ミスターTのライバル
ミスターTにはライバルが居る。 ミスターTのピンサロ仲間のナンちゃんという後輩だ。ミスターT主導で遊びに行 く時は、ミスターT行きつけのピンサロ、ナンちゃん主導で遊びに行く時は、 ナンちゃん行きつけの「七人の小人」というピンサロに行くそうだ。 「七人の小人」は松戸にある。 彼らは、毎週金曜日にピンサロに行くべく集合する。「さあ、今夜は誰の 行きつけの店に行こうか」、松戸の繁華街にミスターTとナンちゃんの「ジャ 〜ンケ〜ンでホ〜イ」と気迫の入った声がこだまする。 ミスターTも気合いが入っているが、ナンちゃんも非常に気合いが入ってい る。なにせ、ナンちゃんのこのピンサロへの愛着は計り知れないほどであ る。会社を休み、平日の昼間に通っているほどだ。お気に入りのおねいさ んが居る。おねいさんにバラの花束を贈呈することもある。 ある日、ミスターTはジャンケンで負けた。ナンちゃんお気に入りの「七人の 小人」に向かった。 「ついてねえなあ。ナ〜ンちゃんとバッティングするんだよなあ」 ナンちゃんとミスターTは指名するおねいさんが同じ。 「ミスターTさん。今回は僕が勝ったんだから、あの子指名しますよ」 「しょうがねえなあ。じゃ、俺は、ナ〜ンちゃんの後でいいよ。ついてね えなあ。俺、待合室で待ってっからよお。早く済ませてくれよお。延長し ちゃ駄目だぞお」 「分かりました。じゃ、先に行かせてもらいます」 「ナ〜ンちゃん。あんまり無茶しちゃ駄目だぞお。あの子、疲れちゃった ら、サービス悪くなるからよお」 「ミスターTさんじゃないんだから、そんな無茶しません」 ミスターTはしぶしぶ待合室で待つ。 「あの野郎。遅いんじゃねえかあ?」 ナンちゃんが楽しんでいる部屋を覗く。 「ああっ!ナ〜ンちゃん!そんなことしちゃ駄目!」 「ミスターTさん!!!なに覗いてるんですかあ!!!」 下半身丸出しのナンちゃんはいきなりの来訪に驚く。 「ばあかやろお。お前が遅いからよお、心配になって来てやったんだよ お。 脳震盪なんか起こしてんじゃねえか心配したんだぞお」 「なんで脳震盪おこすんですか!!!早く出てって下さい!!!」 「あんまり無茶しちゃ駄目だぞお」 ミスターTは待合室に戻る。 しばらくすると、再びナンちゃんが楽しんでいる部屋に行く。 「ナ〜ンちゃん。大丈夫かあ」 「ミスターTさん!!!いい加減にして下さい!!!」 真っ最中のナンちゃんを見て、「ばあかやろお!なんてことしてんだよ お!」 「なんてことじゃないですよ!いちいち覗きに来ないで下さい!」 さてナンちゃんが事を終え、ミスターTの番だ。 「おねいさん。さっきの奴は下手だったでしょ。あ〜んなの駄目だ。俺な んかよお、両手の10本の指ぜ〜んぶ駆使して、あなたにおおいに喜んで いただきますよお」 ナンちゃんの後といえどもたいそう満足したミスターTだが、ナンちゃんに対 する憎しみはつのる一方である。 寮の玄関の黒板に 「ナンちゃん君。お帰りなさい。 七人の大人より」 などとイタズラ書きをしてうっぷんをはらす。 黒澤明監督が亡くなった時は、 「ナンちゃん君。お帰りなさい。 七人の侍より」 などと、ピンサロの名前を知らない人からすると意味不明なメッセージを 書いていた。
|