本来の目的じゃなくても


新入社員の頃だっただろうか?もう6〜7年も前の話だ。
ミスターTと二人で飲みに行った帰りに、「I氏。テレクラ行くぜえ」
「テレクラ?」
「いいんだよお。最近はよお、テレクラ業界が下火だからよお、電話かける女の人口よりも、テレクラで電話待ってる男の人口の方が少ねえんだ。簡単に女ひっかかるんだぞお」
「ええって、ええって。会ったこともない子と遊びに行く約束してもしょうがない」
「な〜に言ってんだあ。この時期を待ってたんだぞお。こんなチャンス、なかなか出会わさないぞお。歴史の転換期なんだあ」
結局、京橋のテレクラに連れて行かれた。
暗い路地を歩いて行く。小さいビルの3階だ。
「薄暗いところやなあ」
「いいんだ、いいんだ。こおいうのは、隠れた優良店なんだぞお」
「行ったこと有るの?」
「ねえよ。勘だ、直感。この雰囲気、間違いねえよお」
受付に行き、1時間分の料金を支払った。
ミスターTは、受付の店員に「電話かかってくるんだよなあ」
「ええ。じゃんじゃんかかってきますよ」
「ほおらみろお。人口が逆転したからな。I氏。俺の言った通りだろお」
「俺、興味無いから、お前、女の子と約束したら、適当に行ってや」
「なあに言ってんだあ。お前も、いい女つかまえなきゃ駄目だぞお」
「お客さん。ビデオの貸し出しもしてますよ。部屋にビデオデッキが有りますので、電話を待ってる間に見て下さい」
「な〜んていい店だあ。良心的じゃねえかあ」
「裏ビデオ、1本千円で貸し出しています」
「裏?!裏だってよお。3本貸してくれえ。I氏、お前も借りろお」
「いいって。ビデオ好きじゃないから」
ミスターTは、3千円払い、裏ビデオ3本持って、個室に入った。
私は、ミスターTの隣の部屋だった。
煙草をふかして、ぼお〜〜〜っとしていた。
暇で仕方がない。
15分ほど経った。電話は鳴らない。
ミスターTはどうしてんのかなあ?私は、煙草を消し、部屋を出て、隣のドアをノックした。
「ミスターT。暇やぞ」
「だっ、だめだあ!だめだぞお!」
「何があかんねん?」
私は、ドアを開けた。
下半身丸出しだった。
ズボンとパンツをずらし、右手で自分の一物を握り、左手でビデオのリモコンを操っているミスターTが居た。
「ばあかやろお!駄目だって言ったじゃねえかあ!」
「ごめん!ごめん、ごめん!」
ドアを閉め、部屋に戻った。
煙草に火をつけ、またもやボォ〜〜〜っとしていた。
15分ほど経った。
プルッ!
一瞬、電話のベルが鳴った。
壁ごしに、
「もしもしいっ!!!もしもし!!!もしもし!!!」
ミスターTの叫び声が聞こえた。
「だ.だれだあ?!誰か取ったのかあ?!」
私の背後でドアが開く音がした。
「I氏!お前か!電話取ったのは!」
煙草をふかしている私の姿を見て、
「なあんだ、お前じゃねえのか。他の部屋の奴だな」
「なんだじゃないって!パンツぐらいはいてこいよ!」
「緊急だったんだよお」
下半身丸出しのミスターTは自室に戻った。
さらに15分が経った。電話は鳴らない。ミスターTはどうしてるのかな?私は部屋を出て、「ミスターT。もう帰ろうや」
「だっ!だめだあ!だめだぞお!」
「何があかんねん?」
ドアを開けた。
下半身丸出しで、片手に一物、片手にリモコン。
「まだやってんの。元気やなあ」
「ばっ!ばかやろお! あああっ!!! どこまで見たか分かんなくなったじゃねえかあ!!!」
画面は早送りになっていた。
私は、邪魔してはいけないと思い、部屋に戻った。
15分が経った。やっと1時間が経った。
結局、電話は1本鳴っただけ。
私は、受付のところでミスターTを待った。
なかなか出て来ない。
店員が「お連れさん、出てこないですねえ。お時間過ぎてるんですけど」とミスターTを呼びに行った。
「お客さん!お客さん!時間ですよお!」
ドアをノックする。
「ばっ!ばあかやろお!」
「ど.どうしたんですか?」
「ばっ!ばかやろお!」
「大丈夫ですか?!」
店員はドアを開けた。
やはり、下半身丸出しだった。
「すいません!」、店員はドアを閉めた。
しばらくすると、ミスターTが出てきた。
「よかったよお。3本全部見たぜえ。I氏、こんないいビデオ、なんで借りなかったんだよお」
「なんで、こんなところでオナニーせなあかんねん」
「ばあかやろお。こおいう場所でやるのがいいんだあ。なっ、そうだろ」
店員に同意を求めた。
「だけどよお、全然電話鳴んなかったじゃねえか」
「時間帯が悪かったんです。他の時間だったら、たくさんかかってきますよ。またいらして下さい」
私とミスターTは、店を出た。
「駅まで送るわ」
「いいよ、いいよ」
「じゃ、ここで。俺、家、そっちだし」
「なあに言ってんだあ?一緒に行くよお」
「どこに?」
「お前んちに決まってるだろお」
「なんで?うちに泊まらなくてもいいやん。まだ電車走ってるし」
「ばあかやろお。あれだけシコシコしてたら、疲れるじゃねえか」
「そんなんお前の勝手やんけ」
「いいんだ、いいんだ。気兼ねすることはない」
家で話を聞くと、ビデオ1本につき1発、計3発抜いたらしい。
「ミスターT。シャワー浴びろや。布団汚れるやんけ」
「いいんだ、いいんだ。そんなこと気つかうことはない」
そのまま寝てしまった。
翌朝、早いめに起こして、「ミスターT。シャワー浴びとけよ」
私は、私専用のタオルを使われたくなかったので、新しいタオルを渡した。
「俺の使うなよ、このピンクのやつ。あかんで。お前、こっち使えよ」
別の白いタオルを渡した。
新聞を読みながらミスターTを待った。
母親が「ミスターTさん大丈夫?もう40分もシャワー出しっぱなしよ。倒れてないか見ておいで」
たしかに遅い。心配になり、
「おい。大丈夫か?」、浴室のドアを開けた。
「...」
「なにが?」
「なにがやないで!お前!なんで、俺のタオル使うんや?!」
私のピンク色のタオルで、ミスターTは股間を丁寧にゴシゴシ洗っていた。
ミスターTが上がった後、熱湯を沸かし、そのタオルを熱湯消毒した。

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