1月27日火曜日、I上、M田と「スナック」という名の居酒屋で晩御飯を食べた。肝臓を休めるために酒はほとんど飲まず、馬鹿話に盛り上がっていた。スナックを出て、御堂筋線に乗り、I上が「M田君。今からどっか行くんやろ?俺ら帰るけど、気使わんと行ってくれ。マグネットか?また明日、報告聞かせてくれ」
「え?えええ?ぼ、ぼく、帰りますけど」
「ええってええって、無理せんでも。マグネットやな。暴れてきてくれ」
「い、いやあ... 帰ろうと思ってるんですけど」
「ええがな。行きたい時は行ったらええねん。なあ、Iちゃん」
「そうやで。金おろすの忘れたって言ってたなあ。カード使うなよ。1万貸したるから」                                
淀屋橋で降り際に万札を手渡し、
「あ、あのぉ... 僕、帰ろうと...」
ドアが閉まり、万札を渡されたM田を乗せた列車は走り去った。
「Iちゃん。彼は行くでしょうか?」
「真面目な人だから、期待に応えてくれるでしょう」
「明日の報告が楽しみやね」
我々は、京阪に乗り換え、私は京橋で降りた。
京橋で少し興味が有る店が有るので、行こうと思い、財布を見ると、万札が無い。M田に貸したのをスッカリ忘れてしまってたので、「あれ?なんで?さっき有ったのに。落としたんかな?」などと頭を抱えていた。
しょうがないので、店の様子だけを探りに行った。「ホクト」という店だ。1Fが「ほくと」という大衆食堂で、2Fが「ホクト」というニューハーフのスナック。「ほくと」の方には、昔、休日にたまに酒Iさんと昼御飯を食べに行ったことがある。その当時は、「ホクト」は無かった。1年ほど前だったかな?一人京橋をブラついていると、ニューハーフ特有のダミ声が聞こえた。声のする方に向かうと、ニューハーフが居た。「有難うねえ。また来てねえ」と客を見送っていた。「こんなところにニューハーフクラブが出来たんだな」「ホクト」については、それからスッカリ忘れていた。
先日、「天国のドア」で店員が「京橋の『ホクト』って店があるんですけど、3ヶ月ほど前に行ってきたんです。ニューハーフさんがやってるスナックです。面白かったですよ。京橋に住んでらっしゃるんだから、一度行ってみたら?」と言ってたので、「おっ。そう言えば」と思い出した。「ホクト」のima_index前に行くと、料金が書いてあった。「チャージ、ショット込みで2千5百円」、安いようだ。店からは、非常に楽しそうな笑い声が聞こえていた。盛り上がってる様子だった。期待出来る店なのかもしれん。店の近くの電柱に身を隠し、人の出入りを見ていると、ニューハーフが出てきた。超美形は居なさそうだな。十三の「ハーフタイム」の潜入レポートが終わったら、次は、この「ホクト」に行こうと思う。
「ホクト」の下調べが終わると、ゲーセンに行き、ギャラクシアンをしてから帰宅。親父が「酒Iさんから電話あったでえ。携帯電話に電話してくれって言ってたよ。泥酔だったわ。僕が出たら、『Hちゃん。何しとるんや?』って、いつもの調子や。はよかけたれよ」
「今から飲みに来いって言うやろな。今日ははよ寝たいから、電話すんのやめとくわ」
先日の「天国のドア」でいただいたナツコママの写真を見ながら煙草をふかし一服。
床につき熟睡した。
2時頃電話が鳴った。
「酒Iさんやろな。しつこいなあ」と、受話器を持ち上げ、そのまま下ろして切った。                                 
すぐに、また電話が鳴った。
「はい」
「ユニチカM田です〜〜〜。Hさんいらっしゃいますか〜〜〜」
泥酔したM田だった。
「おっ!どないしてん?!今、どこ居んの?」
「梅田です〜〜〜」
「え?梅田?おう!もう2時やんけ!何しとんねん?!」
M田にマグネットに行かせたのをスッカリ忘れていた。
「何言ってんですかあ。I上さんと二人でプレッシャーかけるから、あれからマグネット行ったんですよお。今、店出たとこですわ」
「おっ!ほんま行ったんか!いやあ、さすがM田君!期待に応えてくれると思った!」
「大変ですわあ。静菜と二人だったんですよお。僕が店に入ったら、客が一人だけで、しばらくしたら、帰りおったんすよ。それからまた一人来たんですけどねえ。他の店に行く約束してるみたいで、ちょっとだけ飲んで出て行きましたわあ。幕戸も居なかったんです。葬式で福岡に帰ってるでしょ。まだ大阪に戻って来てないんです。そやから、ずっと静菜と二人でしたわ。
しゃあないから、口説いてみたんですけどねえ、駄目でしたわ。一応乳だけもんだりましたわ。あいつ、女性ホルモン打って、女装してますけど、男より女が好きなんです。だから、僕が口説いても、あきませんでしたわ。腰を細く見せるためにコルセットしてんですけどね、とりあえず外したりました。あいつ、変わってますわあ。女装してて、女好きですよ。『オナニーはしはるんでっか?』って聞いたんですけどねえ、半年に1回ぐらいにするらしいっすよ。ズリネタは何か?聞いたら、『私』ですって。自分を見て、シコるらしいっすよ。しかも、女好き。どないなっとんでしょうねえ?ああっ!やっとつかまりました。タクシーつかまったんで、帰りまっさ」
非常に酔ってる様子だったので、二日酔いしてることでしょう。
翌28日、通勤電車を降りると、酒Iさんに会った。
「おはようございます。酒Iさん。昨日はどうしました?すんません。電話いただいてたそうで」
「おう!Hちゃん!昨日、名古屋で飲んで大阪帰ってきたら、11時半ぐらいやったから、Hちゃん探して飲みに行こう思ったんや。マグネットに居ると思って、電話したら、M田が出てきおったがな。あいつ、一人で何しとんねん?M田が『今泉さん居ないっすよ』って言うから、『天国のドアに行ってるな』思って、南に行こうと思ってんけど、『もしかして居ないかもしれん』て思ったから、店に電話したんや。休みやったわ。しゃあないから、Hちゃんち電話したら、お父さん出てきたわ。『飲み歩いて帰ってません』言うてたぞ」
「そんなこと言ってません!」
酒Iさんは、僕がつかまらず、その後どうしたのかは聞いてない。
後ほど聞いてみよう。