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“〜ビジネス基礎力”向上計画 webサイトから引用
http://nikkeibp.jp/jp/report/expert/index14.html
 
http://nikkeibp.jp/wcs/leaf/CID/onair/jp/rep02/331417
“ビジネス基礎力”向上計画 第1回 〜序章・ワンランク上のビジネスパーソンへ
2004年09月15日 09時06分
(梅森 浩一=アップダウンサイジング ジャパン 代表)
 
「成果主義」もしくは「実力主義」という言葉が、新聞や週刊誌の紙上でよく目につくようになりました。読者の皆さんの中には、こうした雇用・人事システムの変化に敏感に反応し、競争の中で「勝ち残る」、「生き残る」ための力を身につけるべく、すでに努力し始めている方が少なくないと思います。
 
私はこのコラムで、「ワンランク上のビジネスパーソン」になるための、「方法論」を整理していきたいと考えています。「ワンランク上のビジネスパーソン」とは、「勝ち残る」「生き残る」だけでなく、個人としての生活も充実させたビジネスパーソンのことです。「方法論」はそれを目指すにあたっての道しるべ。せっかく努力するならば、考えるべきテーマをきちんと整理し、無駄のない努力をしませんか。
 
序章である今回は、本題に入る前に、連載を進めるにあたってのスタンスについてお話したいと思います。
 
●「アイマイ」から「ハッキリ」とした世界へ
第1は、「アイマイ」から「ハッキリ」。
 
「竹を割ったような性格」という表現があります。ですが、そのような“スパッ”と、何事も割り切ることができる性格の人が現実にいるかどうか、私には甚だ疑問です。ご存じの通り、私たちをとりまく世界は、単純に「白・黒」「裏・表」といったように、なんでもかんでもハッキリさせることができないのが現実です。それが故にいろいろな悩みも生まれてきます。
 
従って、「白黒をつける」以前の問題として、むしろ、ハッキリと認識できる白と黒の領域よりも、はるかに大きな割合を占めているどっちつかずの「グレー・ゾーン」にどう対処するかが、実はこれからのあなたの人生を成功に導く一つの試金石となると思われます。
 
今回の連載を始めるにあたって、私自身できるだけ気をつけていきたいことの一つが、このように曖昧模糊(あいまいもこ)として私たちを取り巻いているものを、一つひとつ、できるだけハッキリと認識していくようなアプローチをしていきたいと考えています。
 
第2は、何を差し置いても、みなさんにいちばんに考えていただきたいこと。「とにかくポジティブにいこうよ」です。
 
●とにかく“ポジティブ”にいこう!
 
こういった題名を目にすると、なんか無理やり「元気にいこう!」とか、「何事も一生懸命に」とハッパをかけられているように誤解される方もいるかもしれませんが、ここで言う“ポジティブ”にはそんな意図はありません。むしろ、少しでもこの言葉に抵抗感がある方は、どうか自分に、ポジティブであることを強いるのだけはおやめになってください。とにかく、何事もムリがいちばんいけないと思います。
 
ビジネスパーソンでなくとも、現代人にとっていちばんの大敵は「ストレス」です。これを、自らわざわざ増やすことほどバカげていることはありません。例えあなたが、「ネガティブ指数100%(?)」を自認されていたとしても、それでもし“ストレスフリー”な生活を送っているのだとしたら、それはそれでいいと思います。
 
ある日、地方で講演する機会があったときのことです。その日の講演はたまたま2部構成となっており、私の前にもひとかたお話をされていました。あいにく講演会場に到着するのが遅れた私は、その方のお話を聞きそびれてしまったのですが、幕間にご挨拶をすることができました。
 
そのとき、「どうしてもやる気が出ないときに、いったいどうやったらやる気がでますか?」と伺ったのですが、その答えは、みなさんのご想像の通り。「やる気がでないときにはムリをしないで、そのときを待つのです」というものでした。確かに、冒頭で述べた「無理強いしないで」と同じ発想です。しかし、ここで一つの問題が残ることになります。ビジネスの世界では、「ムリです、できません」が通用しないということです。
 
「バイオリズム」に代表されるような、「気分の波やムラ」というものは、私たち自身、確かによく感じるものです。例えば、いちばん底の状態のときに、いきなりハイな状態にもっていけと言われても、やはり「ムリなものはムリ」といわざるを得ません。ただし、その一方で「ムリです、できません」が通用するのなら、これほど楽なことはないわけです。これが通用しないのが、現実の私たちの生活だと思います。
 
