あみだくじ その1
1月22日金曜日、いつにも増して激しい夜だった。 酒I、F元、真K、WZ、I(当人)という5人で飲みに行った。 一次会は、皆で本町の中華料理屋で飲み、二次会は各人バラバラで一人づつ異なる店で飲むという計画だった。 各人割り当ての店は、昼間にあみだくじにて決定。 酒I マグネット(我々のたまり場。ニューハーフのスナック) F元 モンスターハウス(ギャグ系のニューハーフクラブ) 真K 83(熟年ホモ専門 真Kには「美人ニューハーフクラブやで」と吹き込んでいた) WZ リバティー又は贋作淑女(女装バー) I(当人) ミックスルーム(変態が集まる店) 終業後、5人で中華料理屋で飲みながら馬鹿話に盛り上がり、9時45分 「そろそろ行きましょうか」と、5人で1台のタクシーに乗る。梅田に着き、まず真Kを83に見送った。彼には、「飲み屋に入る時の挨拶があるんや。股間の前に両手で三角形を作り『メコンデルタ!』と叫ぶ、これが礼儀や」と吹き込んでおいた。 真Kは「いや〜〜〜、ラッキーですわあ。美人ニューハーフでしょ。最高っすよお」、意気揚々とドアを開け、「メコンデルタ!!!」、非常に力強かった。 次にF元をモンスターハウスに連れて行った。ここは、本当にこ当りなので、特に抵抗無く入って行った。 WZは、「リバティーの道は分かりますんで、適当に行ってきます」と東通り商店街を歩いて行った。 残った、私と酒Iさんは、ミックスルームに向かった。そこは、私の割り当てだ。変態ばかりが集まる堂山でも有名な店。観念して、ドアを開けると、身長190cmほどの金髪、ミニスカ・ボディコンの大男が立ちはだかった。「いらっしゃ〜〜〜い。せっかくで、ごめんなんだけど、満員で座るところ無いんです」 助かった〜〜〜、胸を撫で下ろした。満員で入れなかった。私は食あたりをしていたので、酒を飲んでなかったため、シラフだった。心から「助かった〜〜〜」と思った。私は、どの店に行けばいいか、酒Iさんと相談した。「M2でもいいですけど、まだ店が盛り上がる時間じゃないですね」、「今まで行ったこと無いとこ行けよ。どっか無いんか?」、「NEPOって店があるんですけど、行ったこと無いです」私はNEPOに行った。私が店に入るのを確認した酒Iさんはマグネットに向かった。カウンター席に座り、「ジントニック。ジンはほとんど入れんとって下さい 。食あたりで、酒飲めないんで」、薄いジントニックを頼み、ニューハーフのママ、ホモのバーテンと3人で話をしながら軽く飲んでると、40代くらいの女性客が入ってきた。 「レズだ!」、その女性の気をつかってない服装、ショートカット、男っぽい表情から直感した。彼女は、私の横に座り、しばらくするとコミュニケーションをはかってきた。「にいさん、何の趣味なん?ホモ?SM?足?」 「足???」 「足フェチやん。足じゃなかったら、う〜〜〜ん?ホモでしょ?」 「いえ。ただのノンケです。特にこれと言った趣味は。なにしろ無趣味なもので」レズのチエさんは、非常にSM業界に精通していて、いろいろな話を聞かせてくれた。今度、機会を見つけて、ソフトにSMバー4軒をはしごして案内してもらうことになった。非常に楽しみだ。チエさんから一流女王様とは、どういった過程で生まれるのか、理論的な講義を聞いていると、客が二人入ってきた。とあるSMの店の女王様とその店の客のM男だった。女王様は20代後半、M男は50代半ばといったところだろうか。ママが「今日もたたかれたりしたん?」とM男に聞くと、彼は黙って頷いていた。その横から「こんな奴ねえ、素手でしばいたら、手が汚れんだよお。そこら辺の鞭か何かで充分や」と女王様。こちらに飛び火するんじゃないか、とビビッた。女王様が「おにいさん」と話しかけてきた時、「あっ!はいはい!」と応えながらグラスを倒してしまった。割れたグラスを拾い、おしぼりでカウンターを拭きながら「すんません。すんません」と百回ほど謝ってしまった。意外と、女王様は、私やチエさんには普通に会話してきた。ただし、目つきは鋭かった。非常に厳しい顔つきだ。1時間半ほど居ただろうか?「そろそろ出ますわ」とお会計をして、「チエさん。今度頼みますわ。いつでも都合の良い日を言って下さい。電話待ってます」と挨拶をして、NEPOを後にした。 私は、酒Iさんが居るマグネットに向かった。 店に入ると、幕戸(ママ)が「I(当人)君!遅いやん!」、「へ?」