登山を辞めた理由

HKさんは散策が好きだ。休日は近くの山に行き、散策している。
特に山が好きだそうだ。
昔、この会社には登山部が有ったそうだ。HKさんも若い頃に所属してい
た。本格的な山登りをしていたらしい。ロッククライミングのような危険
なこともしていたそうだ。
「今は山登りしないんですか?」
「本格的なのはな。今は軽い山登りはするけどな、若い頃みたいに登山具
そろえて本格的なのはせえへん。もうやめた」
「なんでです?せっかくの」
「もうやめたんや。もらしたんや。汚い話やけどな」
「もらした?え?え?」
「汚い話やけどな、うんこや。汚いでえ」
「うんこ?!」
「登山を続けていく体力は有ったんや。そやけど、かっこ悪いがな。それ
でやめたんや」
「え?なんで、うんこが関係あるんですか?」
「登山の時や。あっ!て思ったら、もれたんや」
「山登ってる時にですか?」
「いや。落ちた時や。崖を登ってたんや。その時、足滑らしてな、そのま
ま地面に叩きつけられたわ。『うわあああっっっ!!!』って落ちたん
や。気ついたら、倒れてたわ。背中とか腰を地面に叩きつけられたんや。
その勢いでもれたんや。俺は気付かんかったわ。だけど、知らん内にブリ
ブリッ!て
出たんちゃうか」
「へえ。大変な目に会ったんですね」
「おう。『大丈夫かあ!』ってみんなが来てくれたんや。俺は気付かんか
ったけど、『HK。お前。うんこもらしてんのちゃうか』って言われたん
や。『くっさあ』って言われたぞ。俺、知らんがな。きばった記憶も無い
もん。たぶん、地面に叩きつけられた衝撃やろな。叩きつけられた時にブ
リブリッ
て出たんやで」
「だけど、そんなもれるぐらいだったら、骨折とかしなかったんですか?
すごい衝撃だったんじゃないですか」
「いや。体は大丈夫や。打ち身だけや」
「運が良かったですね。だって、もらすのは格好悪いですけど、お風呂入
れば済みますやん。骨折とかだったら、大変だったじゃないですか」
「いや。骨折は大丈夫や。だあああああっっっっっ!!!!!て落ちて行
く時って長く感じたぞ。途中で『もうあかん』てあきらめたで」
「そんな高いところから落ちたら、そらそういう気分になりますよね」
「は?高い?何が?」
「崖ですよ」
「おう。高い崖やったわ。今から登って行こうってところや。先に登った
先輩のザイルつかんでやな、2メートルほどやったかな、さあ!今から!
ってところで滑ったんや。ズルッて足滑らしてな。だあああああっっっっ
っ!!!!!て落ちて行ったんや。バアーーーン!!!て地面に叩きつけ
られたわ
。そん時にもれたんやろなあ」
「...叩きつけられたって.. 2メートルでしょ?」
「おう。今からや!って気合い入ってたところや。うんこもらしたからよ
お、せっかく何時間もかかって山まで出かけてよお、そのまま尻洗って、
帰ったがな。会社行ったら行ったで、うんこって言われて笑われるし、も
うやめや。それで、登山やめたんや。ごっつうかっこ悪いぞ」
「そらそうでしょ...」
「でも、あん時は死ぬかと思ったぞ」
「死ぬ訳ないでしょ!」
「アホ!死ぬほど恥ずかしかったぞ」
「なっとく」

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