主任の晴れ舞台

3ヶ月に1度の大会議だった。
工場の物流担当者を集めての大人数の会議。
我々、本社サイドの人間は、物流費用削減の策、ここ近々に行った物流費
削減の実績、経済動向に伴う物流関係の相場等を報告する。
今回、HKさんは、4年がかりで行った宇治、宇治プラスチック工場の外
注構内作業の作業分析、標準作業の設定、人件費・設備費の新設定による
今後予定される物流費用の削減効果を報告した。
この仕事でのHKさんの苦労は計り知れないものだった。
この4月でようやく依託業者との新料金交渉に決着がついた。
新しい単価による費用削減予想額は、年間50772千円!
非常に大きな額である。
HKさんは、胸を張ってこの報告を行った。
「ええ..鳥居運送との料金交渉にも決着がつきまして、新単価を設定し
ました。これによる物流費用削減予想額は... あっ!説明が遅れまし
たけど、この計画の当初の目標は、年間2400万円の削減です。今回の
交渉の結果、新しい単価による削減予想額は...」
もっともドラマチックな部分である。
会議場の誰もが息をのんだ。
「えっと.. 年間507万とんで7万2千円!」
「計画より減っとるやないか!」
「計画で2400万やのに、507万しか出んのか!」
あるいは、
「7万2千円しか出んのか!507万か7万2千円のどっちやねん!」
罵声の応酬!
「いえ!え?あれ?...ああっ!間違えました!...ちょっと間違え
ただけやんか。ええっと...年間削減額は、ええっと...
5077万とんで2千円!」
横に座っていた私は、
「とんでへん、とんでへん」と小声で言っておいた。
金額を言い放ったHKさんの満足気な顔がいまだ目に焼き付いている。
今夜、会議の打ち上げがある。
会議を閉める時に、
「すんません。今夜、お暇な方、近場で一杯やりますんで、是非来て下さ
い。ええっと..5時半になったら、3Fに集まって下さい。定時が5時
半ですんで」
またしても、
「6時や!5時半に帰ってどうすんねん!」
罵声の応酬!
「工場の定時が5時ぐらいでしょ。だから、真ん中とりまして」
社内規則も変えかねん。

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