、カウンターには酒Iさん、酒Iさんに肩を抱かれてる女装男、ごく一般的なサラリーマンぽい客の3人が座っていた。一般のノンケっぽい客は、シュンさんという40前後の感じの良いエリートサラリーマン風の客で、「君、酒Iちゃんの友達?もっと早く来てくれよ。俺一人でどないしようか?顔引き痙ったよ」酒Iさんを見ると、スッキリした表情だった。「おっさん!何してたんですか?!」幕戸が「酒Iちゃん。この子(女装男)にくわえてもらっててん。ねっ。酒Iちゃん。しかも、あ〜た、生よ、生。スッキリしたでしょ?生フェラ」「俺が、店入ったら、いきなりくわえられてっから、『おいおい』ってどうしようか焦ったよ」とシュンさん。「酒Iさん!何しとるんですか?!」 「いやあ〜〜、I(当人)ちゃん。最高。ああ〜〜〜、もう最高。いいねえ」 心は天国に行ってしまってる様子だった。 「I(当人)ちゃんもしてもらえよお」 「いいです。立たないですから」 「そやなあ、I(当人)ちゃん、立たんもんなあ」 (立っても、しないっつうのに!)と思いながら、「ジントニックちょうだい。酒ほとんど入れないでね。腹こわしてるから」と酒を頼み、シュンさん、酒Iさん、女装男、私と並んで飲んでいた。 しばらくすると、「未完性」という腐った店のポーラというママ(オカマ)が、シケたコートに身を包んだ中年親父を連れて入って来た。ポーラは、笑うに笑えない低レベルな末成由美レベルのギャグを連発。この業界では幕戸の先輩ということもあり、幕戸と二人で愛想笑いをしていた。シケた親父は、しばらくモジモジして黙っていると思うと、「うぇへへ〜〜〜」とポーラの両腕を掴み、「おにいちゃん。ほら。ほら」と、顎でポーラの股間をさす。 「え?え?」と、どうしていいか分からない私に、「おにいちゃん。ほら。チンポ。チンポつかんで。ほら」と甲高い声で更に話しかけてきた。なにせシラフだった私は、恐怖のあまり、声にならない声で「あ.. いえ..」、はがいじめにされてるポーラが「こら!ええ加減にせい!」と一喝。シケシケじじいは縮みあがり、悪さをやめた。「そろそろ店に戻るわ」と、しばらくするとポーラは、変態じじいを残して帰って行ってしまった。私は、極力、じじいの方に顔を向けないようにしていた。 シュンさんに「ノンケですか?」、「そう。特に変態の気は無い。変わった店が好きで、いろいろ探してる」、急に親近感が沸いた。 シュンさんのスタートは、大スポだったそうだ。「変わった店が無いかな?」と大スポの広告を見ていると、SMスナックの広告を見つけ、そのSMス ナックに行き、その店で「どこか変わった店無いですか?」と他の店を紹介してもらい、私の「夜の笑っていいとも」と同様、いろいろな店に行き、マグネットに流れ着いたそうだ。シュンさんが行った変わった店で「くだん」というのがある。場所は太融寺。ジャンルは、「死体・殺人フェチ」。死体の写真を見ながら酒を飲む店らしい。「そう言えば、M2(変態バー)の大崎さん(マスター)が、『インターネット見てたら、死体フェチの広告があってねえ、人を殺したい人、死体の写真を見ながらお酒を飲みましょうってのがあったよ。たしか[くだん]ていったかなあ。梅田にあるみたい。僕は、さすがに恐くて行ってないけどね』と言ってたなあ」と思い出した。変態Mandホモの大崎さんでさえ恐がった店に、ノンケのシュンさんは行ったのだ。ただ者ではないか、ただのアホだ。おそらく、後者だろう。「どんな感じでした?」「酒飲んでたらねえ、ママさんが『これでも見たら?』ってアルバム見せてくれるんや。見たら、死体の写真。『こんなん見て、どないせえ?!』っちゅうねん。他の客見たら、みんな、写真見て黙って飲んでるんや。俺、どないしていいか分かれへんかったわ」 どないしていいか分からんとこに敢えて行ってるくせに。 「ママが『もっときつい店探してるんだったら、紹介するよ』って言うんや。死体の生写真がそろってる店らしいわ。ああいうマニアは、新聞とかマスコミで使われた写真より生写真のほうが興奮するらしいな。さすがに、そこには行かんかったけどな」 シュンさんが行った他のいくつかの店を教えてもらった。もちろん、手帳に控えておいた。 さて、酒Iさんに目をやると、相変わらずスッキリした表情で、女装男の肩を抱いていた。 「飲んでくらはい。グッといってよ」と女装男に酒を薦める酒Iさん。 「ごめん。車で来てるから、飲めないの」 「飲んだら、乗るぞ!」、訳の分からないことを叫ぶ酒Iさんに圧倒され、女装男は飲まされた。