back】 

ウェブ進化論 梅田望夫 2006年2月 ちくま新書 740円(税別)


カバーの紹介から
 インターネットが登場して十年。いま、IT関連コストの劇的な低下=「チープ革命」と技術革新により、ネット社会が地殻変動を起こし、リアル世界との関係にも大きな変化が生じている。ネット参加者急増とグーグルが牽引する検索技術の進化は、旧来の権威をつきくずし、「知」の世界の秩序を再編成しつつある。そして、ネット上にたまった冨の再分配による全く新しい経済圏も生まれてきている。このウェブ時代をどう生きるか。ブログ、ロングテール、Web2.0などの新現象を読み解きながら、大変化の本質をとらえ、変化に創造的・積極的に対処する智恵を説く、待望の書。

「第三章 ロングテールとWeb2.0」 より P127
 いま大企業のシステムはネットの「こちら側」に作られる。過去何十年もかけて作り上げられてきた複雑なシステムが堅牢に出来上がっているから、ちょっとした機能を増強するのでも億単位のカネを、大企業はコンピュータメーカーやシステム・インテグレーターに支払わなければならない。インターネットの時代になって早十年が過ぎても、この構造は崩れていない。だからコンピュータ・メーカーやシステム・インテグレーターは、インターネット時代とチープ革命の破壊的組み合わせの打撃をもろに受けずに、今日まで生き長らえている。
 しかし一方、ネットの「あちら側」では、ありとあらゆるリソースが自在に融合され始めている。それがWeb2.0の核心だ。「はてなマップ」の開発に一週間しかかからないのだとすれば、いずれ「あちら側」のサービスのコスト構造は、「こちら側」のシステムのコスト構造の何万分の一になってしまう。彼はこのコスト構造における圧倒的な差を理解して、自分が育ててきたと自負するコンピュータ・メーカーの今後に思いを馳せ、がっくりと肩を落としたのである。

「第六章 ウェブ進化は世代交代によって」 より P216
 ネットは古典的な分野での頂点に立つための高速道路整備を促進しただけでなく、自分だけの新しい世界を戦略的に探索していく生き方を支援する道具としても進化している。体系を極めるべく高速道路を疾走するもよし、高速道路を避けて独自の道を発見して歩んでいくもよし。いずれにせよ若い世代には、私たちの世代とは比較にならぬほどの可能性が広がっているのだ。

<感想>
 グーグルを中心にして、ネットの新時代で世界を大きく変わろうとしているということを説いた本。たしかに、細かい事象を解析し続けていくと、この先に大きな社会変化を巻き起こすのではないかという感想を持つ。ただ、ネットが生まれて頃もそういう議論があったのだが、自分が思っているほど社会が変わったとも思えない。便利なことをネットによってたくさん享受できるようになったとは思うのだが、さりとて人生観が変わるところまで行っていない。人生観が変わるとは、人生が大きく変わる人が続出する状態なのだろうが、そこに近づいているのか。もしくは、そんな劇的変化は生まれず、ゆっくり変わっていくものなのか。ただ、最近の自分の思想について反省させられたのは事実。少し保守的すぎたかもしれない、もっとおもしろくやっていこうか、と。