アテがはずれた
ミスターTは合コンが好きだ。 そのことをよく知っているBEACHちゃんは、東京に居た頃、ミスターTのために合コンのセッティングをした。学生時代の女友達に合コンを申込んだ。 BEACHちゃんの女友達は、非常に美人で、インテリだそうだ。 4対4で合コンをすることに決まった。 BEACHちゃんは、早速、ミスターTに報告した。 「美人!!!しかも、インテリ!!!BEACHちゃん!これは、男の人選は慎重にしなきゃなんねえぞ。俺とBEACHちゃんがモテなきゃ意味がねえからよお。いかにもモテない男を連れて行こう。そうだなあ... コバ*シだな。あいつは、モテないんだよお。結婚も決まってるしよお。BEACHちゃん。合コン始まったら、すうぐに『コバ*シさん。結婚式の段取りはうまくいってますか?』って聞くんだぞお。早いめにつぶそう。あと一人だなあ... 誰がいいかなあ..中谷だ。あいつ、人の話聞かねえだろ。一人でくだらねえギャグ言ってるじゃねえか。ああいうのは、嫌われるんだよなあ。BEACHちゃん。コバ*シと中谷を誘うぞお。他の奴は駄目だあ」 「分かりました。コバ*シさんに電話しましょう」 内線でコバ*シの部署に電話をした。 アシスタントの女性が出てきて、「コバ*シさん、深刻な顔して外出しましたけど」 「BEACHちゃん。コバ*シ、外出してるんだってよお。深刻な顔して、出てったって言ってたぞお。あいつ、いつも深刻な顔してんだよなあ。どうせ、ただの二日酔いだでえ」 「じゃ、中谷に言っておきましょう。中谷とコバ*シは、隣どうしの部署ですし」 ミスターTは中谷の部署に内線をかけた。 「はい。中谷です... あっ、すいません。エクステリア課です」 「ばあかやろお。いきなり名前名乗ってどおすんだあ」 「あっ、ミスターTさん。どうも」 「どうもじゃねえよ。いい話だあ。感謝しろお」 「なんです?いい話って」 「合コンだ、合コン。感謝しろお」 「い!いきます!」 中谷も合コンが好きである。だが、男同志の飲み会には参加しないらしい。 「感謝しろよお。美人なんだぞお」 「は!はい!絶対行きます!」 「感謝しろお。だあけど、お前とコバ*シは駄目だぞお」 「は?何が駄目なんです?」 「いいんだ、いいんだ。こっちの話だあ。感謝しとけえ」 「はい!感謝します!」 「もっと感謝しろお。もぉっとだあ。中谷。コバ*シにも言っといてくれえ。金曜日だあ。6時半に神田駅に集合だあ。ちゃんとコバ*シも連れてくるんだぞ」 「わ!わかりましたあ!」 「お前とコバ*シだけだぞお。他の奴は駄目だぞお。お前達も駄目なんだあ」 「え?行ったら駄目なんですか?」 「ちいがう!ちがう!お前達は来ていいんだあ。だけど、駄目なんだあ」 「え?え?」 「いいんだ、いいんだ。お前とコバ*シは感謝しとけばいいんだあ」 ミスターT、BEACHちゃん、中谷、コバ*シの4人に決まった。 さて合コン当日、ミスターTとBEACHちゃんは待ち合わせ場所の神田駅に向かった。 「BEACHちゃん。今日は朝までだあ」 「元気ですねえ」 「山芋食ったからなあ。おかわりしたぞお。6杯だあ」 「そんなに食わなくても...」 「だあめだあ、駄目、駄目。気を抜いたら駄目だあ。なんなら、BEACHちゃん、そこのそば屋で山芋食うか?」 「いいです!いいです!僕も元気です。大丈夫です」 二人は、神田駅に着いた。 「BEACHちゃん。美人が二人居るぞお。あと二人はまあまあだな。俺とBEACHちゃんと美人の4人で二次会だな。サタデーナイトフィーバー」 「今日は金曜ですけど」 「だあから、サアタデーって言ってるじゃないかあ」 「フライデーですけど」 「それは、写真雑誌だあ」 待ち合わせ場所には、先に女性4人が来ていた。 BEACHちゃんから聞いていた通り、なかなかの美人が二人。 「BEACHちゃん。中谷とコバ*シ、遅いなあ。こんな美人を待たせるなんて、なんて奴らだあ」 「あっ!来ましたよ!中谷が来ましたよ。あれ?コバ*シを連れてきましたけど」 「あたりめえだあ。コバ*シ連れて来いって言ったんだからよお。え?...あああっっっ!!!あの馬鹿野郎! かっこいい方のコバ*シ連れてるじゃねえかあ!」 中谷は、勘違いして、かっこいい方のコバ*シを連れてきた。 「ミスターTさん。どうしましょう?コバ*シさんじゃなくて、かっこいいコバ*シを連れてきましたよ」 「中谷の馬鹿野郎。なんてことするんだよお。あいつ、ちゃんと感謝してなかったんじゃねえかあ」 今更帰れとは言えないので、かっこいいコバ*シを連れて、居酒屋に行った。 BEACHちゃんは、学生時代の友人の美女と昔話で盛り上がった。 さて、もう一方の美女は、かっこいいコバ*シと親しく飲んでいる。 残る二人の女性は、中谷のしつこいギャグに笑って、3人で盛り上がっていた。 ミスターT。一人。孤独。 周りを見回せば、見回すほど、孤独。 数時間後、神田駅近くのキャバクラに、なぜかミスターTの姿があった。
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