そんな風に、「落ち込んでいたり」「やる気がでないとき」でも、なんとかしなくてはならない。そういったときこそ、「どうやったら、やる気になりますか?」――それが私の質問の趣旨だったのです。残念ながら、うまい答えはいただけませんでした。
 
●早く寝て、ネガティブな気分を切り替える
 
確かに、自分の気持ちにウソをついてまで「前向きなフリ」をすることの危うさは感じます。しかし、どうしてもそうしなければならないと判断されるとき、あなたはいったいどうやって「その気」になっていますか? ここで、私の場合をご参考までにお教えしておきます。
 
(1)とにかくその日は早く寝てしまう(気分に素早く「リセット」をかけるためです)
(2)朝、目が覚めたら「くよくよしていてもしょうがないし、いいこともあるか」と、できるだけ“オメデタク”考え始める
(3)そうやって、十分に気分の切り替えが済んでからベッドから抜け出す(切り替えがうまくいかないときは、わざと「朝寝坊する」)
 
「なんだこれは、参考にならないよ!」と思われた方もいたかもしれません。ですが、これは実際の、私の「リセット方法」なのです。要するに、どれだけ「ネガティブな気分を引きずらないか」ということがポイントです。私の場合には、「さっさと寝ちゃう」ことで、気分の切り替えをしている――いわば、寝ることが「気分の切り替えスイッチ」というわけです。
 
「ビール片手に野球をみる」、「スポーツジムで汗を流す」、「とにかくショッピング」など、人によってさまざまなやり方があると思います。要するに、自分の“気分の切り替えスイッチ”は何かを知り、それを効果的に押す方法を学ぶのが大切なのだと思います。
 
件の先生がおっしゃっていた、「ムリしてやる気をださなくてもいいんですよ」は正論なのです。しかし、「分かっちゃいるけど、それでもやらねばならないときがある」のがビジネスパーソンです。
 
でも、あんまり“ガチャガチャ”スイッチをいじりまくると肝心な時に効かなくなる恐れがありますから、くれぐれも「ここぞ」というときだけに、スイッチを切り替えてくださいね。
 
●もっともらしい理屈は、後からゆっくりと考えればいい
 
ところで、こういった“ポジティブ”というフレーズに続く言葉として、「生きる」、「考える」、「行動する」といったものがあります。確かに、アタマの中では「ネガティブに生きても仕方ない。ネガティブに考えて、そして行動したところで何もいいことはないよな」とは分かっているのです。だとしても、人はそうそう割り切った行動ができるものではありません。それが、前述した「グレー・ゾーン」にまつわる難しさでしょう。
 
人生に大きく成功してしまった方の言う法則は、とかく自分達にはあてはまらないことが多いものです。なにか、自分にふさわしい成功法則がないものか、とそれを追い求めながら1日1日を過ごしているうちに、それこそ、あっという間に時は過ぎ去っていきます。本当はそんなに堅苦しく考える必要なんてないのかもしれません。
 
『ビジネスにおいては、勝てば官軍だよ』とは、さる創業者の言葉だそうです。私たちのキャリアにおいても、「終わりよければすべて良し」ということかもしれません。もし、そんな「結果主義」が本当だとするならば、始める前にあれこれ思い悩んでも仕方がないのではないでしょうか?
 
「成功の理由」は後からいくらでもつけることができます。むしろここで大事なのは「オメデタイ」ほどポジティブに、前向きに生きること。もっともらしい理屈(ときには屁理屈)は、後からゆっくりと「後付け」で考えればいいこと。私たちの合い言葉は、「とにかくポジティブに!」でいこうではありませんか。
 
 
http://nikkeibp.jp/wcs/leaf/CID/onair/jp/rep02/334242
「時給主義」で働くか、「年俸・成果主義」で働くか
2004年09月30日 09時08分
 
“Do more with less”−―「よりたくさんの仕事を、より少ない人数で」が、洋の東西を問わず、いまやすべての職場で共通のスローガンになっています。例えば従来5人でやっていた仕事を3人でこなす。仕事そのものの「量も質も減るわけではない」以上、1人あたりの労働量は格段に増える結果となります。すると当然のことながら、職場のそこかしこでいわゆる「サービス残業」が発生してきます。
 
