タカダロンドン

ミスターTにはこだわりがある。クリーニング1つをとっても、こだわりが感
じられる。
ある日、今までに行ったことが無いクリーニング屋に行き、お気に入りの
ミチコ・ロンドンのドレスシャツを出した。
クリーニング屋は、預かった服を間違えて渡さないように、依頼者の名前
を書いた紙を服にとめたり、差し支えのない部分、たとえば、ブランド名
が書かれた襟ネームの部分に油性マジックで依頼者の名前を記入すること
がある。その新規の店は、その襟ネームにマジックで名前を書くタイプだ
った。
ブランド志向、と言っても、ミチコロンドン、ダーバン、アーノルドパー
マーなのだが、自称ブランド志向のミスターTは、シャツを受け取り、家に持
って帰った。
たんすにかけようとビニール袋から出すと、
襟ネームに「ミスターT」と書かれていることに気付いた。
ブランド名ミチコロンドンが見えないではないか!
すぐさま、問題のシャツを持って、クリーニング屋に戻った。
「ばあかやろお!!!俺のミチコロンドンのシャツが台無しじゃねえか!
これじゃ、ミチコロンドンじゃなく、タカダロンドンじゃねえか!...
まあ、そのネーミングは悪かねえが... ばあかやろお!なんてことし
てくれたんだよお!とにかく、弁償しろお!弁償だ、弁償!1万4千円だ
ぞ。三越
で買ったんだからな。そこらの三越じゃねえぞ。日本橋の三越だ。ブルジ
ョアジーだからな」
その後、ミスターTは寮から離れた隣町のクリーニング屋にわざわざ足を運ん
でいる。
「いいんだ、いいんだ。ブランドを大事にする店はいいんだ」

back