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■2005.7.14(木)
<UFJ銀行と東京三菱銀行の統合について>
今朝の産経新聞で、10月1日の統合に向けたシステム開発が遅れているとの記事があった。その一方、日経BP社のサイト’IT Pro’では『東京三菱ーUFJシステム統合、「今は順調」』との記事がある。もっとも、順調という言葉はUFJのシステム部門幹部から発せられたもののようで、日経記者の主観ではない。ただ、金融庁にいろんな点で指摘を受けているのは確かなようで、最終判断の8月31日が待たれる。
<WindowsからLinux+Samba>
記者の眼の記事で、本日は「産総研とヤナセがWindowsからLinux+Sambaに乗り換えた理由」という題。
「Samba」とは、LinuxやUNIX上でWindows互換のファイル・サーバー機能やプリント・サーバー機能を提供するオープンソース・ソフトウエア。
これに切り替えることによって、CALの費用を大幅に低減できたという。C/Sは無理だが、ファイルサーバーとしての機能ならこれで問題ないかのように見える。ただ、やはり多少の問題はあるようで、知識・技術がないといきなりの導入は難しそうである。ただ、ユーザーの使い勝手はほぼ問題ないようで、検討に値する内容と思われる。
バックログ:開発待ちの業務のこと。
■2005.7.28(木)
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企画部や人事部が力を持った会社は衰退する
今回は企画部・人事部のようなオーバーヘッドが果たす役目について説明します。
まず、“企画の基本は現場にある”と考えると間違いないでしょう。常に「太陽で照らして暖かくして旅人のマントを自ら脱がせるように仕向ける」のが企画部門の基本であり、アメとムチのみの施策は“下策”と考えることです。企画部の基本は「知らず知らずにやってしまっている」というように社員を誘導することです。あからさまなアメとムチを使い分けるのではなく、“自発的に行動するための上手な誘導方法”を考えることです。足(フェイス・ツー・フェイス)で情報を集めることが良い企画のキーです。
次の図にこの考え方を示します。
人にオーダーして情報を集めて資料をまとめるのは「雑務型企画」と呼ばれ、活気がある組織にはなりません。
上手な企画部門の一例として、前回ご説明した「管理業務を女性派遣社員に任せる」ことがあります。
女性がいると、組織で守るべきルールは気持ちよく自然と守られます。この状態になるように、つまり、気持ちよく継続させる仕組みを工夫することが企画部の仕事です。強制力でやらせても長続きしません。
例えば、社内の情報が外部に漏れないようにするために職場のセキュリティルールを作ったとしましょう。女性派遣社員にもルールを守るための管理方法を分担してもらうのです。「プリンタでの印刷物取り忘れチェック担当」とか、「ホワイトボード消し忘れ担当」とかいった“ミクロの設定”も一つの方法です。
いい加減な若手男性社員としては、部長や課長から「君、だめじゃないか!!」と叱られるより、女性から「○○さん!メッよ!」と言われる方が男性にとって気分的に楽な面があり、家庭での分担を職場に持ち込まれているイメージになります。
派遣の女性の間での「あの人は言ってもやってくれない」という悪い評判が立つことは、男性社員にとって大きなペナルティとなります。逆に、「後ろ指のペナルティ」を上手に使うと、人は“雰囲気”で追い込まれることになり、強制でやらされているのではなく、自然と自発的に行動することになります。
女性の“雰囲気”で男性を追い込むのは難しいことではありませんが、一方、女性の感情をコントロールすることは大変なことです。「今日は髪型がきれいだね」とか職場で一言、ほめることも大切なこととなります(ただし、こうしたほめ方は一歩間違えるとセクハラになりかねませんので、十分に気をつける必要がありますが…)。奥さんとの間の家庭円満の練習にもなります。
企画部門の仕事には、前回ご説明した“すべての職場に存在する「悪魔のサイクル」をどう断ち切るか”があります。これが強い組織を作ります。トップの指示ばかりで茶坊主になることが企画部門ではありません。組織があるので、仕事を作るというのではダメです。
また、企画部や人事部が力を持った会社は衰退します。
利益を生み出す現場にこそ優秀な人を配置し、権限委譲して、人材などのリソースをマネジメントし、企画する権限を与えることです。
企画部や人事部のようなオーバーヘッドは、必要人員として要求する人数の3分の1程度でよいでしょう。一時的な仕事はワーキング体制でアドホックに実施すれば十分です。人事部は「人材サービス担当」とし、キャリア設計アドバイザーのような役割を多くすることです。
次の図にその構造を比較して示します。
会社の悪への転落のステップとは?