「労働の対価として給料を支払う」――これが労使関係の基本形です。しかし、いつのまにか双方が(ここが問題です)「タダで働いてくれ」「ハイ、タダで働きましょう」ということで納得し、サービス残業が常態化してしまっているのが現実です。
 
そこで、あまりに当たり前と言っては当たり前すぎるのですが、私たちはいったい何のために働いているのかについて、一度立ち止まってキチンと考えてみる必要があるのではないでしょうか? ここにも、前回ご紹介した「アイマイ」と「ハッキリ」の関係で考えなければならないことが一つあるのです。
 
●外資系企業も残業代を払いたがっているわけではない
 
私が勤務していた会社は外資系でしたが、だからといって残業代の支払いを免除されていたわけではありません。残業に対する雇用者の支払義務というものは、日本企業におけるそれとなんら変わりませんから、残業が増えれば増えるほど、会社が負担すべきコストも当然増える結果となります。
 
時折、「残業代の不払い」が問題となり、雇用者に対して支払命令が下されるケースが散見されます。外資系の会社というのは“比較的”遵法精神が旺盛ですから、請求があった残業代は支払います。しかし、もちろん喜んで支払うわけではありません。
 
例えば、ボスは一生懸命「早く帰りなさい」と言ってきます。それとても「家庭があるんだろ。仕事ばかりしないで、早く帰って子供の顔をみてやれよ」という“優しさから出たセリフ”では決してありません。
 
それが証拠に、残業代がつかないポジション(「エグゼンプト」とアメリカでは言います)――いわゆる“管理職”に就いたとたん、早く帰れよとボスから「全く言われなくなった」記憶があります。とどのつまり、「猛烈に働いてもらいたいけど、お金は払わないよ」は古今東西の管理者に共通なのです。これは実にムシのいい話と言わざるを得ません。
 
●成果主義への完全シフトが、終身雇用制を守る
 
ちなみに私は、「時間給」で給料を受け取る立場から、仕事の出来高で報酬を受け取る「年俸制」に変わったことで、仕事に対する取り組み方がハッキリと「成果主義」に変わったのを覚えています。極端な話をすれば、「やっても、やらんでも」、「うまくいっても、いかんでも」、その費やした時間に対して報酬が支払われる立場から、「結果を出すために、いつでも、どこででも働かなければならない立場」へと意識が変わったのです。
 
それは、仕事に対する当事者意識に変化が見られた――すなわち、「働かされている」という意識から「自らの意志で働く」ことへ――ということです。そして年俸制への移行は私に、会社に勤めてはいても一人の「プロフェッショナル」である、という意識を植え付けるのに十分な刺激でした。
 
ちなみにアメリカでは、いわゆる「プロフェッショナル」な仕事はすべて、残業代をはじめとする「時間外手当」の支給対象外となっています。ですから、そのポジションに就くのであれば、新入社員であろうがベテラン社員であろうが、時間外手当の支給対象からはずれます。それが、プロフェッショナルで、自立したキャリアを望む者たちに対する「ごく普通の取り扱い」なのです。
 
自分は「時間で管理されるのか」それとも「仕事のアウトプットで評価が決まるのか」の現状を知ることや再確認することは、とても大切です。アメリカに比べてはるかに「ノン・エグゼンプト」(つまり残業代支払い対象層)が厚いここ日本では、えてして「上司」になっても「時間給」的感覚のままで仕事をしている方が大勢います。
 
そんな状況では、「わが社は成果主義を導入している」といくら言い張ってみたところで、われわれがよくいうところの「サラリーマン根性」のままと言わざるを得ません。そして、サラリーマン根性が残っているところに、新たに成果主義が根付くハズもありません。「時間でいくら」から、「アウトプットでいくら」の成果主義へ完全にシフトすることが、「年功序列制度」を打破しつつ、大事な「終身雇用制度」を堅持する最初の一歩だと思います。
 
ちなみに私は、公正な成果主義に基づいた終身雇用制が、日本企業がとるべき理想の制度だと考えています。これについては、後の回でご説明したいと考えています。
 
●「変化を感じるセンスを磨く」
 
いわゆる「金融業界用語」の一つに、「黒目・茶目・青目」というものがあります。これは、もちろん差別用語として使っているのではなく、債券の発行体が日本国内の企業なのどうかの違いを言い表すものです。それを踏まえて私は、「日本企業を黒目」、「外資系企業を青目」、そして「そのどちらとも言えない中間の企業を茶目」と呼んでいます。
 
