同期 コバ*シとの出会い その1
私は、コバ*シという同期と親しい。 私は新人時代、非常に冷めた人だったので、同期会などにはほとんど参加しなかった。 コバ*シとはほとんど話をしたことが無かった。 ただ「コバ*シは面白い奴だ」、「あいつは豪快だ」といった話をよく耳にしていた。だが、私にはどうでも良かった。非常に冷めていたので。 ある日、酒Iさんが「おう。肇ちゃん。今日飲みに行くぞ。お前も来い」と誘ってくれた。 その飲み会にコバ*シが居た。 「I氏。お前、けっこう飲むらしいやん。今度二人で行こうや」 非常に好感の持てる優しそうな男だ。 「ああ。行こうや」 私達はすぐに打ち解けた。 コバ*シは豪快な飲みっぷりだった。噂に聞いていたが、実物を見ると凄い。 二次会に移った。 コバ*シは終始寝ていた。 飲み過ぎだな。あれだけ飲めば疲れるよ。お開きになり、私は新しい友人コバ*シを起こそうとした。 すると、周りの皆が「I氏!あかん!起こしたらあかん!」 なぜだ?私には言葉の意味が解せなかった。 「え?なんでです?」 「あかん!こいつ、寝て起きたら、暴れるんや。めちゃくちゃ凶暴になる。 何しでかすか分からん。ほっとけ。こいつが起きる前に出るぞ」 私は、先輩達に言われるまま、店を出た。 「いいんですか?」 「いいんや、いいんや。おう、もう一軒行こうや」 酒Iさん達先輩に連れられ、近くのショットバーに行った。 深夜3時頃、そろそろお開きとなった。 心斎橋を歩いていると、もうゴミ収集車が走っていた。 もうこんな時間かあ。かわいい音楽を流して走るゴミ収集車を見ると、 「え?!」 車の後部のステップに、棒をつかんで立っている作業員さんは、なぜかスーツ姿だった。 「ほお。最近じゃ、作業着じゃなくて、スーツなんやな」、感心した。 スーツを着た作業員さんは、片手で車の横の棒を握り、片手にビジネス鞄を持っている。 さすがに「おかしい!」、しかもその作業員さんは、目がとんでいる。 「ひひひいいいっ」、妙な笑い声とともに、車は東の方角に走り過ぎた。 「コバ*シ!コバ*シやんけ!あいつ、何しとんねん!」 酒Iさんの叫び声で気付いた。ゴミ収集の作業員さんではなく、そのスーツマンはコバ*シだったのだ。 「さ.酒Iさん... あ.あいつ...」 「やばい!あいつ、完全に切れとる。逃げよう。つかまったら、朝まで付き合わされる。逃げよう!」 「でも、走ってっちゃいましたよ。すごい奴やなあ」 真っ青の酒Iさんは「アホ!なにのんびりしてんねん!急げ!」、走って行ってしまった。 私は、煙草をふかしながら、ぶらぶら歩き、タクシーを探した。 酒Iさんの忠告が耳に残っていたので、東の方角に走って行ったコバ*シとは逆の西の方角、御堂筋に向かって歩いた。 「I氏!うへへへえ」 誰かに肩をつかまれた。 振り返ると、コバ*シではないか!!! 「そんな馬鹿な... お前!あっち走ってったやんけ!」 「うへへえ」 答えを求めようにも言葉が通じる状態ではなかった。 私は首ねっこをつかまれ、そのまま近くのそば屋に連行された。 「そば食おうそば。やまかけそば食おう。山芋食って、元気つけなあかん」 席につき、注文を取りにくると、コバ*シは、 「鳥なんばん!鳥なんばんくれ!」 「おいおい。やまかけとちゃうんか?」 「鳥なんばんや!はよ持ってきてくれ!」 私は、食欲など無かったので、ざるそばを頼んだ。 鳥なんばんとざるそばが運ばれてきた。 「おばちゃん!何やねん?!これ!俺、山芋食う言うたやん!」 おそらく通常の会話は通用しないと判断した私は、 「コバ*シ。これはな、鳥肉に見えるが、実は山芋や。最近のは見ただけじゃ分からん」 コバ*シは「鳥みたい味するぞ」と言いながら奇麗にたいらげた。 朝方、シラフに戻ったコバ*シと別れ、家に帰った。 電車で帰る気力が無く、タクシーで帰った。 「大変な奴と知り合ってしまった...」 こんな彼との付き合いは、もう8年目に入ろうとしている。
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