マグネットに着いてから1時間ほど経っただろうか?F元と真Kが来た。彼らはモンスターハウスで合流したらしい。 二人が来て、すぐ後に飯場の親方風の親父が入って来た。男好きのとび職の親父だった。カウンターの横の店の奥まったテーブルに女装男を連れて、二人で座った。幕戸が「F元ちゃん。あんたも行ってきなさい」と、F元の上半身を裸にさせ、そのテーブルに送り込んだ。 酒Iさんは「俺、ちょっと違う店行ってくるわ」と出て行った。 私とシュンさんは、F元達のテーブルに非常に危ない気配を感じたので、あえて目を向けなかった。シュンさんと飲みながら情報交換していると、テーブルの方向から 「オオオォォォォォ!!!!!ジーーーザス!!!!!」とF元の叫び声。恐る恐るその方向に目をやると、とび職親父が女装男をなめまわし、女装男がF元の股間をズボンの上から握っているではないか。「シュンさん... やばいっすね」、「I(当人)君。見たら駄目」二人うつむいて、グラスを傾けた。F元達の反対側では、全裸の真Kが幕戸に鞭打たれていた。たまりかねたF元が、股間を抑えながら「真K!!!てめえ!!!交代だ!交代!」と飛んできた。「勘弁して下さい!僕、駄目です!I(当人)さん!助けて!」「真K!てめえ!鞭打たれてんだから一緒じゃねえか!代われ!」シュンさんと私は、ただただ小さくうつむくしかなかった。抵抗する全裸の真Kをとび職親父と女装男のテーブルになんとか放り込んだF元は我々の間に座り、「どうなってんですか?!世の中イカれちゃってるよ。I(当人)さん!助けて下さいよ!」「いやぁぁぁ... シュンさんと話に花が咲き... ついつい。ね。シュンさん」「ああ」 我々は、F元の目を見ることが出来なかった。 真Kが放り込まれ、数分経った。 「F元ちゃん。真K、大丈夫?」 「I(当人)さん。見たら駄目です。見たら最後です」 「I(当人)君。F元君の言う通りだ。見た者が、次のえじきだ。振り向いてはならん」 「シュンさん。真Kが行ってからだいぶ時間経ちますよ。それに、妙に静かですよ」 「そう言えば... さっきから静かだなあ。どうなってんだ?」 我々3人は、恐る恐るテーブルに目をやった。 女装男が真込のチンポを握り、真Kが女装男のチンポを握り、お互いシコりあっていた。とび職親父の「そう。そこそこ」、「君。もうちょっと上だ」という指導の下、二人でシコりあっていた。「こうですか?」などと、大馬鹿者は女装男のチンポをしごいていた。 「ほっときましょう。ああいう奴はほっときましょう。射殺ものだな」とのF元の言葉に我々は、テーブルを無視することにした。しばらく3人で飲んでると、「あああっっっ!!!もう駄目!!!これ以上は!!!」と股間を両手で抑えた全裸の真Kが飛んできた。「おい!どうしたんや?!」 「これ以上やったら、出ます!もうビンビンです!」 後ろからとび職親父が「どうしたの?出したらいいやん」 「駄目です!こんなところで出したら恥ずかしいっすよ!」 「いいのよいいのよ、恥ずかしがらなくても。出していい。戻っといでよ」 なんと、女装男にシゴかれ、ビンビンに勃起してしまい、しかも射精しそうになり、逃げてきたという。 「お前... ほんと、馬鹿か...」 その後ろで、女装男は、イッちゃった。「私、スッキリしたしい、そろそろ帰る。今日は有難うね」 帰って行った... 出す物出して。 「おい!おにいちゃん。こっち座って一緒に飲もうや」、F元が指名された。しょうがなしに真Kを連れて、とび職親父の元に戻って行った。後で聞いたのだが、とびのおっさんは、F元と真Kに「なぜか男が好きか?」という大問題について明確な答を出したそうだ。 「立つからや。男はチンポが立つから好きや。女、立てへんから、嫌いや」 「女、立たない」って、立つ物ついてないやん。そんな反論が出来ないほど明確に言い切ったそうだ。 訳の分からない話をしてる彼らとは別に、私とシュンさんが飲んでると、幕戸が「ねえねえ。最近ねえ、友達のニューハーフの子が、変な宗教にだまされてん。けっこう金だましとられて、逃げられたんよ」 シュン「ほお。あぶない宗教が多いからねえ。気つけないと」 幕戸「そうなんよ。また紛らわしい宗教で、だまされやすいと思うわ」 シュン「まぎらわしいって、どんなの?」 幕戸「オームテンリ教っていうの。阿弥陀如来がご本尊なんだって」 シュン「それは紛らわしいなあ。