシステムの構築と運用によく似ています。そのコンセプトは、どちらも業務やビジネスに支障を来さず、どう継続性を維持するかという点にあります。
 システムは、構築すればそれで終わりではありません。ビジネスを支える基盤として恒常的に利用できるように、あらゆる方策を講じておく必要があるのです。
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(2003年 1月 22日掲載)