化粧する理由
8月2日月曜日午後3時、一服しようと、喫煙所に行った。 HKさんがお茶を飲みながら煙草を吹かしていた。 「おう。I氏ちゃん。夏はいいのお。俺は暑いのが好きや。そやけど、これだけ暑いと、営業さんは大変やで。こんな暑い中、外歩いてやな。お客さんところでボロクソ言われてみいな、外歩いて汗かくわ、お客さんところで冷や汗かくわ、絶対風邪ひくで」 「夏が好きなんじゃないんですか?」 「おう大好きや。この暑いのがええやんけ。寒いのは嫌や。冬は嫌いや。風邪ひくやんけ。夏はええで。この暑いのが好きや。クーラーがよお聞いた寒いぐらいの飯屋でやな、熱い鍋なんか食ってみいな。だあ〜〜〜って汗かいてなあ、気持ちええぞお」 「鍋だったら、冬でもいいじゃないですか」 「アホ!冬は、暖房いれてるやんけ。そんな暑い中で鍋なんか食ってみ、汗かいて風邪ひくやんけ。俺は冬嫌いや。夏は、この暑さがいいんや。クーラーがごっつうよお効いた店でやなあ、熱い鍋なんか食って、だあ〜〜〜って汗流すんや」 「風邪ひきませんか?」 「なんでやねん?」 「寒いところで汗かいたら、風邪ひきません?」 「なんで寒いねん?夏やぞ。暑いやんけ」 「店の中は寒いんでしょ?」 「そらそうや。クーラーも効いてへんような店行ってもしゃあないやんけ。 寒いぐらいクーラー効いてる店で熱い鍋食うんや。楽しみやねえ。 おう。I氏ちゃん。夏やぞ。海行けへんのか?」 「今年は、まだ行ってないです」 「おう。海行ってやなあ、女の子ひっかけてこいよ。若い内は楽しまなあかんぞお」 「ははは。ナンパはしないです」 「なんでやねん?女の子と楽しんだらいいやんけ。お前なんか選びたい放題やぞ」 「そんなことないです」 「お前、どんな女の子とやりたいねん?」 「いきなり何を聞くんですか?!」 「ええやんけ。じゃあ、逆に、どんな女の子とやりたくないねん」 「分かりませんよ。HKさんはどうなんですか?どんな女性としたくないんですか?」 「嫁はんかな...」 「寂しいことを言いますねえ」 「だって、相手してくれへんもん。『あなた、煙草臭いですよ。寄らんとって』って言われるわ」 などと話しているところに、経理の女の子が来た。HKさんは、以前経理に居た。その頃の付き合いで、今でも経理と親しくしている。 先日、HKさんは、夫婦で旅行に行き、おまんじゅうをお土産として経理にも配ったそうだ。そのお礼に女の子が来た。 「おう。つまらんもんで。わざわざ有難う」 女の子が一礼して帰って行った。 「I氏ちゃん。女の子って、化粧の匂いが凄いなあ。近くに来たら、すぐ分かるのお。プ〜〜〜ンでいい匂いするもんなあ。なんでや?」 「え?」 「なんで、あんな匂いさせとんねん?」 「化粧してるからでしょ」 「なんで、化粧せなあかんねん?体臭いからか?」 「え?」 「体臭や。女の子は体臭きついんか?」 「知らないですよ」 「だって、そうやんけ。あんな化粧の匂いさせて、体の臭いの消さなあかんねんぞ。臭いんやで」 「臭くなくても、化粧はするでしょ」 「なんでやねん?臭くなかったら、化粧の匂いで消さんでいいやんけ。臭いんやで」 「どこが臭いんですか?」 「そら、お前、あそこしかないやんけえ。下のほうや」 「下のほう?まさか、股のほうですか?」 「アホ!お前、むちゃくちゃ言うのお!もっと下や。足や。足臭いんやで」 「なんでですの?!なんで、足が臭くて、顔に化粧するんですか?!」 「なんでやねん?足に化粧する子居るか?化粧品は、顔に塗るんや。当たり前やんけ。足に化粧する子なんか居れへんて」 「そらそうですけどね」 「だけど、I氏ちゃん。俺ら、煙草吸うやん。やっぱり煙草の匂いしてるはずやで。こういうのも消したほうがいいんやろな、本来ならば」 「そうかもしれませんね」 「じんたんとか食ったほうがいいんかしれんぞ。でも、じんたんの匂いって、嫁はんが、おっさん臭い言うんや。最近の若い男の人は、香水とかつけてるんちゃうんか?」 「つけてる人、結構居ますよ。香水の銘柄とか詳しいですよ。でも、話を聞くと、香水って高いもんなんですねえ」 「そらそうや。そんなもん、安いのつけてやな、顔かぶれてみいな、かゆくてしゃあないで」 「香水は顔につけないでしょ」 「なんでやねん?女の子は化粧品、顔にぬってるやんけ。男の人用も使い方いっしょや。俺も煙草よお吸うからのお、香水つけたほうがいいかもしれんなあ」 「顔にですか?」 「アホ!あんなもん顔につけてどうすんねん!鼻ひん曲がるやんけ」 「え?じゃ、どこにつけるんですか?」 「喉や。喉に決まってるやろ。煙草の匂い消すんやからな。喉チンコに吹きつけたらいいんや」
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