ゲーセン回顧録

凄まじい人生を送っている私、学生時代はゲーマーだった。
理科系の大学の周りにはたくさんのゲームセンターがある。理科系の人達
はゲームが好きで、しかも抜群にうまい。彼らは、得点に金をかけてい
た。
私は、文系の学生だったが、ゲームに関しては、縦スクロールのシューテ
ィング、ブロック系、陣取り系のゲームは子供の頃から人に負けたことが
無い。ある日、バイトしながら、「だるいのお。たかが1万稼ぐのに、な
んでこんなしんどい思いせなあかんねん」と不満がつのってきた。
測量のバイトだ。その日は、社長と二人で貯水池の測量をしていた。
「やめよ。こんなおもんない仕事やめや」、決心した。
測量用のメジャーを伸ばし、草むらに隠しておいた。
うまく社長の足が引っ掛かり、そのまま「あああっっっ!!!」、叫びな
がら社長は貯水池に吸い込まれていった。真冬だった。
「社長。俺、やめまっさ。バイト料は後日取りに行きます」
家に帰り、新たな金儲けを考えた。
ゲーム!自分の才能を生かせて、荒稼ぎ出来るのはゲームしかない!
車をとばし、カモになるゲーマーが集まっているゲーセン街を探した。
大阪工業大学の周りのゲーセン街。ゲーマー達が1ゲーム千円で競い合っ
ていた。
早速、勝負を挑んだ。
「すんません。混ぜてもらえませんか?」
「ええで。そのかわり、点低かったら、千円やで」
負ける訳が無かった。自信が有った。
「千円???えらいレート低いな。ヘタレみたいなこと言わんとって下さ
いよ。1万でいきましょうや」
相手は鼻息が荒らくなった。うまく自尊心を傷つけた。
「1万取られてもええんやな」
勝負に乗ってきた。
結果は、もちろん私の圧勝。
それから数ヶ月、バイトをせず、ゲーセン荒らしをしていた。
毎日、ゲーマーを見つけては、数万づつ巻き上げた。
さらに連れのゲーマーを誘い、二人で「SEC」というグループを作り、
稼ぎまくった。
なぜSECかと言うと、我々は必ずハイスコアーを出すので、ゲームが終
わると、3文字書き込めた。普通は「H.I」などイニシャルを入れるの
だが、頭の悪い連れは、「SEX」と書き込もうとして、間の違えて「S
EC」と書き込んだのだ。
「お前!アホか!Xや!Cとちゃう!」
「ええやないか!SEXやったら、モロやんけ。SECやったら、何か分
からんところが奥ゆかしいやんけ」
気付くと、ゲーマーの間で我々はセックと呼ばれるようになっていた。
我々は、稼いでは、朝まで遊び、毎夜毎夜、湯水のごとく金を使った。
そんな私、今では超貧乏。貧乏に慣れた。そして、染まった。シケシケ
だ。
ところが、最近、転機が訪れた。
給料カット。
「おいおい。さらに貧乏かよお。学生時代は荒稼ぎしてたのによお。いい
加減にしてくれよ。 ...そうや、またゲーマーに戻ろう。当時は天才
と呼ばれた俺や。今でも古いゲームなら、人に負けへん」
思い立った私は、京橋のゲーセンに走った。
大きいゲーセンだと、古いゲームが無いので、シケたゲーセンに行った。
ボルフィードという陣取りゲームをしながら対戦相手を待った。
5時間。ゲーム機に5枚目の百円を入れ、時計を見た。ゲーセンに入って
から5時間経っていた。
誰も来ない。
後ろで酔っ払いが片手にチューハイを持ち、私が各面を最高ボーナス点で
クリアするごとに、「おおお!」とうなっているだけだ。
「こりゃ、あかんわ。酔っ払い喜ばせても、金にならん」
ゲーセンを出た。
新たな金儲けを考える意欲も沸かず、
屁こいて、寝た。

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