ただし、単純に日本企業を黒目としたのではありません。その会社の採っている「雇用システム」が、「終身雇用」や「年功序列」など旧来型システムなのか(それを「黒目」と呼びます)、それとも「成果主義」が徹底した会社なのか(これが「青目」)、その中間の会社なのか(「茶目」です。「ハイブリッド」と言い換えることもできます)、によって区別したのです。
 
そうすると、どうでしょう。普段何気なく「カイシャ」と一括りにして呼んでいたみなさんの会社の中には、外資系企業でもないにもかかわらず、すでにかなりの「青目」企業に変わってきている企業があるでしょう。いっぽう、いまもって「黒目中の黒目」の会社もあることに気がつかれるのではないでしょうか。
 
通常われわれが、頭から「黒目」だと思っている日本企業の中にも、既に、様々な「雇用スタイル」が混在していることに気がつきます。もとより、各企業は個別のビジョンなり戦略を持って行動していますから、一括りにまとめることには当然ムリがあります。しかし、今までアイマイだった雇用スタイルの変化にこうやってハッキリと意識を向けると、「こういった変化はごく一部の企業でのことなのか」、それとも「こうした動きは今後広まっていくものなのか」という次の疑問につながっていきます。
 
そして、さらに、「その変化のうねりの中で、自分はいったいどう対処していったらいいのだろうか?」という疑問にもつながるはずです。
 
正直言って私は、いわゆる伝統的「黒目」スタイルの会社が、これからも日本から完全になくなることはないと思います。しかも、多くの黒目の会社が、ここでご紹介したいわゆる「茶目」や「青目」スタイルに今すぐ移行することもないと思います。
 
しかし、それでも、「全くの黒目を堅持していく会社」というのは、少数派となるのではないでしょうか。その理由は簡単です。そんな「黒目スタイル」を維持するコストを負担し切れないという、お家の経済的な事情があるからです。
 
例え動きがゆっくりしているように見えても、「黒目から茶目」、「さらには青目に」という動きは止められません。そして、その動きが止められないということは、「今、私たちはどこにいて、どこへ向かっているのかを知らなければ、将来に向けての先手が打てない」ということを意味します。
 
さらに一歩進めて考えれば、その向かう先で求められている「成功するためのコンピテンシー(能力)をいち早くキャッチして素早く身につけ、さらに実行することができなければ、これからの時代は自分の身を守ることができなくなる」ということも意味するわけです。
 
 
http://nikkeibp.jp/wcs/leaf/CID/onair/jp/rep02/336833
会社のミッションとあなたの目標はかみ合っているか
2004年10月13日 16時35分
会社の方針を理解せよ
 
皆さんの上司は、会社の「ビジョン」をキチンとあなたに説明できますか? また年度末に行う「業績評価(いわゆる「査定」です)」の際、ちゃんと「バリュー」に基づいて公平な判断をしていると思いますか?
 
外資系の会社では、「三種の神器」とも呼べる、「ビジョン」、「ミッション」、「バリュー」の三つが、ほぼ例外なく定められています。
 
「ビジョン」は会社のレーゾンデートル(存在意義)を定めたもの。そこには「かくあるべき」、「こうなりたい」といった“会社にとっての夢”が盛り込まれています。もちろん、夢だけで会社は成り立ちませんので、それを具体化するプラン――いわゆる「中期経営計画」みたいなものが策定され、実行に移されることになります。
 
実行に際しては、「もうかればいい」、「夢を実現するためならば何をやってもいい」ということには当然なりませんので、正しく行動するための「行動指針」が必要となります。それが「バリュー」と呼ばれるものです。
 
これらを、あなた自身の立場に立って、さらに分かりやすく言い換えてみましょう。これから会社にいる間、あなたはまず、会社の夢の実現に向かってみんなと一緒にがんばることが求められています(これが「ビジョン」の役割です)。
 
夢を実現するために、例えば向こう3年間で売り上げを倍増するプランが策定され、それに基づいてあなたの部署の役割が、そしてあなた自身に求められる貢献項目・数値目標が定められます(これが「ミッション」の役割です)。
 
