ウィンナーはアカン
ある日、取引先の☆&さんと二人で飲んでいた。 「I氏ちゃん。HKさんとは飲むの?」 「飲みますよ。面白いでしょ」 「面白い。たしかに面白いけど、わし、体力無いわ」 「体力?」 「いや、この前な、二人で飲んだんや。あの人と飲むの初めてやってん」 「ああ!聞きました。HKさん、☆&さんの家に泊まったんでしょ」 「おお。そうなんや」 「けっこう遅くまで飲んだんですね」 「遅いって言うより早くまでや。朝早くまでや」 「朝?」 「おお。京都に一緒に出張行ったんや。帰りに近くで飲んで、それから二 次会に行ったんや。ごっつう酔ってはったわ。『こりゃ夜中までやな』っ て覚悟したわ。そしたら、やっぱりや。三次会。それだけやないで。あの 人、ごっつう酔ってしもて、三次会終わってからが大惨事や。あの人、毎 週、お休みの日に太極拳習いに行ってはるやん。飲んでる時にその話で盛 り上がったんや。そしたら、『今から練習しに行こ!』言いだしたんや。 夜中の3時やで。かも川の川原でやな、変ちくりんな動きさせられたが な。あんな夜中でも学生さん達が遊んでるんや。ごっつうかっこ悪いで」 「何時までやってたんですか?」 「5時や。3時から2時間、太極拳や。次の日、わし、体痛かったわ。2 時間もやなあ、変ちくりんな動きさせられたんやで。なんかよお知らんけ ど、ゆっくりゆっくり動いてたんや。筋肉はってしもたがな」 「ははは!☆&さんち、宇治だから、5時半頃ですか?ついたのは」 「そうや。それからちょっとだけ寝て、しんどいけど、会社行ったがな。 HKさん、ちゃんと会社出てきおったか?」 「たしか、あの日はちゃんと来てましたよ」 「おっ!そうや!家帰るまでが大変やったんや。タクの運ちゃんにやな、 『ここがツボです』なんて、運転してるところに、首やら肩に指突っ立て てな、運ちゃん『やめて下さい!』言うて、びっくりしとったがな。そし たら、首とか肩だけやないで、まだ首やら肩だったら、肩凝りに効くとか 理由が分かるけどやな、頭に指突っ立てるんや。『頭良くなります』言う て、運ちゃん怒っとったがな、『アホで悪かったのお!』言うて。そした ら、おとなしいなった思ったら、寝とるんよ。わしの家ついて、起こして も、起きへん。しゃあないから、車から引っ張りだして、かついで部屋ま で連れて行ったがな。そやけど、すごいなあ、あの人」 「何がです?」 「あんだけ飲んで、べろんべろんに酔ってたのに、たった1、2時間寝て 起きて、朝ごはん食ってたぞ。嫁はんが朝ごはん出したんや。わしは二日 酔いでよお食わんかったわ。あの人、おかわりしてたぞ。『美味しいです な』言うて。3杯食いおったわ。『しんどありまへんか?』って聞いた ら、変わったこと言うてたなあ。なんかなあ『私、朝ごはんが好きでし て』なんて言うとったぞ。なんでやねん?わし、あの人よお分からんわ」 「他に何か言ってました?」 「おう!変わったこと言うとったわ。嫁はんが出した朝ごはんやけどな、 ウインナーだけは残しおったわ、ごはん3杯も食うくせに。『嫌いででっ か? 』って聞いたんや。そしたらな、男がどうたら女がどうたらって説 明してたわ。なんやよお分からんのや。あげくのはてに、わしに『男好き でっか?』って言うんや。わし、何言うてはるか分かれへんかったわ。し ゃあないから、『HKさん、何を冗談言いますねん』て笑っといたがな。 なんか、わしがウインナー食ってたら、神妙な顔して見てたわ。なんやっ たんやろなあ?」 「健康に気つかってるんでしょ。おそらく。ウインナーとか、合成着色料 とか防腐剤入ってるのは口にしないでしょうね」 「そういうことか!あんなに酒飲むのに、妙なところで慎重なんやな」 「こだわり派ですので」
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