いっしょに診察

明日は病院で検査を受ける。
肛門だ。豊島肛門科で診察を受ける。
先日、寝冷え、便秘が原因だったのか、肛門の一部が欝血した。血管中の
流れが止まり、滞留した血液が固まってしまった。          
      
血栓性外痔核だ。
医者からは「坐薬と飲み薬出しとくわ。1週間続けてみなさい。おそらく
薬で治るわ。1週間後に検査するから、8日に来て下さい。血が固まった
まま    
だったら、手術な。心配いらんよ。手術って言っても、血の固まり取るだ
けだから。筋肉の部分は関係無いし。じゃ、来週来なさい」と言われた。
      
明日8日、血が滞留しているかどうか調べてもらう。
今は痛みは無くなった。感触だが、おそらく手術は免れるだろう。
昼休み、酒iさんが来た。
「おう。I氏ちゃん。豊島行けへんのか?」
「僕は明日です」
「おっ!何時に行くねん?」
「昼前ですねえ。11時から11時半頃に行くつもりです」
「俺もや!一緒に行こうや!」
酒iさんの症状は、私のとは異なる。
非常にかゆいらしい。
豊島先生から、「酒iさん。あなた、お尻をどんな感じで拭いてるの?肛
門が荒れてるなあ。あんまりゴシゴシ拭いたら駄目です。お風呂で洗う時
はどうしてるの?」と聞かれたそうだ。
「ザラザラの垢取りのナイロンタオルでゴシゴシこすってるんですが」
「酒iさん。そんなことしたら、肛門が荒れるよ。お風呂で洗う時は、指
に石鹸をつけて、優しく洗いなさい」
「うんこついてたら嫌ですので」
「お湯と石鹸で十分とれます」
「あのお、荒れてるだけですよね?すぐに治りますよね?」
「こんなに荒れてるからねえ、完治するには1年はかかるなあ。とりあえ
ず、塗り薬を出しておきます。薬を続けてみて、それでもかゆい場合は来
て下さい」
酒iさんは渡された薬を続けて、かゆみがおさまったらしい。ところが、
薬をやめてしばらくすると、またかゆくなってきたそうだ。再度豊島先生
に診てもらうと、「おかしいなあ。もしかすると、ウイルスかもしれんな
あ。もう少し薬を続けてみて、薬をやめてからかゆくなったら、もう一度
来て下さい」と言われたそうだ。
薬をやめてしばらくすると、やはりかゆくなってきたそうだ。
ということは、ウイルスの可能性が有るわけだ。
「I氏ちゃん。明日、11時半に一緒に行こうや」
「いやあ、待ち合わせするのも面倒ですし、適当にばらばらに行きましょ
う。待合室で会うでしょうし」
「なんでやねん!一緒に行こうや。京橋で待ち合わせして」
「病院の待合室で会いましょう」
「なんでやねん!いいやないか!一緒に行こうや」
私は、なんとしても酒iさんより先に診察を受けたかった。      
     
酒iさんより診察が後だと、酒iさんの肛門に突っ込まれた器具が、私の
肛門に突っ込まれる可能性が有るからだ。
酒iさんの症状がウイルスによるものだとしたら、そのウイルスが器具を
通じて感染するかもしれない。仕事がら私は1日中デスクに座っているこ
とが多い。肛門がかゆかったら... 仕事どころではないだろう。
なんとしても、酒iさんより先に診察カードを出さなければならない。
「なっ、京橋駅に11時半。なっ」
「酒iさん... 何か企んでません?」
「なんも企んでへんて」
「僕より先に診察受けよう思ってません?」
「なんで分かってん?」
「やっぱり...」
「ええやないか」
「肛門に突っ込む器具通して、僕の肛門もかゆくなることを期待してるで
しょう?」
「なんで分かってん?ええやないか!俺だけかゆいの寂しいやんけ」
「僕がかゆくなってもしょうがないでしょう!」
「寂しいこと言うなよお。かゆいんやあ。なっ、I氏ちゃん。かゆくなっ
てくれ。頼む」
「嫌です。明日は、適当に行きますので、待合室で会いましょう」
「しゃあないなあ。じゃ、11時半に行くわ」
11時半に行くなんて言葉信じていいものだろうか?
私に11時半と言いながら、11時15分頃に入り、私より先に診察券を
出すつもりだろう。私は、11時には入る。
「酒iさん。もう一つ言っときますけど」
「なんやねん?」
「僕の診察中に覗くのやめて下さいよ」
「なんでバレてん?」
「何考えてんですかあ!子供じゃないんだから!」
「ええやないか!見るだけや」
「見なくてよろしい。とにかく、明日はお互い診察を受けに行くんですか
らね、おとなしくしましょう」
「寂しいやんけ」
明日は、やはり10時半には入ろう。私の診察中に何をしでかすか分から
ない。
今夜は、朝方まで飲もうと誘われているが、出来るだけ早いめに帰り、寝
坊しないようにしなければならん。

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