公務員とのやりとり

数年前、ミスターTと心斎橋で飲んだ。
酔った我々は、二次会に行こうと、ヨーロッパ通りを歩いていた。
前からヤクザ風のパンチパーマとケバいホステスさん風の女性のカップル
が歩いてきた。
「こんな遅くまで遊んでたら駄目だぞ」
ミスターTの言葉が耳に入った直後、
「何んじゃこら!!!お前、俺の女に何すんじゃ!!!」
何が有ったのか見ていなかった私は、
「どうしたん?!」
「このおっさんがよお、からんでくるんだよ」
顔を真っ赤に大激怒しているパンチパーマに「どうしたんですか?こいつ
が何かしたんですか?」
「この野郎、俺の女の頭ひっぱたきやがったんや」
「ええっ?!ミスターT、お前」
「何言ってんだ。『早く帰れよ。遅くまで遊んでちゃ駄目だぞ』って注意
してやっただけだ」
「おい、こら。頭ひっぱたきやがって」
「ミスターT、お前が悪い。謝れ。すいません。こいつ、酔ってまして」
「すいませんで済むか、こら」
「なあに言ってんだ、お前。公務員のくせに何言ってんだ?お前ら、誰の
金でめし食ってると思ってんだ?俺達が税金払ってるからだぞ。I氏。何
も謝ることはねえ」
「公務員?何言ってんねん?」
「こいつだ、こいつ。なんで、公務員のくせにいい女連れてんだ?誰の金
だと思ってんだ?」
ミスターTが言う公務員とは、どの人をさしているのか、私もヤクザ風のパン
チパーマも分からなかった。
「おい、こら!何訳分からんこと言うとんねん!はよ謝れや!」
「すいません。こいつ、酔ってまして。ほんとにすいません」
「にいちゃん、あんたが謝ることやないんや。こいつに言うとんねん」
「なあに言ってんだあ?お前ら、誰の金でめし食ってると思ってんだ?俺
達が税金払ってやってるからだぞ。その金で、こんないい女連れてよお、
なんで勝手に贅沢するんだよお?」
私は小声で「ミスターT。公務員とちゃう。どう見ても、ヤクザや。とにかく
謝っとけ」
「ばあかやろお。I氏。お前、何酔っ払ってんだ。どう見ても、公務員じ
ゃねえか。俺達の税金で、パーマなんかあてやがってよお」
「なんで、公務員がパンチパーマやねん。頼む。ミスターT、素直に謝ってく
れ」
「ばあかか?お前は、何言ってんだよお?公務員じゃねえか。何考えてん
だよ?俺達の税金でエナメルの靴なんかはきやがってよお。贅沢するんじ
ゃねえよ」
「ミスターT。公務員は白のエナメルなんかはけへん。とにかく謝れ」
「ばあかやろお。金のネックレスなんかしやがってよお。誰の金だと思っ
てんだ?公務員のくせに贅沢なんかしやがってよお」
「どんな公務員やねん?!めちゃくちゃガラ悪いやないか!」、私は思わ
ず大声をあげてしまった。
「お前ら、何ごちゃごちゃぬかしとんねん!まあ、ええわ。ちょお来い
や。お前、ちょお事務所来いや」とミスターTの肩をつかもうとした。
「ばあかやろお。役所なんか開いてねえよ。何時だと思ってんだ?」
「ミスターT。役所やない。事務所や」
「役所じゃねえか。公務員の事務所って役所じゃねえか。4時までだ。こ
の野郎!4時までしか働かえくせに贅沢しやがってよお」
相手は、逆切れしたミスターTに驚いたのか、「うるせい!お前!覚えとけ
よ!」
と女性を連れて、立ち去った。
「なあに考えてんだあ?公務員のくせにいい女連れやがって。俺達の税金
だぞ。勝手に贅沢しやがってよお」
あの時、なぜヤクザが公務員に見えたのか?全く理解出来ない。
パンチパーマ、白のエナメルの靴、金のネックレス、連れてるのは、ホス
テスさん風の美女。
心斎橋に居て、万が一のことが有ってはいけないと思い、ミスターTを無理や
りタクシーに乗せ、北に向かった。
飲み屋に入ると、「公務員のくせによお。なあに考えてんだあ」

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