偽名の電子メール

以前、M田が入社したての頃、彼はUISで電子メールの講習を受けた。
彼は、メールの使い方を教えてもらった後、早速私にメールを打ってき
た。
「講習から帰ると、全然知らない人からメールが入ってます。黒澤明子っ
て名前です。どなたか御存じですか?」
私は全く面識が無い。誰だろうか?
「分からないわ。仕事の関係じゃないの?」、返信した。
「それはないと思います。聞いたことが無い名前です」
「黒澤明子?分かった!偽名やで。黒澤明監督のファンの女の子やで。M
田君の連れで映画ファンは居ないか?」
「なるほど!そういうことか!でも、映画好きな子って誰か分かりません
わ。誰ですかね?」
「返信してみ。しっぽ出しおるで」
「了解。探り入れてみます」
M田は早速、その黒澤明子と名乗る人物に返信した。
「7人の侍好きですか?」
その時たまたま私はUISの人と廊下で話をしていた。
「メールって、偽名使えるの?ペンネームとか」
「なんで?なんで、そんな必要あるんですか?」
「だって、黒澤明子って名乗ってる人居るで。黒澤監督から名前とったん
やろな。本名は分かれへん」
「それ、うちの人です」
「え?」
「本名ですよ。電子メールの講習とかの先生してるんです」
「なにっ?!本名?!しまった!」
詳しく聞くと、黒澤先生はメールの講習の後、教えた人達にメールを打っ
てあげてたそうだ。M田は、先生の名前を覚えてなかったのだ。
M田が、黒澤さんに意味不明なメールを打ってしまう!早く阻止せねば!
私は急いでM田にメールを打った。
「M田君。分かったぞ。黒澤明子さんは、黒澤監督の妹や。監督の妹がた
またまこの会社に勤めてるんや。黒澤映画のことは詳しいよ。何でも聞い
てみなさい」

back