ミッションを実行するにあたり、“こういう行動を取れば会社は評価しますよ”――言い換えれば、これを外れれば評価の対象になりませんし、それどころか時と場合によっては懲罰の対象にもなりますよ、という指針が示されます(これが最後の「バリュー」の役割です)。指針がなければ、社員の行動を統率することができません。
 
多くの場合、皆さんの目標は「今期は売り上げをいくら伸ばして・・・」といったハッキリしたものですから、期末の業績評価の際に「モメる」ことはないでしょう。しかし、仮に目標を達成しても、それだけで満足してはいけません。
 
目標の意味を考えよう
 
ここで大事になるのは、そもそもこの私が達成しなければならない数値目標は、いったいどういうミッションに基づいて策定されたものなのか。そして、目標を達成することによってビジョンの実現に一歩ずつ近づいているのかどうか。これらのことに、確信を持つことが必要です。
 
なぜならば、多くの人が(おそらくあなた自身もそうでしょうが)ただ「お金のためだけ」に働いているのではないからです。私たちの人生をも賭けるこの「カイシャ(もちろん、これはあなたが属する組織・団体一般を指す言葉です)」の夢に共感し、その実現にどれだけ(たとえ微力であっても)貢献できたかが、“自己実現”に欠かせないものだからです。
 
ワンランク上のビジネスパーソンは、目標を達成できたかどうかに意識をとどめてはいけません。その目標がカイシャにおいて持つ価値や、目標を達成することで“自己実現”にどれだけ近づけるか。こういったことにも、こだわらなければいけないと思います。
 
冒頭にご紹介した外資系企業における“三種の神器”は、実は、外資系のみならず、すべての企業ならびに経営者が持ち合わせていなければならない必須アイテムです。
 
ですから、もし、あなたご自身の上司に「ウチのビジョン、ミッション、バリューって、何ですか?」と聞いたときに、答えられないとすれば、大きな問題ということになります。あなたが何を目標にして行動すべきで、何を基に評価されるのか、査定者である上司がよく分かっていないということだからです。そして何よりも、あなたが満足のいく自己実現をそのカイシャで図れるのか、大きな疑問符が付くことになるからです。
 
自社内にチャンスがある良さを活用する
 
「外資系」の会社というのは、国内企業と比較して「職種」が確立していると思います。職種が確立しているというのは、すごく大切です。職種が確立しているからこそ、そこに「人材マーケット」が生まれるわけです。
 
職種を軸に考えると、「○○会社の木村さん」ではなく、「財務のプロである佐藤さん」という理解になります。職種が確立することにより、各々のプロが活躍できる「人材マーケット」が生まれるわけです。そして、それが「人材の流動性」へとつながります。
 
この「人材の流動性」。なにも「社外への流出」だけを意味しているワケではありません。社内において、人材を流動させることもできます。「ジョブ・ポスティング・システム」(社内公募制、フリーエージェント制)という言葉を、皆さんも一度ならず耳にしたことがあるのではないでしょうか? また、募集している仕事を小耳にはさんだときに、「あ、私もぜひチャレンジしたいな」と実際に思った人が結構いるのではないかと思います。
 
こうした仕組みの登場は 「終身雇用制度」においても、「職種の確立」や「成果主義」を企業が意識していることの表れだと思います。つまり、これからは「手に職を付ける」ことが、みずからの身を守る第1条件となるわけです。ワンランク上のビジネスパーソンは、この「職種」を強く意識することが大事になると思います。
 
この「日本企業」における「社内公募制度」。「外資系」のようにキッチリと職種が確立していて、なかなか「横の異動」ができないところとは違い、「組織横断的な異動」ができる(実は、この点が「日本企業」の良さの一つでもあります)優れた制度ですから、活用しない手はありません。
 
「組織横断的な異動」が可能ということは、例えば「私は今、経理をやっているが、営業に行く」、「技術を担当しているが総務へ行く」といった、「外資系」企業ではあり得ない「職種を越えた異動」が可能なわけです。その中には「異職種」のスタッフを募って立ち上げる「社内プロジェクト・メンバー」なども含まれるでしょう。こうした取り組みは、「日本企業の最大の強み」とも言えます。
 
