真人間宣言
4月27日火曜日、昨夜は女性達と飲みに行った。 以前、F嶋の取引先の女の子とその子の連れと合コンをしたことがある。 F嶋の取引先の子は、M橋さんという23歳の女の子。以前の合コンで は、席が遠く、ほとんど話をすることが出来なかった。 非常にお洒落で、黒いスーツ姿だった。離れた席から目を向けると、私が 以前付き合っていた女性と似た子が居る。服装、顔、非常によく似てい る。それがM橋さんだった。 昨夜は、男性はF嶋、栗生、女性はM橋さんとその友達2人。女性は、3 人ともなかなか奇麗な子達だった。3人とも彼氏が居ると聞いていた。 私は、以前付き合っていた女性に似ているM橋さんに会えるのが楽しみだ った。M橋さんには、非常に仲の良い彼氏が居るので、口説こうなどとい う下心は全く無かった。ただ、話をするだけで良かった。懐かしいものを 感じるだけで良かった。 夕方、F嶋と二人で会社を出て、待ち合わせ場所に向かった。ソニータワ ーの前で待ち合わせをした。 我々は早く着き、しばらく待った。 F嶋が「よっ、お疲れえ」、見ると、女性が二人、笑顔で立っていた。 「こんにちは。お久しぶりです」 私は、必死に記憶を辿った。「どなたかしら?」 なかなか思い出せない。それに、私が以前付き合っていた女性に似ている 子が居ない。 F嶋が「M橋さん。もう一人の子は?」、「もうすぐ来る。さっき電話か かってきた」 M橋さん?! こんな感じだったっけ??? F嶋がM橋さんと呼ぶその子は、私が以前付き合っていた女性とは全く似 ても似つかない子だった。 そのM橋さんなる子は、なかなかの美人だが、私が付き合っていた美女と は、またタイプの違う美人だ。 「F嶋、M橋さんか?あの子」 「そうです。昔の彼女に似てます?」 「全然違う。しまったあ...前に飲んだ時、酔ってたから、何か勘違い してしもた 思い出すと、以前飲んだ時は黒のスーツを着てた。私が付き合っていた子 も、よく黒の上下を着ていた。 ただそれだけだったのだ。 つまり、服装が変わると、別にどこも似ていなかったのだ! 白の上下を着たM橋さんに「あっ、ども、お久しぶりです」、目が泳いで しまった。 遅れて来る二人は店で待つことにして、我々4人は先に店に入った。 心斎橋のチャーリーブラウンというこ洒落た店だ。 M橋さんは私の横に座ってくれた。F嶋が気遣って、M橋さんに頼んでく れてたのだろう。「I氏さんの昔の彼女に似てるって言うてたで。一緒に お話してあげて」 私は、横に座っている昔の彼女とは全く似ていない女性と何を話していい か分からなくなった。不注意が招いた勘違いのせいで、混乱してしまっ た。 また別のタイプの美人のM橋さんとお開きになるまで話していた。 彼女の恋愛論、彼氏との話などを聞いていた。 23歳の彼女の話は、非常に新鮮だった。私も、若い頃は、それなりに恋 愛に力を注いだものだ。彼女の話は、何か忘れていたものを思い出させて くれるものだった。久しぶりに、彼女を作りたいとまで思った。 気付くと、私は、M橋さんに「師匠!これからは真人間になります!師 匠、今日は有難う!結婚して、子供が出来たら、家族そろって、師匠にご 挨拶に伺います!」 M橋さんは目を見開いていた。 飲み会は遅くまで続いた。 実を言うと、一次会が終わった後に一人で、月曜日に行った裸の王様とい うニューハーフクラブにこっそり行くつもりだった。蔵間かぐやちゃんに 会いに行きましょう、などとこっそりもくろんでいた。 M橋さんの若々しい話を聞いてる内に、「師匠!ニューハーフはやめとき ます!」などと、相手には訳が分からないことを言ってしまった。 さらに瞳孔が開いた。 にもかかわらず、「もう二度とニューハーフクラブは行きません!蔵間か ぐやちゃんに会いになど行きません!」、さらに言い放っていた。 11時頃、お開きとなった。 F嶋と二人で森之宮まで歩き、そこから電車で帰った。 家に着き、「今日はいい話を聞いたなあ。これからは真人間になろう」と 清い気持ちのまま吸い込まれるように眠りについた。 今朝、起きて、「今日から生まれ変わった気分で、真人間になろう」と 清々しい気分で出勤の途についた。 会社に着き、いつもなら、濃いめのコーヒーを砂糖を入れずに飲むのだ が、今朝はカルピスウォーターだ。爽やかではないか。 清涼飲料を飲みながら資料に目を通していると、 「I氏さん。F元さんから電話です」 受話器をとり、 「はい!お電話かわりました!」、歯切れ良く、はきはきと。 「おっ!師匠!先日行かれたそうじゃないっすか!夢の世界!」 「夢の世界?」 「酒Iさんから聞きましたよ。裸の王様。めちゃくちゃ良かったって言っ てましたよ」 「おおっ!裸の王様!最高!あれは最高やぞ。特にな、蔵間かぐやちゃん てすっごい美人が居るんや。この子は最高やぞ」 「いいっすねえ!ちょっと、今度行きましょうよ!」 「当たり前やがな。ゴールデンウイーク明けたら、そっこう行こうや」 「なんやったら、あさっての飲み会の後に行きましょうよ」 「いいねえ!あっ!そやけど、二次会とか有ったら、ちょっとしんどいか もしれんぞ。一次会の様子見て考えよう。とにかく、近々に行こうや」 「いいっすねえ!楽しみだわあ」 笑顔で電話を切った。 直後に、「I氏さん。酒Iさんから電話です」 すでに爽やかさは無くなっていた。 「あい。どないしました?」 「おう!肇ちゃん!この前の裸の王様!最高!お前、いつ空いてんねん ?」 「30日以外ですわ」 「しゃあないなあ。連休明けてからやな。はよ行かなあかん。あの元ジャ ックアンドベティに居た子。あれは、最高!」 「あの子も良かったじゃないですか。蔵間かぐやちゃん」 「おおっ!あの子なあ、あれは最高やあ。ああっ!!!裸の王様!!!は よ行かなあかん」 さらに笑顔で電話を切った。 向かいに座ってるHK主任さんが、 「おう、飲み会か」 「そうです」 「女か?いいのお、若い奴は」 「オカマです」 「オカマ?」 「女よりいいです」 私は、明日から真人間になります。
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