意外な展開
私は新入社員に対しOJT、オン・ザ・ジョブ・トレーニングを行ってい る。実践訓練だ。早く立派な社会人に育って欲しいからだ。 昨年は、S藤が入社したての頃、彼に対し厳しいOJTを行った。 「I氏さん。うちの課のA子さん、奇麗ですねえ」 「おっ、A子か。あいつなあ、めっちゃスケベやで。キスするの好きやね ん。『キスして下さい』って言うてみ。ブチュ〜ってキスしてくるで」 「ほんとですか!」 「ほんまやで。俺なんか、182回キスされたがな」 「頼んでみます!」 しばらくすると、私のところにA子が走ってきた。 「I氏さん!S藤君に何言うたん?!仕事してたら、あの子、いきなり 『キスして下さい』って言うんよ!くちびるとがらせて迫ってきたんよ! 何か変なこと吹き込んだんでしょ!」 「俺、知らないぞお。どうしたんかなあ?5月病やぞ、きっと」 しばらくすると、今度はS藤が来た。 「キスしてくれなかったですよお」 「おかしいなあ。歯槽膿漏になったのかもしれん。じゃ、『お乳もまして 下さい』って言うてみ。あいつ、もまれるの好きなんや。俺なんか、29 6もみさせられたぞ。おかげでけんしょう炎になったわ」 「ほんとですか!」 「おう。だけどな、もみ過ぎるなよ。けんしょう炎になるからな」 「わかりました!」 しばらくすると、A子が走ってきた。 「何か吹き込んだでしょ!」 「何のことかね?」 「S藤君、いきなり両手のばしてきたんよ!私のむねに両手のばしてき て、 『お乳もみたいです』って言うんよ!何吹き込んだの?!」 「俺は知らないぞお。どうしたんかなあ?分かった。花粉症やぞ、きっ と」 しばらくすると、入れ代わりにS藤が来た。 「お乳もましてくれないんです。僕、嫌われてるんですかね?」 「いや、そんなことはない。なんだったら、代わりに俺のをもめ」 「い.いいです。いいです、いいです」 「中途半端だったからかなあ?」 「中途半端?」 「おう。こうなったら、はっきり言うたほうがいいぞ」 「え?なんて言うんですか?」 「『セックスして下さい』、その方が分かりやすいわ」 「そうですよねえ!わかりました!」 しばらくすると、A子が走ってきた。 「もう!いったい何を吹き込んでるの!『セックスしましょう』って言う んよ!両手広げて、抱きつこうとするんよ!変なこと吹き込まないでよ !」 「俺は知らないぞお、何も。それにしても、どうしたんかなあ?ちょっと 心配だなあ。最近、日照りが続いてるからなあ」 入れ代わりにS藤がきた。 「『後で』って言われました」 「なにいっ!!!」 すぐにA子に内線をかけた。けしからん!A子に説教しなければならん! 「あっ、A子さん?I氏です。俺も頼む!」
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