ただし、「自社の中にチャンスがある」ということは、言い換えれば、「自社内にチャンスがなくなれば、この会社にとどまる理由がない」ことをも意味します。つまり「日本企業」というのは、「自社の中にチャンスがある限り、今後も魅力があって、社員にとって所属し続ける価値がある存在」であるわけです。そういう意味において、「自社の中にある仕事の魅力を高め、自社の中での人材の流動性を高める」という努力を、企業はドシドシすべきだと私は思います。
 
 
http://nikkeibp.jp/wcs/leaf/CID/onair/jp/rep02/339917
パーソナル・バリューを考える
2004年10月27日 16時22分
自分の夢は何かをつかむ
 
前回お話した“ビジョン(夢)”というものは、言うまでもなく、上は国家から、下はわたしたち一人ひとりに至るまで持たねばならない大事なものです。
 
ここで、あえて「持たねばならぬ」と大上段に構えたのは、私なりの思いがあってのことです。「夢なきところに、目標はあり得ない」と思うからなのです。
 
時折、もう「夢なんて持ってないよ」という方を見かけます。きっと、シャイなのでしょう。また謙遜されているのかもしれません。もし「夢」という言葉が大げさすぎると感じられたなら、どうでしょう「これが、うまくいったらいいな」というフレーズに置き換えてみては? そんな「できたらいいな」を、私は“キャリアビジョン”と呼んでいます。
 
きっとあなたは“キャリアビジョン”を持っている方だと思います。せっかくの「夢」です。ぜひ、実現するようにしましょう。そのためには、学生時代の勉強がそうであったように、仕事もまたしかり。計画を立てて実行に移すことが肝心です。計画を立てることの意義は、いまさら言うまでもないと思います。
 
まずは「夢」ありきです。ただ、それを単なる「白昼夢」で終わらせるのか、それとも一つひとつ実現に向けて実行に移すのか。それはすべて、「あなた」次第です。
 
パーソナル・バリューを洗い出してみる
 
“キャリアビジョン”を追及するには、前もって「わたし」について「ハッキリ」と認識する必要があります。そのためには、まず自分自身の価値観――“パーソナル・バリュー”を見つめ直すことが必要となります。
 
私はこの“パーソナル・バリュー”を見つめ直す必要性を、今から14年ほど前に、アメリカのある会社が人材開発トレーニングの一環として提供していた「トレーナーを養成するプログラム」に参加して初めて知りました。
 
そのころの私はというと、旧チェース・マンハッタン銀行のすご腕人事部長の下で、いわゆる「リストラ(事業の再構築・再配置)」に日々取り組んでいました。そんなある日のことです。その部長に「コウイチ、とてもいい人材開発のプログラムがあるから、あなたもそのコースを受けてトレーナーの資格を取ってきなさい。実は、私も昔、その資格を取ってアメリカで教えていたのよ」と言われたのが、この“パーソナル・バリュー”との出会いでした。
 
その当時は、来る日も来る日も、いつ終わるとも知れないリストラ業務ばかりやらされていた時分です。正直言って、「人材開発のプログラムなんてやる必要あるのかな?」と思う部分もありました。ですが、上司からのせっかくの提案です。また、本来の自分の仕事が「人材開発・採用マネージャー」であることを考え併せると、断る理由がありません。
 
そういう経緯で、私は前述したトレーニング・プログラムに参加したのでした。参加して言われた最初のことが、実は「自分自身のバリューを確認しろ」ということだったというわけです。
 
この“パーソナル・バリュー”とは、簡単に言えば、「自分にとって大切で、かけがえのないもの」という意味です。それを確認するために、こんな手順を踏みます。これは、私が受けたトレーニングを簡略化したものです。まず、自分の心の中を、次のような「四つの窓」と、そこに属す「16の言葉」を通じて覗いてみるのです。これらは、私が受けたトレーニングのテキストから引用したものです。
 
