楽しい遊び
私はイタズラ小僧だった。この部署に移った当時はHKさんによく怒られ たものだ。 よくやったイタズラは、公衆電話に貼ってあるエッチなシール、売春か出 張ヘルスか知らないが、女子高生やら主婦がどうのこうのというシールを とってきて、そのシールをHKさんの背中に貼っていた。 HKさんはいつもなかなか気付かず背中に5枚ほど貼られたままだった。 そのまま商談していることも有った。トイレなどに行き、誰かから「はっ ちゃん。背中に何貼ってますの?」と笑われ初めて気付く。 その都度、血相を変えて私のところに走って来る。 いきなり私の頭をはたき、「何すんねん!」 「はははっ!気付きましたか」 こんなやり取りを毎日のように繰り返した。 そんなことを繰り返していると、HKさんは非常に注意深くなり、私が目 の前に座っているにもかかわらず、急に振り返って背後を気にするように なった。周りをキョロキョロ見回していた。 しばらくの間、この疑心暗鬼の状態が続いた。商談をしている最中も、後 ろには壁しか無いのに、急に振り向いたり、一緒に電車に乗っている時 も、急に振り向いたり、首を右に左に振り回していた。 また背中に何か貼られていないか心配になるのだろう、両手を背中にまわ し、背中を触っていた。「はっちゃん、背中かゆいんか?」、人に聞かれ ることが度々あった。 私は、このシールを貼るのにもあきてしまい、次は、HKさんが席を外し ている間に椅子に物を置いた。さすがに画鋲は置かなかった。怪我させて はいけないので、机の上にある適当な物を置いた。 席に戻って来て、椅子に座るなり「おっ!なんじゃ、これ?」、立上り、 「こらっ!またお前か!」、頭をはたかれた。 そんなことを繰り返していると、HKさんは注意深くなり、椅子に座る前 に何も置いていないか確認するようになった。 椅子を引き、背中を丸め、座布団の上に何も置かれていないのを確認す る。 だが、そのまま椅子を座る位置に引くのを忘れ、よくころんでいた。 座る部分に後頭部をぶつけ、「あああああっっっっっ!!!!!」と叫ん でいた。 私は、HKさんだけではなく、KDさんにもよくイタズラをした。 KDさんは、よく置き煙草をする。KDさんが居ない間に、シャーペンで プスッと煙草に穴を空けておいた。 戻って来て、煙草をくわえると、「なんじゃ、これ?スカスカやんけ」。 吸っても、煙がフィルターを通る前に穴から出てしまうのだ。 「昔はなあ、ピースいうたら、きつい煙草やったんや。今の若い者は、き つい煙草を好まんからな。どの煙草も、スカスカや。全然吸ってる気分に ならん。時代の流れやのお」といつも納得されていた。 他によくやってたイタズラは、トイレの入り口に勝手に「清掃中」の看板 を置いたりしていた。 また何か新しい遊びが思い付けば、HKさん、KDさんに試してみよう。
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