大阪ファンタジー

たまにHKさんと二人で出張することがある。
新幹線に乗る前に弁当を買う。
新大阪駅の新幹線改札口を通過してから買う。
HKさんは、いつも同じ弁当を買う。
「大阪ファンタジー」
いつも「すいません。大阪ファンタジーちょうだい」
僕は、適当に「カラアゲ弁当」とか「焼き鳥弁当」といった、タイトルで
中身の分かる安いものを買う。
新幹線に乗り、早速弁当を開ける。
「おっ!I氏ちゃん。カラアゲか。カラアゲ好きなんか?」
「いえ、別にそんな訳じゃないんですが。適当です。HKさん。いつもそ
れですね」
「何が?」
「いつもじゃないですか。大阪ファンタジー。美味しいんですか?」
「腹減ってるからのお。俺、めし食うのが楽しみやねん」
「そうですか。その大阪ファンタジーって美味しいですか?いつも、同じ
の買いはるんで」
「おう。うまいで。腹減ってるからのお」
「じゃ、他のでも美味しいんじゃないですか?」
「なんでやねん?」
「いやあ、何かこだわりが有るんですか?大阪ファンタジー」
「ええやんけ。ファンタジーやぞ。演歌みたいやんけ。俺らの時代は、お
前ら若い人と違って、やっぱり演歌やで。大阪ファンタジー... いい
ねえ。哀愁あるねえ」
弁当の中を覗くと、子供が好きそうな味の濃いオカズばかり。色どりもか
わいらしい。
「哀愁ありますか?」
「腹減ってるからな」

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