マイケルジョーダンもびっくり
HKさんは非常に気がきく。 壁時計の時間が少しでも狂っていると、自分の腕時計を見ながら直してくれる。 「おっ、また時間狂っとるなあ」 腕時計と時間を合わせる。満足げである。 だが、人間、欲が出てくるものである。 精度だ。 ある日、昼休みのアナウンスと壁時計の秒針が少しずれていることに気付いた。 「おおっ、ちょっとずれとるなあ。めし食ってから直さなあかん」 HKさんは、昼御飯を食べた後に昼寝をする。商談席で数十分の昼寝をする。この日も1時まで寝ていた。 1時のアナウンスが流れ、 「おっ、直そうか」 「どうしたんですか?」 「おう。I氏ちゃん。時計や。ちょっと狂ってるんや」 「そうですかあ?」 「秒や。ちょっと遅いで」 「そんな精度高めなくてもいいじゃないですか」 「あかん!こおいうのは、きっちりしといた方がいいぞ」 「でも、HKさんの腕時計が狂ってたら、どうしようもないですよ」 「おおっ!そうや!どうしたらいいねん?」 「電話で時報聞いたらどうですか?それ以上きっちりしてるのは無いでしょう」 「おっ!お前、頭いいのお!」 HKさんは早速電話で時報を聞いた。 「1時2分6秒!」 電話を切り、時計がかかってる壁に走った。 もちろん、ずれている。電話を切り、壁に走り、ネジを回す間に時間がたっている。時間は止まらないものだ。 「ずれてますよ。だって、聞いてから調整するまでに時間たってますやん」 満足げだったHKさんの顔は引き痙った。 「おおっ!そうや!お前!よお気付いたのお!どないしたらいいねん?」 「電話で聞いて、とにかく早く時計のネジを回すことです」 HKさんは時報を聞いた。 「1時2分50秒!」 受話器を投げ出し、時計に走った。 「まだずれてますよ。もっと早くしないと」 「おお、難しいのお」 「遅いですって。聞いたら、すぐにネジを回すぐらいじゃないと」 「わかった。も一回やってみるわ」 時報を聞き、 「1時3分14秒!」 受話器を投げ、壁に走ろうとした、その時、 椅子が有った。 「あああああっっっっっ!!!!!」 椅子と一緒に倒れた。 「あああああっっっっっ!!!!!」 「大丈夫ですか?!」 「いたたたあ!」 「早く!HKさん!早く!時間が過ぎますよ!」 「おおっ!」 起き上がり、行く手を遮るゴミ箱を蹴飛ばし、壁に突進。 頭上の時計に向かって、ピョ〜〜〜ン。跳んだ。 空中でネジを回して調整しようとしたのだろうか?マイケルジョーダンみたいだった。 だが、ネジをつまめず、着地。 「HKさん!早く早く!」 「おおっ!」 ネジを1時3分14秒に合わせた。 「どうや!」 「ばっちしです!」 だが、今では走ってくれなくなった。 腕時計を見ながら調整している。 「HKさん。腕時計がずれてたら、時間合いませんよ」 「腕時計を先に時報で合わせたんや。だから大丈夫や」 電話を投げ出し、壁に走る姿を見ていた課長が「何してるの?」 「時計合わせてるんですわ。急がんと時間たちますわ」 「腕時計を先に合わせたらいいやん」 知恵をつけられたようだ。 今では、マイケルジョーダンのような豪快なアクションを目にすることは出来ない。 くそっ!いらん知恵つけやがって!
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