「小乗よりも大乗での救済」がチームワーク力を高める
企画部、人事部が力を持った会社は衰退すると述べましたが、以下はその悪への転落のステップです。皆様の会社はどこまで転落していますか?
(1)利益を生み出す現場から遠いオーバーヘッドがトップのトラの威を借りて、“現場の実態から遊離した活動”を始める。
(2)「支配」と「被支配」という関係を作り上げ、企画部や人事部がエリート意識を持ち出し、長時間勤務を始める。
(3)「親分・子分」の関係を作り上げ、人事ラインが自己評価をする場合、人事ラインがエリートとして現場からの評価点を取り上げ、人事の評価持ち点のお手盛りを始める。
(4)直接の利益を生まない企画部がトップの手足となるため、トップに取り入って“オーバーヘッドが肥大化”し始める。
(5)現場では人事部や企画部を恐れる気持ちができて、現場の実態を主張しなくなる。トップは現場の実態を判断材料にできず、ますます思い込みによるハズれた指示を出すようになる。
(6)“アメとムチの施策が横行”し、中間管理職にことなかれ主義が蔓延(まんえん)する。言っても仕方がないというあきらめ感が大きくなる。直接の利益を生み出さない、企画部や人事部の者が高く評価される実態から、“現場に無気力感が広まる”。
(7)業績が低下し、それをカバーするために、給与一律○%カットといった“悪平等で知恵のないハズレた施策”を行うようになる。派遣社員のコストをカットするため、コストの高い社員の雑用が増え、“生産性が低下する”。
(8)一見もっともらしく見える成果報酬制度を導入したりして、混乱を助長し、ますます業績が低下する。
(9)有能な社員が去り、リストラとあいまって“長年の暗黙知のノウハウ”が失われ、業績悪化に歯止めがかからなくなる。
(10)「すべては現場にある」ことに気付いたときは手遅れで、抜本的な意識改革から始める必要がある。人の入れ替えも含めて大規模な“手術”が必要となる。
どんな組織でも人がやっている限り、同じようなプロセスで劣化が起きます。江戸時代に「○○の改革」が成功しなかったように、内部からの改革は不可能なのです。外の“黒船”と“優秀な生え抜きでないトップ”が必須となります。
この観点で考えると、官僚組織に将来はありません。社会保険庁や道路公団が典型例ではないでしょうか? 末期症状の組織に、談合や癒着は当然のことですから……。
長く会社に勤めていると、時にはダメ上司が来るときもあります。このときの対策として以下の方法があります。
「別に激しい競争をしてまで偉くなりたくない」とする多数の人々を救うことがチームワークを維持する上で重要です。一人のハイパフォーマーより、心を一つにしたチームの力でそれを超えるパフォーマンスを出す方が、よほど重要なことではないでしょうか。
日々の地道な努力をする人々に、「見てくれていて、いずれは評価してもらえる」という信頼感を持たせることが大切です。「小乗より大乗での救済」の考え方が、チームのパフォーマンスを維持することになります。
そのためには、日々の行動を記録する“行動事実日誌”が有効な手段となります。「あの時、こんな努力をしてくれてみんなが助かった」といった地道な努力を評価することができ、“ハレーション効果(みたくれで評価など)”を防止できるのです。さらに、「職場のルールも守れない者はランクアップしてはいけない」ことを徹底するとよいでしょう。
評価においては、「やっぱりアイツには勝てない」とする納得感を持たせることが重要です。このためには、課題を与えてA4のペーパー1枚で提案をさせ、それを確認するための討論会の場をセットすることも重要となります。
親分・子分の関係が出来てしまうのを防止するためには、人事評価は必ず“合議制”にして一人の上司に評価を委ねないことが重要です。
次回は「人物評価法」について解説します。なお詳細は以下の本をご覧ください。
『図解 利益を生み出すビジネス手法と事例108』(著者:児玉充晴、日経BP企画刊、2005年6月)
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