それは、具体的には次のようなものです。
 
(あなたに結果をもたらす言葉の窓)
(1)達成感・名声 (2)認知 (3)経済的安定 (4)富
 
(あなたを奮いたたせてくれる言葉の窓)
(5)出世 (6)冒険・競争 (7)パワー (8)自尊心・忠誠心
 
(愛と友情にあふれた言葉の窓)
(9)愛情・家族のしあわせ (10)自由・喜び (11)健康 (12)友情・誠実・他人への援助
 
(あなたの心に呼びかける言葉の窓)
(13)協調・秩序 (14)精神的調和・宗教心 (15)知恵・創造性・能力開発 (16)責任
 
これらの「四つの窓」と、そこにある「16の言葉」を通じて、あなたにとって大切でかけがえのないものを探し出し、選び取っていくのです。
 
ただし、あなたにとって大切なバリューを選んでいく際には、一つ注意しなければいけないことがあります。それは、「手段と目的を混同しないこと」です。
 
ここで選ぶのは、あくまでも自分が最終目的として獲得したいと思っている大切なものです。例えば、「経済的安定」は自分にとって大事なことだと考えた人が多いと思います。なぜなら、これがなくては「他人への援助」どころか、自分の「家族のしあわせ」も実現することができないからです。
 
実際14年前の私自身も、「分かりきっていることなのに」と思いながらこの「経済的安定」を選んでいました。しかし、もし、あなたにとって「家族の幸せ」こそがいちばん大切だとするならば、それを実現するための「経済的安定」というものは、あくまでも「手段」であって「目的」として獲得したい価値とは言えないのです。
 
上に行くことばかりが幸せではない
 
こうやって、自分にとって大切なものを改めて考えてみると、普段、漠然と思っていた価値が、思いのほか「アイマイ」なものだったことに気づきませんか? 自分が一生懸命獲得しようとしていたこと、例えば「出世」が単なる手段としての価値しかなかったり、あるいは手段だと思っていた「競争」が、よく考えてみると自分にとっては欠かせないものであったり・・・。
 
実は、このプログラムが15年以上前から米国で普及し、高い評価を受けたことには理由があります。90年代の初めのころ、日本はバブル崩壊の直前で、かつてない好景気に浮かれていましたが、米国は反対に不況の真っただ中でした。特に、80年代半ばからおかしくなり始めた金融機関は、中南米に不良債権を抱え、最悪の状態だったのです。
 
そんな不況下では、当然のことながら、それまでの右肩上がりの時代のように、社員に対して次々とポストを提供していくことができません。競争社会の米国では、より良いポストを獲得し収入を上げることが、働くことのモチベーションとなります。ですから、この従来型の動機付けを提供できなくなってしまったときに、モチベーションを下げずにいかに業績を維持するかということが、人事上の課題となっていたのです。
 
そのときに注目を集めたのが、「人それぞれに価値観は違う。それを確認することで、個人のモチベーションを維持していこう」という手法でした。つまり、上に行く人ばかりではなくて下の人も必要となったときに、「上に行くことばかりが幸せではない」ということを確認するためのプログラムを用意したのです。
 
捨てることができないモノとは何かを知る
 
これは、今の日本の状況にもよく当てはまります。そして、これだけ豊かな時代になった今、「なにも上に行くばかりが幸せではない」と私も思うのですが、どうでしょうか?
 
右肩上がりの時代には、「みんな」で、「アイマイ」な価値を漠然と定めて進んでいっても、まあそこそこなんとかなったのです。でも、今日のような状況では、それぞれの「わたし」が「ハッキリ」と価値を見極めて、それぞれに進んでいくしかないのです。
 
「いまさら自分のパーソナル・バリューを確認するなんて・・・」と思われる方も多いかもしれません。でも、騙されたと思って一度やってみてください。普段は考えていないことを、改めて考えるきっかけになるはずです。あるいは、漠然と考えていたことを整理することができるかもしれません。
 
パーソナル・バリューを見直しておくことは、自分自身が変化を求めようとするときに特に重要です。なぜならば、そういうときこそ、「自分にとっていちばん大切なもの」を見失ってしまいがちだからです。そうしてみると、自分にとって絶対に捨て去ることができないモノがあることに自然と気がつきます。
 
それは大事な恋人かもしれませんし、家族かもしれません。自尊心かもしれませんし、また何よりも大切なのは「ミエ」――肩書きや社会的地位かもしれません。“パーソナル・バリュー”として挙げられたものの中で、決して捨てることができないいちばん大切なバリューを“コア・バリュー”と呼ぶことができます。
 
いずれにしても、「これだけは守りたい」というモノが分かれば、反対にそれらを「捨てずに済む方法」や、より「大切にする方法」を見つけることができます。それらをキチンと分かっているあなただからこそ、「手に入れること」や「守ること」ができるわけです。
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