詐欺のにおいがする」 I(当人)「あの... シュンさん」 幕戸「I(当人)君、あんたもだまされちゃ駄目よ。世の中、悪い奴が居るんだから」 I(当人)「だまされる訳無いでしょ!!!オウム天理教?????そんなん、なんで、だまされんでっか?????なんで、阿弥陀如来なの?????」 シュン「その辺りが巧妙だな」 (駄目だ、こりゃ)と、それ以上突っ込まなかった。 そんなこんなしている内に2時前になった。F元の携帯電話が鳴った。 「はい。...あっ!酒Iさん!どこに居るんですか?...はあ、居ます。代わります。...I(当人)さん。酒Iさんからです」 「もしもし。何してるんですか?」 酒Iさんは怒ってる様子だった。」 「おう。I(当人)ちゃんか。最悪や。怒って出てきった 「どこに行ったんですか?」 「贋作淑女(女装バー)や。週刊大衆が取材来とってな、俺をバシバシ撮りおんねん。『何するんや?!なんで、俺が撮られなあかんねん?!』言うて怒ったたがな。金払わんと出てきたった」 「こっち戻って来はるんですよね?」 「おう。もう一軒行ってから戻るわ」 プツッ... 交信は途絶えた。その2〜30分後F元の携帯電話が鳴った。 「はい。...じじい!何してんですか?!どこに居るの?!...え?! 居ますよ。...はい。代わります。...I(当人)さん。酒Iさんです。何かわめいてます」 また怒ってるらしい。 「もしもし。どないしました?」 「おう。I(当人)ちゃんか。最悪や」 「どっか行ったんですか?」 「おう。M2や。変なオカマの店員が『チンポ縛ってあげる』言うんや。『やめとけ』言うたった。喧嘩したがな。なんやあいつは」 「もしもし。『やめとけ』って、普通『やめろ』とか『やめなさい』って言いません?」、笑いをこらえるのに必死だった。 「『やめとけ』っつったった。喧嘩したがな。金払わんと出てきた」 プツッ... 交信は途絶えた。 と思うと、その数分後に店のドアが開き、「やめとけっつったった。金払わんと出てきた」と、おっさんが戻って来た。 「酒Iさん。そろそろ帰りましょう。もう2時半ですよ」 「I(当人)ちゃん。もう一軒行こう。な。な」 店を出てからも、「もう一軒行こう。な。な」とゴネるので、「もう帰ります」と断ると、一人フラフラ〜〜〜と歩いて行った。 私、F元、真Kの3人で後をつけると、マグネットのビルに入って行き、1〜2分もしない内に出てきた。 何の意味が有ったのかは、本人にしか分からない。 「な。もう一軒行こ。な」、まだゴネるおっさんを、F元と二人で無理やりタクシーに乗せ、運転手さんに「あっちの方に」と、酒Iさんの住んでる玉造とは逆の方向に指差しておいた。酒Iさんを乗せたタクシーは、千里中央方面に新御堂を走って行った。真Kも、まだ飲みに行きたそうだったが、こちらもタクシーに放り込み、帰らせた。私とF元は、私の家に向かい、F元はうちに泊まった。 翌日、昼前まで寝て、京橋に昼飯を食べに行った。 「F元ちゃん。真Kだけど、どこで合流してん?」 「僕がモンスターで飲んでたら、あいつから電話かかってきたんですよ(いきなり爆笑)」 「何々?どないしたん?」 「電話とったら、『助けて下さい!!!どうなってるんですか?!!!』ですよ。あの馬鹿、美人ニューハーフの店と思って、83(やっさんと呼ぶ)に入りましたから。『メコンデルタ!』って叫んで入ったら、いきなりおっさん達が触ってきたそうですよ。僕がモンスターで飲んで15分ほどしたら、電話してきましたわ。『助けて下さい!!!』ってわめいてんですよ。『 真K。まだ15分しか経ってないから、もうちょっと我慢してみ。ど〜〜しても我慢出来なくなったら、電話してくれ』って電話切ったりました。それから10分か15分くらいしたら、また電話してきたんですよ。『おい、大丈夫か?うち来るか?』って聞いたら、『もう下に居ます。我慢出来ないっす。カラオケ歌いながらお尻触りまくるんです。もう耐えられないっす』だって。あの馬鹿、それで懲りたかと思うと、モンスター入って来て、いきなり『メコンデルタ!』っすよ。大馬鹿っすよ。笑いこらえるの必死だったっすよ」 そう言えば、マグネットに入って来る時もやってたなあ、「メコンデルタ!」、デルタフォースのチャックノリスより迫力があった。 1月22日金曜日、このレポートに書ききれていない事もまだまだたくさん有った。 酒Iさん、F元ちゃん、真K、各人からもこの夜の話を聞いてみて下さい。笑える話が、またまだ出てくるはずです。
|