電子メールを使い始めた頃


社内専用電子メールが導入されたのは、いつ頃だっただろうか?
数年前に導入されたこのシステム。当時は、使いたくて使いたくて仕方がなかった。
だが、なかなか仕事で利用する機会が無い。どうしても、電話でやり取りしてしまうからだ。
だが、使いたい。我慢が出来ない。
親しい連れにメールをする。特に用は無いのだが。
また伝える話題も特に無い。
「ちんぽ」
悩んだ末の答えである。
すぐに内線をかけ、「見たか?メール送ったぞ。見てくれ」
「なんですの?これ」
「なはは!また送るわ!」
こんなことを続けていると、間違いもおかしてしまう。
井上修一君にメールをした。つもりだった。
「ちん毛」
送ったメールを見たかな?発信状況一覧画面を見る。点滅が消えたら、相手がメールを開いた印だ。
「シュ〜ちゃん。見てへんなあ」
などと嬉しがっていた。
「あれ?」
宛名が、井上修一ではなく、井上T子だ。
「しまった!!!番号間違えた!!!」
メールを取り消す方法が分からない。
その30分後に、偶然だが、井上T子さんと会議が予定されていた。
「どうしよう?!!!」
必死に頭を悩ませた。
マニュアルを開いた。内容変更の方法が記載されていた。
マニュアルを読みながら内容を変更した。
「すいません。間違えました」
でも、これを読んで、「何と間違えたの?」と聞かれるだろう。そうだ。仕事のことでメールをしたことにしよう。
さらに内容変更をした。
「ポリ・ビニル・アルコールの件 輸送実績資料作成中」
とりとめもない内容だった。
顔を引き痙らせていると、
「今泉さん」
井上T子さんが来た。会議だ。
私は、緊張のあまり、いつになくよそよそしい態度だった。
会議が終わり、井上修一君に電話した。
「シュ〜ちゃん!シュ〜ちゃんのせいで、大変なことになったやんかあ!」
「どうしたん?」
「井上違いで『ちん毛』ってメールしたんや。シュ〜ちゃんの名字が井上でなければ、こんなことにならんかったんや!どうしてくれる?!」
「何言うてるんか分かれへん。今から行くわ」
井上修一君に来てもらい、早速取り消し操作をしてもらった。
操作方法を教えてもらい、一安心した。
だが、「今後はこのような間違いを起こさないように」と、必ず宛名を注意するようになった。
ところが、1ヶ月もすると、またもや不注意になる。
福嶋に、とある友人の恋愛動向を伝えるメールを送ったところ、どこでどう間違えたのか、古田さんという女性に送ってしまった。
メールを取り消す前に開かれてしまった。
「今の内容忘れて下さい」と追加してメールをした。
O川違いで、連れのほうではなく、関連会社の社長に、
「おなにー」とメールしてしまった。
この時は、開かれる前に取り消すことが出来た。
また、M田違いで、全然知らないM田さんに「痔」とメールしてしまった。
この時期、私は痔で悩んでいたのだ。
この時は、取り消す前にメールは開かれてしまった。
 
M田 ツヨシ殿
  
   痔
 
        今泉 肇
 
M田さんは理解されたかどうかは分からない。
特におとがめは無かったので、お詫びのメールなどは打たなかった。
社内メール、思わぬ落とし穴がある。操作には細心の注意を払うべきだ。

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